言葉喫茶【Only Once】

旅の途中で休憩中。

◇トライ◇

2020-08-24 21:03:46 | 言葉




久しぶりに詩を書いている。リミットまで残り四日弱。
結果はどうあれ、挑戦する事だけは諦めたくない。

改めてWordと原稿用紙を前にしてみて、まるで書け
くなってしまっていて驚いたし、それは当たり前
も思っている。それほど時間を無駄にしたし、立ち
まってしまったから。良かれと加える推敲が詩をダ
にしそうで、今までで一番おそろしく感じている。

けれども、これだけは、諦めては、ならない。
詩作は一生続く自分との向き合いであり、鏡であり、
大切な闘いだと思うから。

休日の半分を詩に費し、残りを休養にあてた。
休む時間など本当は無い。狂ったように暑い。仕事も
忙しい。
けれどもそれはそれ。わたしは書き切るし、出すのだ。
こうして言葉にしたのでそれは成す。
成し遂げられたら、倒れようが構わない。
それしか考えていない。

5年ほど前、何よりも大切な約束をした。信じてくれ
た人がいる。何も言わなくても信じてくれている。そ
れを知っている。

まずは自分の為にわたしを貫き通そう。
成し遂げたその頃には、また歳を重ねているだろう。







八月の終わりに

2020-08-22 22:00:00 | 言葉



雨上がりの朝。歩き慣れた道から立ちこめる、
カルキのような匂い。八月も暮れゆく町に零れ
た百日紅の涙。濡れて黒々としたアスファルト
につかの間描かれた、名前の無い星座の群れ。


うす紅
くれない
グラデーション

一瞬
一秒
一分が積もれば
一時間
さらに降り積もり
一日
そして
一年

春、夏、秋、冬

時計の針は夏と秋のあいだ
足もとから伸びるわたしの影も
だんだん濃くなってゆく
暮れる季節と共に


雨上がりの、見慣れたはずの町が、色鮮やかに
映る朝。立ち止まり、頭を垂れている百日紅の
花束だけに聴こえるように、つぶやく。


わたしもまた
夏の終わりに生まれてきたのです 


















明日へ帰ろう

2020-08-22 20:50:31 | 言葉




五枚切りの食パンを買い
家へ 明日へと
向かう帰り道

天気が悪かろうが
機嫌が悪かろうが
だいじょうぶ
それがあれば
明日は良い日に変わるさ


たとえば今日
どうしようもなく憂鬱だったとして
疲れ果てて 言葉も無くして
すっかり縮こまってしまった背中も

次の朝が 明日が訪れて
厚めのトーストに
一枚にはバターを塗り
もう一枚にはチーズをのせたら

凝り固まったわたしは
たったそれだけで
ふにゃりとほどけて
本来の柔さを取り戻せるだろう


それは
休日を目の前にした
ある日の仕事上がり

抱えなれた悩みごとを片手に
歩きなれた帰り道を
ゆっくりと進む


 しずかにゆるやかに暮れてゆく今日を見送る。
 プツリ、プツリ、とほどける一秒一秒を背中が見ていた。
 明日食べるトーストはどんな味がするだろうか。
 焦がしてしまうかもしれないし、
 焼き色が足りないかもしれないけれど。
 その日その日で焼け方もおいしさも変わるように、
 休日も食パンも、人のように、いろんな表情を見せてくれる。


目が合わなかった
些細な喜びの瞬間にも
きっと 明日には出逢えるさ

うつむいてばかりいたけれど

トーストから始まる一日が
明日の空を見上げるための
力をくれるだろう

さあ 帰ろう
明日へと 















『4711―フォー・セヴン・イレヴン―』

2020-08-21 21:13:08 | 言葉




今も
手首から首すじまで
その匂いが染み付いている

そんな気がしている

フォー・セヴン・イレヴンの
ひどく懐かしい香りが
こころに絡まって
とれない

【4711】

ラベルに印字されている
数字の読み方も知らなかった
あの頃から ずいぶん遠くまできた

甘くほろ苦い
シトラスの匂いに
顔をうずめあった
寒い さむい
十二月の午後は
すっかり色あせた

紫煙が絡まり
ほろ苦さを増した
フォー・セヴン・イレヴン
それは
真冬のコートにも
隠しきれなかった
幸せであり
寂しさであった


あの小瓶は
今でも机の上に
腰かけている

眠れぬ日には
こっそりと
シトラスをまとうのだ

あなたのいない
真夜中の森深くまで
ちゃんと たどり着けるように

あなたがいない
今 この世界の中を
迷わずに 歩いてゆけるように
















すれ違う香り

2020-08-21 16:30:51 | 言葉





すれ違う ふたつの香り

同じ香りのはずなのに
どうしてだろう
重ならない

それはたとえば香水
もしくは柔軟剤
時にはシャンプーの匂い

気づけば
お互い同じものを選んでいた
ふたり並べば香りは濃くなる
そんな期待を抱いた

あの夏

お揃いだね と
それだけで喜び笑いあえた
青くおさないその感情の名は
香水瓶の中にとじこめて割った


となり合う ふたつの香り

あなたはあなたで
わたしはわたし
違う人間同士

つながることはできても
いち足すいちは
ふたつ

あなたとわたしの間には
どうしてもすき間があった
さわれない部屋もあった

それだけの当たり前が
どうしようもなく
どうしようも なく―


あの夏

同じ香りをまとっていた
あなたとわたし
ふたり

お揃いの香りに
惹かれ合い 振り返っては
目には見えないものを信じようとしていた

すれ違う ふたつの香り


香りを上書きするように 青い風がはしる