5/27にコーマック・マッカーシーの『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』の読書会に参加しました。色々共感するところが多くてあまり削れず、勝手に長々書き起こしで恐れ入ります。
***【ネタバレだらけです】※太字にしたのは私
●風太さん
映画公開時に原作を買ったけど読んでいなくて。その前にコーマック・マッカーシーは『すべての美しい馬』と『平原の町』『越境』『ロード』などを読んでいて。一番最初に読んだ『すべての美しい馬』が、読点がなくてとにかく読みにくかった。でも読みにくいなりに崖から馬が落ちる描写など、悲惨なんだけど美しいなぁと思いながら読んでいました。
起きてる事は血生臭いのに、なぜか美しいと思ってしまう。文章のせいなのか血生臭さはあまり感じずにただ美しいなと。心理描写がないせいなのか、ひたすら風景を綺麗に見せてくれる作家だなと思います。
映画は観ていないけどとにかくシガーはハビエルねって思いながら見ていて、ひたすら最初から怖かった。ただひたすらこの人が殺して殺してそれで終わったという感じ。
一番怖かったのは序盤で、店の主人にコイントスで運命を決めさせるところ。もう死ぬもう死ぬとか思いながらドキドキして心臓に悪いくらいハラハラしました。これは悪魔にうっかり出会ってしまったとしか言いようがない。
あとやっぱり風景の美しさ。美しい風景ではなく砂埃があがるような砂漠でも、そこに美しさを感じるのはなぜなのか。この作家の特徴かなと。でもすごくスルスル読めて楽しかったと言ってはなんですが、ずっと積読本だったのが読めてよかったです。
●はづきさん
『血と暴力の国』を読んだのは映画が話題になった2008年のことで、その時の感想として、起きてほしくないことが全部起こった、死んでほしくない人全員死んだという。映画は見てないけどハビエル・バルデ厶のおかっぱ頭のシガーというイメージがやっぱり強い。今回も読みながら「ハビちゃんが来る。怖い」というのはずっと考えてました。
冒頭のモスが羚羊、カモシカか何かを撃とうとしているところで、本当に広いんだなと。だだっ広くて何もなくて乾いたところだと、すごくわかるのが印象的。
とくに猟銃の引き金を引いてから音が遅れてくるっていうところで、すごい距離があるとわかって。このカラカラに乾いた何もない、広さが感覚的にわかる風景描写がすごい。
この乾いている中でモスは(瀕死のギャングに)水をあげようと、供えてあげようと思って戻っちゃったんだと、今回読み返して改めてわかって。
それで気になったのが、モスが川に飛び込んでギャングたちから逃げるとき「川で水を一滴も飲まなかった」という描写がある。男に水を持って行ったけど当然届けられなかったし、自分も飲めなかったんだなぁと。とにかく乾いた印象がすごく強い。
だからシガーがモスたち夫妻のトレーラーハウスに来た時に、勝手に牛乳を飲む描写がすごい嫌だった。しかもそれを冷蔵庫に戻す。開けて飲むっていうとんでもないことをしながら、ちゃんと戻す。そういう描写があー気持ち悪いと、それをハビエル・バルデムで映像化しながら思ってました。
それとモスの奥さんが死ぬのがすごく嫌で。でもこれってシュガーが帳尻合わせみたいに奥さんとこに来たのかなと。殺す意味がなかったはずなのに、わざわざ出向いてまで殺す。そういうところが人智を超えたなにかの意思みたいな、どうしようもないものとして描かれているのが印象的でした。
#3へ続く