昨日は第19回読書会、課題書は『マリアビートル』(伊坂幸太郎 著)でした。
東京から盛岡へ向かう東北新幹線に「殺し屋」たちが乗り合わせ、現金の入ったトランクと互いの命の奪い合いが繰り広げられるエンタメ小説。
この小説を原作にしたブラッド・ピット主演の映画「ブレット・トレイン」が公開されるのに先だち、読んでみよう~となったものです。ちなみに、
「東北新幹線を使っている人は、空間と時間の配分、駅の大小のニュアンスがわかり、話の中の時間の流れがよくわかる。空間的な事情の制限をうまく利用していて、ミステリを盛り上げるテクニックがある人が書いている。それだけに、映像化にすごく向いていた(だからこれを翻訳してハリウッドに売り込んだエージェントはえらい)」
という分析をいただき納得でした。
■で、みなさんの感想、今回はごちゃまぜで。(ネタバレあり)
「久しぶりに伊坂さんを読んだ」「面白かった、楽しめた」「こううまくはいかないよと思うが、映画にしたら楽しそう」
「死屍累々で普通ではありえない展開、しかしさすがに読ませる。伊坂さんはエンターテイメント系がうまい」
「終盤にむかって伏線が次々に回収される気持ちよさ」
「文庫化された当時に読んだが記憶がなくなっていたので新鮮な気持ちで読んだ。テンポがよくてよみやすい」
といったところで概ね一致していました。一方で
「面白いけど、ほどほど。ホームランではなくいいヒット。読み終わったらすぐに忘れてしまう。しかし、それでいい。あとを引かないのが良さ」
という意見もなんとなく一致。全員大絶賛とはならなかったのを不思議がっていたのが「伊坂幸太郎とはちょっと相性が悪い」という方だったのも面白かったです。
いやしかし、わたし的には大絶賛だったんですけど、そう聞こえなかったみたいです。確かに1週間かそこらでだいぶ忘れてしまったしなあ…。まあ、サービス精神ゆえのやり過ぎ感があるってことですかね。ちゃんと伏線回収はするけどどっか詰めが雑だったり。ただ、それも含めて計算ずくのエンタメですね、というのも大方の意見でした。
■そのほか、こんなツッコミやらなんやらも。
「楽しませようとしているのはわかるけど、わざわざ蛇だすことないじゃんと思ったり」
「一車両買い占めるのにどのくらいかかるのか余計な計算してしまった」
「最初は冗長でなかなか乗れなかった。読むモチベーションは悪魔のような王子ですね、それ相応の報いを受けるんだろうなと(思いながら読んだ)」
「王子は悪のメタファーなんだろうなと思い読みました。そう思わないと、嫌すぎて読み進めにくかった」
「殺し屋3部作は、三冊通して読むと、作者が悪というものをどういうふうに考えているかがわかる。(作者は)基本的に勤勉で生真面目」「(初期の作品において)伊坂幸太郎の描く悪にはグラデーションがない。わかりやすいけれどあんまりおもしろくない」
なにはともあれ王子が嫌なやつ、というのは当然満場一致。そして「殺し屋がヒーローとしては描かれておらず、殺し屋たるもの幸せにならないし、まあまあ早く死ぬ」という指摘も。そういうところに作者の生真面目さが出ているのでは、みたいな話に納得でした。
また「映画は前半は原作に忠実らしいが、伊坂さんの生真面目さ、ペーソスは割愛されているのでは」という予想。確かに小説ではそのあたりが良いけれど、映画ではよりエンタメに振り切るんでしょうね。観に行けるかな、行きたいな。
https://www.bullettrain-movie.jp/
■蛇足ながら、好きなキャラについて。
スウ→「檸檬と蜜柑、とくに檸檬はやられないで欲しかった!
そして木村の父母、ジョジョみたいな『ジャジャ~ン!』という感じ(けれん味)が良かった」
八方美人男さん→「七尾(天道虫)が意外と私は好き。王子の運の良さを七尾の不運が上回るという面白さ、マリアのセリフ『あなたの不幸が何かを救っているかもしれない』が印象的だった」