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歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【歌舞伎】歌舞伎座 三月大歌舞伎 第一部・第二部・第三部 2021年3月

2021-03-13 22:27:58 | 歌舞伎
三月大歌舞伎
歌舞伎座
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観ている私の思い込みが入っているのでしょうが。
全体を通じて幾つもの瞬間に『祈り』を感じました。
"芸能"というものの原点を垣間見たようにも思いました。

今月は敢えて、観た順で。

◆第三部

一、楼門五三桐

大仕掛・絢爛な装置に吉右衛門さんの五右衛門。
左右忠太に歌昇さんと種之助さん、発する明るいエネルギー。
真柴久吉に幸四郎さん。
"続いている"幸せ。

物語の光景に重なって、なぜか、
祈りを感じました。少し切ない、希求、のような。

二、隅田川

玉三郎さんの斑女の前の、心が枯れ果てそうな哀しみと
鴈治郎さんの舟長の心遣いと温かさ。
お芝居に、切なく心打たれつつ、
加えて、清元の美しさをひときわ感じました。
川のせせらぎを映す三味線もすばらし。
もう一回聴きたい。

一日仕事してからの観劇。癒されました。

(2021.3.12)

◆第一部

一、猿若江戸の初櫓

人助けからチャンスを得た猿若と阿国。
人と人との"正"の繋がりがもたらす喜びの場面に舞踊。
勘九郎さんの舞踊を観ていて、
物語としての場面を観ているのと同時に、祈念の舞だ、とも感じ。

研ぎ澄まされた身体表現は、祈りに近づいていくのかな。

二、戻駕色相肩

松緑さん次郎作、愛之助さん与四郎、禿に莟玉さん。
晴れやかで軽やか。
だけでは終わらせない「実は」の締めくくり。

(2021.3.13)

◆第二部

大看板投入で厚みのある2幕が続く第二部。

一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋

仁左衛門さんの熊谷、孝太郎さんの相模。
帰宅、相模・藤の方とのやりとりから、徐々に高まる哀切の予感は、
首実検でひとつめのピーク。落涙。
暇乞い・出家から花道での噛みしめ。

昨日から感じていた「祈り」の延長上で思うに、
この慟哭は、熊谷の慟哭なのだけれど、
観る誰かの慟哭を代わりにあらわしているかもしれないと思い至り。
"芸能"は、究極的には、世界の声を映すものなのだろうか。

二、雪暮夜入谷畦道 直侍

菊五郎さんの直侍と時蔵さんの三千歳。
丈賀を東蔵さん、暗闇の丑松を團蔵さん。

絶妙。
火鉢、蕎麦、傘の扱い、屋根から落ちる雪…あらゆる要素が心地いい。

うまく言えないけど、
いいものをちょうどよく食べたときの満足に似ていた、第二部。

(2021.3.13)


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