私が持っているのは薄い文庫本ですが、これは福音館書店の愛蔵版のため紺色の布張りで装丁が立派。カラーの挿絵が入っていて、漢字にルビが入っています。
こういう本はモノとしてなにか愛しさを感じます。
1992年出版の本で、私としてはそんなに古い感覚もないけど、23年前ですか。初めて世に出たのは1839年だそうです。
久しぶりに読んだら、月が語るのは分かっていたけど、孤独な若い画家に、というのは忘れていました。静謐の中の小さな炎を見るような、ささやかで美しい、物語とも言えないような断片の数々がいいんですよね。物足りないくらい余計な言葉が無くて、想像をかきたてるような語り方。
これ、語り手がいわゆる神の声でもなく、人でもなく、「月」というところがホントに巧みだと思います。登場する人たちがどんなことになっていても、月はそれをただ見ているだけ、見たままを語るしかなく、話を動かしたり何かできる訳ではない。
けれど、「私の光でなでる、キスする」という優しさを表すことはできます。それが、断片を繋ぎ合わせる美しい細い糸になって読者を引っ張ってゆく。
アンデルセンってほんとロマンチックな人だったんだろうな、と思います。
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