特にいいなと思ったのが長田育恵の脚本で、小説の設定やそれぞれの思いを手際よくセリフに落とし込んでいて気持ちよく感じました。
原作にはない、子どもが出来ない夫婦とリキとの偶然の出会いは、ゴミ袋から装飾用の紙花が花吹雪のように散り、いかにもドラマらしく印象的な場面でした。
それと、リキが忘れた弁当の中身は原作では「奮発して鮭を入れた」とあるけれど、ドラマでは一本のタラコでしたね。つまり卵なわけで、この話のテーマにも直結し、後から吐かれる暴言「次はあんたのタラコを入れて」(これは原作通り)も、一層主人公を追い詰め強烈です。
ということでまたついつい原作と映像化を比べて楽しんでしまうのですが、出演者も役にハマっていますね。とくに石橋静河は、いつもどっか不満がありそうな主人公に合っています。好演していたと言うべきでしょうか。
元バレエダンサー役の稲垣吾郎は全然文句はないですけれど、私は小説を読んでいるときはずっと武田真治のイメージでした。肉体美にこだわるところや、実際はどうか知りませんが、自分がこうと定めたことは何かを犠牲にしてでも絶対にやり通すという感じがしまして。
いちばんイメージ通りだったのは元バレエダンサーの母親、黒木瞳でした。引きこもりの悠子の弟を「努力できない」人間だと貶すところがいかにもって感じで上手かった。
あと原作ではあまり存在感が強くなかったリキの母親を富田靖子が演る※というので、彼女にどんな意味を持たせていくのか次回がまた楽しみです。
※追記 これは私の勘違いで、富田靖子はより重要な叔母の役でした。