手術前日
1:30 目覚めてトイレに行く。下剤の影響で茶色い水が出る。夜中に内野さんはTVをつけている。
2:30 再びトイレ。今度は大分透明になってきた。今トイレで書いている。部屋だと明りをつけると迷惑になるからだ。
阿部慈園著「比較宗教思想史」Ⅰインド
これはインドの宗教史を易しく整理されていてわかりやすい。仏教を理解するにはインドの歴史をよく知らないといけないのだが。紀元前2000年ころにもたらされたバラモン教(原始ヒンズー教とでもいうものかな)が確立され、其れへの批判思想として仏教が起こって、紀元700年ごろにイスラム教が入ってきて、仏教がインドからなくなって行く、他方でばらもんきょうが、ヒンズー教として仏教の影響を受けながら新しい形で形成されて行った。ムガール帝国が滅ぶとヒンズー教が今のインドの宗教となったわけだ。と言うのも、イスラム教はムガール帝国時代、支配者層の宗教であって、大衆・庶民はバラモン教の勢力の中にあったと言える。バラモン教の中で、ゴータマ・ブッダが、バラモン教を批判する形で思想形成されたのが仏教と言える。輪廻思想などはバラモン教の世界観を引き継いでいる。
3:00-30 瞑想をする。あまり集中できなかった。部屋にもどる前にトイレに。
4:00~6:00 眠った
6:00 トイレに行く。まだ出るが透明にはならない。便は出ないけどカスがでた。
6:30 トイレの前で83歳の関谷さんに出会った。お風呂の入り方を聞かれた。ひげを短く切って、剃るなら剃るようにしておいた。部屋に戻ってベッドに上に座っていたら、内野さんが怖い顔をして、「お前のかおなんかみたくねぇ」とわざわざ言いに来た。「お花を育てているんですね」と言うと、「お前には関係ねぇ」とか言ってベッドに戻った。
6時に看護師の平岩さんが体温を測りに来た時に、催眠剤を貰えるかと聞いた。手術の前の夜はよくねむりたいから、と言った。「みなあん、そうしていますよ」と彼女の返事。考えることは同じなんだ。「部屋かわるの?」と聞くと、「かわりますよ」というので、「かわれば多分いらない」と答えた。このやり取り、内野さんへのあてつけなんだけど。
だけど子供の様な人だ。夜中でもパタパタ大きなおとで歩くし、コップを置くにもカーンと音を立てる。でもラジオの音はしなくなった。本院がよくわかっているんだろうけど、本人が一番恥ずかしいと思っていても、憤ったこうどうでしか表現できないんだろう。見ていて悲しく見える。自分を律することができずにいる。他人に厳しく、自分に甘いという典型かもしれない。こういう人に出会ったのが悲しい。自分はああならないように気を付けよう。
阿曾さんはやはり元気がない。鳥海山の写真を見せてあげたいと思って携帯サイトでみてもいい画像が無い。なんとか励ましになればと思うけど、難しいものだ。
瞑想の中で問答をしていた気がする。「身を慎め」と言う言葉が出てきて、「祖tれはどういうことでしょうか?」と尋ねているのだ。「驕らず、贅をせず、嘘をつかず・・・、という言葉が出てきたともう。「この身を慎め」というのは、自分がこれからの生活に対する不安について、どうしたら良いかと言う問いに対する答えとして出てきたように思う。
瞑想は影響だけでなく、そういうことばも浮かんでくる。これに映像が重なればまた違うものかになるかもしれない。
9:00-11:00 ずっと待合所にいた。10時前に部屋を替えられた。811に。佐藤さんが手術前にいた部屋だ。
待合所に居たら恵沢さんがやってきて、他愛ないお喋りをしていたら、佐藤さんが来て3人で談笑!佐藤さんは進行度ははじめⅡと言われていたが、Ⅲaであったと言う。私がⅢaかⅢbか微妙なところ。ともかく佐藤さんはひにひに回復しているのが判る。
矢口先生がきたので、便の話をしたら心配いらないと言ってくれた。下の毛について聞くと、剃らなくてもいいと言う。後で看護師の木下さんに、「先生に言われたよ」と言ったら、それでも彼女は「剃ります」と言う。仕事柄、そうするもんだと思っているみたい。
それから深沢さんが来て、空海の話をする。空海と言う人は実に凄い人の様で、改めて勉強し得見ようと思った。司馬遼太郎が書いているので読みたい。病院に図書館があればいいのにね。
今度は今井さんが来て、恵沢さんと三人でお喋り。
阿曾さんは一泊の帰宅を許されたと言う。彼には子供がいない。外泊ができるのは本当に末期なのだ。
12:30 2年目の看護師の土矢さんに手術の同意書を渡す。書類を確認しに部屋にきた。手術の同意書を見せたら、内容を知りたいと言うので、見せながら説明してあげたら、「看護師にきちんと説明できるなんて、凄い」と驚かれた。それから彼女と少しお話をして、看護師の大奥の方が使命感をもって取り組んでおられることに感謝していますよ、と私は言った。まだまだ若い子たちでなのだ。8階は特に新顔が多いと言う。癌病棟で生死をわかつ患者を、若いうちに接ることで、仕事への態度も変わるのだろう。
ここの看護師はみんな自衛隊員で、訓練にも参加させられるのだ。配属移動転勤もある。