嗜好を志向する思考系ブログ。

組手の理論

(注)この記事は、私が現役の頃(90年代)の伝統派空手の組手理論で書いています。

人間には反応速度というものがあります。
基本的に、目で見て脳が判断し、体を動かすまでに0.2~0.3秒がかかると言われます。
例えば、振りかぶった刃物で切られるという状況において、コンマ数秒の動きの遅れは致命的ものとなるでしょう。
武道は、こうした状況に対処しようというものです。
それを可能とするのが、”目”、”反射”、”脱力”、”立ち”です。


■1)目
”目”とは、目の使い方、相手の見方です。
相手としっかりと目を合わせて・・・等という事はしません。
(人は目線には簡単に反応するので、昔から目線をつかったフェイントが普通にあります。)
基本的に、目線は真っ直ぐですが、全体をぼんやりと見ます。
慣れてくると、相手の顔をぼんやり見ながら、相手の足の指が動くのが見えます。
要は、相手の動きの”起こり”が見えるというのが大切なんです。
コレにより、反応が起こるタイミングが早まります。

■2)反射
”反射”とは、飛んでくるモノが見えた瞬間思わす手を上げて頭を守るというアレです。
伝統派空手の組手は、実質あの動きを目指します。
(因みに、熱いモノを触った瞬間手を引っ込めるという動きは、“引き手”になります。)
理論的には、脳の判断を介さず、視覚と筋肉を連動させるという事になります。
以前、「筋肉も思考している」という理論を見かけたことがありますが、私もそう思います。
コレにより、脳からの命令を待つ必要がなくなり、反応時間の短縮がなされます。

■3)脱力
”脱力”は、常に体をニュートラルの状態に保つ事を意味します。
基本的に”動く”には、動かす部位に入っている力を一端抜いてから、意図する方向に動き始める様に、体がなっています。
筋肉に力を入れたまま動こうとすると、それがブレーキの役割をするので、動き自体が遅くなります。
つまり、速く動かすためには、最初から動かす部位の力を抜いておけば良いのです。
コレにより、手足の動くスピードが上がります。

■4)立ち
”立ち”とは、脚の使い方なんですが、武道とスポーツではこの点が大きく違います。
スポーツ的動きでは、まず膝を曲げ力をためてから、蹴り出すことで体が前に進むことになり、動き出しは二挙動になります。
武道的動きでは、基本的に両足のバランスで立っていますので、前足を外せば自然と体が前に倒れる様に進み始め、一挙動で動き出すことができます。
さらには、ステップ中の膝の抜きにより、体重0の状態を作っていますので、よりスムーズに体の移動が加速されます。
(これは古武術で言う「膝抜き」や「瞬歩」という技法に近いかと思います。)
コレにより、体の移動スピードが上がります。

反応の起こりを早め、反応速度を短縮し、手足の動きや体の移動を速める。
伝統派空手の組手は、こうした技術をベースに行われており、そういった意味では、確実に武道の延長線上にあると思います。



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