雨上がりの朝。歩き慣れた道から立ちこめる、
カルキのような匂い。八月も暮れゆく町に零れ
た百日紅の涙。濡れて黒々としたアスファルト
につかの間描かれた、名前の無い星座の群れ。
白
うす紅
くれない
の
グラデーション
一瞬
一秒
一分が積もれば
一時間
さらに降り積もり
一日
そして
一年
春、夏、秋、冬
時計の針は夏と秋のあいだ
足もとから伸びるわたしの影も
だんだん濃くなってゆく
暮れる季節と共に
雨上がりの、見慣れたはずの町が、色鮮やかに
映る朝。立ち止まり、頭を垂れている百日紅の
花束だけに聴こえるように、つぶやく。
わたしもまた
夏の終わりに生まれてきたのです と