花日和 Hana-biyori

谷崎潤一郎スペシャル

10月の「100分de名著」は、谷崎潤一郎スペシャルでした。
私は、たぶん『卍』は読んだことがあるけれど全く覚えておらず(たぶんわかんなかったんだろうな)、『猫と正造と二人のおんな』はコメディなのですごく面白くてFBで紹介したくらい。でも、番組で紹介されていた本『痴人の愛』『吉野葛』『春琴抄』『陰翳礼讃』はどれも読んだことはありませんでした。(『瘋癲老人日記』は内容は知っていたので読んでみたかったんだけど。)

番組は、吹越満さんの朗読が、流れるような文体と小説の雰囲気に合っていてすごくよかったです。それぞれの回で違ったアニメーションも大変手が込んでいたし、小口貴子さんの語りも聞き惚れる声でうっとりしていました。

そしてなにより文章がいい。汁椀をろうそくのあかりでいただくというだけの描写が、文豪の手にかかるとこんなことになるのかと感嘆しました。

なかでも興味深かったのが『痴人の愛』と『春琴抄』で、変態とか情念とかいった言葉では表せないような突き詰め感がすさまじかった。『春琴抄』は、琴の名手である美女の生涯を、その評伝とともに生涯仕えた下男が回顧していくというフィクションで、メタノベルという解説でした。ここで私は『俺の眼を撃った男は死んだ』を思い出しました。あれも多くがそんな感じだったので。そうか、そういう様式は昔からあるのだなと。

SMを単なる変態性ではなく一種独特の深い絆と捉えることは、なかなかゾクゾクする解釈です。私も中年になってからわかったような気がしていたので(真に捉えることができているかは怪しいけども)伊集院光さんの兄弟子への嫉妬の話も興味深く聞きました。今はパワハラになってしまう(まあ大抵がそうでしょう)けれど、紙一重で「プレイ」「共犯」であることもある、と考えるだけで味わい深い。

最近文章にうっとりするという読書をしていないなと思っていたので、なにかないかなと思っていたところにこれです。改めて谷崎潤一郎の小説を読んでみたくなりました。

番組サイト(←プロデューサーの言葉も面白かったです)
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