しばらくぶりで、M夫人が訪れました。
この方、いつもマッサージを受けるのですが、今日は右手を挙げて、「ここ(肘)から先は触らないで。」と言います。
そのわけは、というと。
先月のある寒い日、愛犬の散歩に出た時のこと。
途中、つるつるの凍った路面を犬が滑って歩けなかったので、犬の歩きやすい道路中央まで出たところ、ご自分が転倒してしまいました。
幸い、通りかかった車が無かったからよかったものの、道の真ん中でひっくり返り、びっくりするやら恥ずかしいやら。
そそくさと犬を引きずるようにして帰宅しました。
ところが落ち着いたら右手首の上あたりが妙に痛みます。
その日はあいにく日曜日、救急で病院へ行くほどの耐え難い痛みでもありません。
我慢強いことに、M夫人は、バッグの底板を工夫して添え木を作り、シップを貼って、手首が曲がらぬように保持して、翌日病院へ行きました。
すると、案の定、右橈骨に骨折の所見。
むくんで食い込みとれなくなるからと、ご自慢の指輪を切断され、ぐるぐる巻きに固定されて、自分で運転して帰るなんてもってのほか!ときつく言われ、渋々家族に迎えに来てもらい帰りましたとさ。
「最初の処置は上出来だったと思いますよ。バッグの底板だなんて、なかなか思いつくもんじゃない…。まあ、ひびが入った程度で済んで良かったですね、あたりどころが悪いと、もっと大事になるとこでしたよ。でも、指輪は惜しかったですね。」
「病院ではこれから腫れてくるって脅かされたけど、たいして、腫れたり、むくみもしなかったの。指輪は自分で取れるって言ったのに、もう有無を言わせねなだっけ・・・。」
「お気に入りの指輪だったのですねぇ。継ぎ直しもできるような話を聞いたことがありますが…。」
M夫人は、よっぽど悔しかったのか、お店に行けばはずしてもらえるのに、とかなんとかまだブツブツ言っています。
矛先を変えようと、「ワンコはきっと、すごく済まなさそうな顔してたでしょう?」と聞くと、「いいや、何やってんの?ときょとんとしてたっけ。」だそうで。
でも、このひと、以前にも飼い犬に引っ張られて転び、確か、足の甲を骨折してました。
重なるけがは、一概にワンコのせいだけとは言えないかもしれず、それとなく近いうち骨量のチェックをしてみるようにお話しておきます。
右手を挙げたところから、かように話は脱線して行きますが、骨が折れた話の全容を聞き取るのは、こちらも年を経た強みでしょうか、少しも骨の折れることではありません。
で、話をお聞きしながら、M夫人の希望通り、ひびの入った患部には触れることなく、全身をマッサージし、肘周り、肩甲骨周りも丹念にゆるめて差し上げます。
固定がとれたなら、あとはいろいろ使うことがリハビリになります。
元通りになるまでは使えば多少の痛みは伴いますが、折れたところは折れる前より丈夫になると言いますからね。
M夫人には、これからも愛犬と沢山散歩して、筋骨を維持していただきたいものです。