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【展覧会】特別展「きもの KIMONO」

2020-07-19 11:50:57 | アート・文化
布・裂、紋様、織・染・刺繍等々手仕事。
眼福至福。
会場全体、いずれ劣らずの品々に
「見落としは許されないぞ」と思わず気持ちを引き締めてしまうくらい、
隅から隅まで素晴らしいきものが並びつくされています。

会場入り口近くで見た「縫箔 紅白段練緯地短冊八橋雪持柳模様」で
涙出た(ほんとう)。
刺繍の中のシルク独特の黄みがかった艶のある白が美しい。

序盤の16世紀の装束は、永く引き継がれてきただけあっていずれも高度で重厚。
多様な技術がすでにこの時代に確立されていて、複数の技術が一反の布の上に
幾重にも重なっています。
以降、江戸から現代にかけての連綿たる流れに沿って展示が続きます。

一個一個感想を書くのは難しい。
それぞれのきものが内包し発している情報量が多すぎる。圧倒的。
お気に入りを書こうにもお気に入りが多すぎる。

総括すると「素晴らしい」。これに尽きる。

下は蛇足、備忘的に。

17世紀、江戸に入る辺り、第2章に入ると、表現に「"毒"が入り始めた」と感じる。
高校生時代の音楽の先生がクリムトの絵を見せてくれた時「きれいでしょう。
毒があるのよね」と言っていたのを思い出し。
未だに"毒"をうまく説明できないけれど、色彩や意匠に何等か禍々しさを
含んでいて、それが魅力的なのです。

元禄、染、光琳と見て行って「アートを着ていた」のだなと。

#87 小袖 白縮緬地伏見稲荷文字模様 の紫のボヤを見ながら、この辺りから
不調和の要素が入ってきている印象。
不調和って、脳が素直にきれいと思う像から少し外れている感じ(私の印象)の
ことで、色合わせや意匠の形状から引き起こされたりする。予定不調和。
前述の"毒"とはまた違う。現代アートの要素に近づいてる。

"毒"にしても"不調和"にしても、人の視線を引く要素なのだと思うし、時代を
経て技術が発達し汎化し量産容易度が上がれば上がるほど、そういう要素で
差異化していくというのは、きものに限らない流れではないだろうか。

有職紋に代表される定式的な意匠から、時代を経るにつれ意匠に取り込まれる
題材が広がっていくのも、サブカルが文化化する姿と重なって見えてきたりもする。
江戸の粋、大正ロマン、現代。(久保田一竹さんの秋から冬が美しかったなぁ)

定式が存在しつつ、逸脱を試し、味わい楽しむことの連なり。
逸脱の一部は定式に取り込まれ、一部は定式外の表現バリエーションの棚に置かれ。
技術で見れば、着るという機能を目的とした用の具に、きもの以外の用の具の
技術が取り込まれ。表現が豊かになってきた道筋を見ることができました。

今回は刺し子等の作業着系は入っていないので、そういう展示を同時期に
別の展覧会としてやっているとまたよかったかも。
なんだか見たくなったのですよ。浅草のアミューズは閉まっちゃったしなぁ。
常設展に行けば多少はあったのかな。

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東京国立博物館 平成館
2020年6月30日~8月23日 事前予約制

(2020.7.18)

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