花日和 Hana-biyori

手紙

夏目漱石「坊ちゃん」の中で、坊ちゃんが清からの手紙を縁側に座って紙を風にたなびかせながらじっくりと読む場面が好きです。「坊ちゃん」は江戸弁のべらんべえ口調でちゃきちゃきと流れるように進む文章が魅力ですが、この場面は珍しく一瞬だけ「静」を感じました。坊ちゃんが、言わなくても清をどれだけ大切に思っているか伝わってくるし、たそがれ時の秋の庭と向き合う描写も素敵です。

そして最近「こころ」を拾い読み(再読)しまして。
「先生」が「私」に宛てて遺書を書いた気持ちが丁寧に説かれているのですが、内容はともかく、ひとりに宛てて書く手紙っていいなと思いました。

不特定多数の人が読むツイッターやブログなどの、繋がりが曖昧なモノに慣れてしまって、それはそれで良いのですが、その人にだけ向けた言葉や何かを伝えようとする手紙って、いまほとんど書かないなと。メールも用件を伝えるものばかり。

そういえば、父が亡くなる少し前に、父母に宛てて手紙を書いてみました。
母は喜んでくれましたが父はなんとも言っていなかったみたいです。でも、亡くなる前に自分がどんなに父が好きだったか、子供の頃大事に育ててくれたこと、遊んでくれたことが今の自分にとってとても重要なことだったと、少しは伝えられたかしらと思っています。
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