はな to つき

花鳥風月

Gravity Blue 61

2012-06-28 04:40:35 | 【Gravity Blue】
「いずみ・・・」
「うみ・・・」

お互いに顔を見合わせた。
パラレルワールドに瞬間移動したかのように、別の時空を感じた。

「遅かった。」
「早すぎた、ね。」
まるで、すべてを見通しているように、泉は呟いた。
「ううん。これで良かったのよ。これ以上、過ちを犯さなくて済んで。」
「・・・。」
大粒の涙が溢れ出した泉が、わたしを抱きしめた。
「ありがとう・・・、いずみ。」
「・・・。」
「でも、わたしは、もうどこにも戻れないね。」
妹のエネルギーで、一瞬にして正気に戻れたわたしは、すべてを正しく理解して言った。
「戻れるよ・・・。」
「そうだね。多分、戻ることはできるだろうね。
でも、短い間に、あまりにもたくさんのことが繋がってしまったから、
少し、整理する時間が必要だと思う。」
「少し、ってどのくらい?」
「わからない。すぐかもしれないし、ずっとかもしれない。まるでわからない。
だから、その答えを探しに行ってくる。」
「うん・・・」
いつものように、物分りの良い子だと思いながら、泉の頬をやさしく包む。
「このまま行かせて。お父さんとお母さんには、心配しないようにとだけ伝えて。」
ものすごく酷なことをお願いしていることを許して、と思いながら言う。
「そして、彼、にも。」
「うん・・・」
背中に回していた腕を解いて、頷いた。
4つの瞳は、短い会話を交わした。

ハンカチを渡し、頭を静かに撫でると、空を見上げるようにわたしは歩き出した。
「連絡、ちょうだいね。」
追いかけてきた震える声に振り返り、微笑みながら頷いた。
「行ってくるね。」

はっきりと聞き取れるくらいの声で告げて、バス停に向けて今しがたの坂道を下って行った。

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