2021.3.25
牧水の全歌集から、山の歌を選んでいたが、そのな中で「貧窮」の歌を見つけてみた。
「歌集 くろ土」から貧窮を詠う
居すくみて家内しづけし一銭の銭なくてけふ幾日経にけむ (そのI)
抽匝の数の多さよ家のうちかき探せども一銭もなし
貧しさに追はれていつか卑しさを銭に覚えぬ四十路近づき (そのI)
ゆく水のとまらぬこころ持つといへどをりをり濁る貧しさゆゑに
苦しみに苦しみぬけど貧乏に懲るる心はまだ足らぬかも
三日ばかりに帰らむ旅を思ひたちてこころ燃ゆれどゆく銭のなき (その三)
待ち待ちし為替来りぬわが泣きし借にはらふは惜しけき為替 (その四)
「歌集 山桜の歌」
貧しくて時を惜しめば命さえみじかきものに思いなされる
牧水もカネに困った歌を残している。
「苦しみに苦しみぬけど」の歌、身につまされる。「三日ばかり」の歌も〈辛抱〉の歌であろう。共感する処多い。この歌で一つの文章が書けそうだ。
斉藤史の歌にも貧しさに堪える歌がある。