どうすると言ったって、鍼するしかないんでないかい、と思いつつも、鍼は初めて、しかもギックリ腰発生後、間もない。
「治るのならやってください。治るのなら…。」
あたかも、「確実!絶対!100%治るのでなければやりたくなんかないのよ!あんまり夫が勧めるから、乗り気じゃなかったけど来てみただけですからね。」と、言いたげなK夫人の言葉にへなへなとココロが折れかける。
「んなもん、やってみねば、治るも治らねもわがらねだろが。」と、ブラック・ニコちゃんが現れそうになるのを押しとどめ、「やっておけば後が楽ですよ。やらないよりはずっと。」と、手早く処置をして、最後に失眠の灸をすえ仕上げとする。
治療が終わり、迎えに来たK氏に、「足の裏が痛かったわ。」と夫人が口説くと、K氏いわく、「かがとの灸だろ?あれが効くんだや。俺もしたことある。」
次の日ふたたび来院したK夫人は、「痛いけど昨日よりはいいみたい。」と治療を受け、思いのほかさっさと着替えて帰っていった。
あの様子ならきっと大丈夫、今頃どこかの旅の空。初夏の旅路を満喫しているに違いない。