Fromages(チーズ)
「・・・で、ここまでなの?」
一心不乱に読みふけっていたヒョンジェは原稿を最後まで読むと顔を上げた。
「ああ。だから途中だって言っただろ。
確かこの後、その・・・何とか教授。
俺の話の中では「フロストル教授」だっけ。
そいつと恋のさや当てがあって・・ま、最後は丸く収まるんだったよな。」
ボンスはそういうとニヤニヤと笑う。
「うるせ~な。まあな。恋に障害はつき物だからな。
ここまではまあまあってとこだな。」
そういうヒョンジェのまんざらでもない様子を見てボンスは少しほっとしていた。
「ほら、続き書くんだから返せよ」
ボンスはヒョンジュから原稿を奪い取った。
「でも・・そんなの売れるか?」
ヒョンジュは心配そうに覗き込む。
「わからないな・・・・。いっそミュージカルにでもしたらいいかもな」
ボンスが冗談っぽく言った。
「え?俺が歌うの?」
ヒョンジェはそういうとわざとらしくミュージカルの物まねをする。
二人は顔を見合わせてゲラゲラと笑った。
数日後。
「お前・・ヒョンジェじゃない?」
忠武路の交差点で声をかけられたヒョンジェが振り向く。
「え?ミンシク?お前、元気だったかよ~」
交差点のど真ん中で抱き合って二人は3年ぶりの再会を喜んだ。
「しかし・・・お前凄いよな・・ミュージカル映画の監督じゃ今注目度No.1だからな。」
ヒョンジェはピッチャーのビールを注ぎながら興奮してミンシクに話しかける。
「ミュージカル映画って市場自体がわが国は小さいですからね。
どんなもんかな。」
ミンシクは苦笑いするとビールを勢いよく一息に飲んだ。
「でも、凄いと思う。何でも認められるまでになるっていうのは凄いことさ」
「お前だって、その歳で天下のHarper's Bazaarの専属フォトグラファーなんて凄いよ」
「何だか自慢大会みたいだな。俺たちは本当に凄い」
ヒョンジェはふざけたように言う。
「じゃ、最高に凄い俺たちに乾杯だ」
ミンシクはそういうとビールをピッチャーごと持ち上げた。
「で・・次は何撮るんだよ」
ヒョンジェがミンシクに訊ねる。
「それが・・・いい台本がなくってね。
ラブロマンスっていうのは決まってる。
で、舞台はパリにしようと思ってるんだ」
ミンシクはちょっと嬉しそうに言った。
「何で?パリなの?」
ヒョンジェは不思議そうに訊ねる。
「え?俺がパリに行きたいから」
ミンシクは飄々と答えた。
「バカ言えよ。お前ぐらいになれば自腹で好きなだけ行けるだろ。
パリあたり。それにお前とパリはあんまり似合わないぜ」
ヒョンジェはゲラゲラと笑った。
「相変わらず失礼な奴だな。
実は今回はだな・・・主演女優も決まってるんだ。
で、彼女の出演しているフランスの化粧品会社とのタイアップも決まってる。
資金はふんだんだ。」
ミンシクはニヤッと笑った。
「なんだ。そんなことか。で、女優誰?」
ヒョンジェが興味津々に訊ねた。
「まだオフレコなんだぞ。 パク・ユナ 」
「え~。あの妖精みたいな子かよ」
ヒョンジェの眼が輝いた。
「所帯持ちの癖に・・怪しい奴だ」
ミンシクは色めき立つヒョンジェを横目で睨む。
「関係ないさ。美しいものは美しい。
あの子はいいよ。魅力的だ」
ヒョンジェは興奮しながらビールを注いでいる。
「奥さんにばらすよ」
「どうぞ。うちのかみさんはそんなこと気にしませんから。」
「全く・・・お前にはもったいないいいかみさんだよ。可愛いし、賢いし」
「まあな。」
自慢げなヒョンジェ。
「で・・どんな話がいいんだよ。」
「華やかな話がいいな・・・恋あり、ファッションあり、観光あり。
そして歌と踊りだ」
「待てよ・・・俺・・・知ってるよ。そういう話の本」
ヒョンジェはニヤッと笑った。
一時間後。
ミンシクとヒョンジェの席にはボンスが同席していた。
ミンシクはずっと原稿を読んでいる。
「いいね・・・これ面白いよ。
ねえ、これすぐ台本に書きなおせるかな。」
「え?マジですか。もちろん。えっと・・・3日下さい」
ボンスは紅潮した顔で答えた。
「OK、じゃ頼むよ。それからさ・・・ヒョンジェ」
「え?」
すっかり一仕事終えた表情のヒョンジェはのんびりとタバコをふかしていた。
「お前・・・この映画一緒にやらないか?」
「どういうこと?」
「お前、共同監督ってやってみない?」
「え?」
「ストーリーとかは俺に任せてさ。Special Visual Consultant ってどうよ。」
「何?それ」
「つまりだな・・なんかこう・・新しいことしたいわけよ」
「うん」
「映画の色彩設計とか・・色彩撮影とか。
普通に撮る以上に視覚効果を狙って斬新な映画にする。
主役は元々お前なわけだし・・・お前らしい、写真を生かしたスタイリッシュな映画にしてみないか?」
「うん。凄い面白そうだ。
え?じゃあさ、タイトルバックのデザインしたり・・映画の中に俺の撮った写真とかをオプティカルプリンターで焼きこんだりしていいの?」
「何だか細かいことはわからないけどさ・・お前のその才能を是非映画に生かしたい。プロデューサーには俺が掛け合うから。
任せとけ。一緒にやろうぜ」
「おお・・何だか面白くなってきたな」
ヒョンジェは新しい挑戦を目の前にわくわくしていた。
「・・・で、ここまでなの?」
一心不乱に読みふけっていたヒョンジェは原稿を最後まで読むと顔を上げた。
「ああ。だから途中だって言っただろ。
確かこの後、その・・・何とか教授。
俺の話の中では「フロストル教授」だっけ。
そいつと恋のさや当てがあって・・ま、最後は丸く収まるんだったよな。」
ボンスはそういうとニヤニヤと笑う。
「うるせ~な。まあな。恋に障害はつき物だからな。
ここまではまあまあってとこだな。」
そういうヒョンジェのまんざらでもない様子を見てボンスは少しほっとしていた。
「ほら、続き書くんだから返せよ」
ボンスはヒョンジュから原稿を奪い取った。
「でも・・そんなの売れるか?」
ヒョンジュは心配そうに覗き込む。
「わからないな・・・・。いっそミュージカルにでもしたらいいかもな」
ボンスが冗談っぽく言った。
「え?俺が歌うの?」
ヒョンジェはそういうとわざとらしくミュージカルの物まねをする。
二人は顔を見合わせてゲラゲラと笑った。
数日後。
「お前・・ヒョンジェじゃない?」
忠武路の交差点で声をかけられたヒョンジェが振り向く。
「え?ミンシク?お前、元気だったかよ~」
交差点のど真ん中で抱き合って二人は3年ぶりの再会を喜んだ。
「しかし・・・お前凄いよな・・ミュージカル映画の監督じゃ今注目度No.1だからな。」
ヒョンジェはピッチャーのビールを注ぎながら興奮してミンシクに話しかける。
「ミュージカル映画って市場自体がわが国は小さいですからね。
どんなもんかな。」
ミンシクは苦笑いするとビールを勢いよく一息に飲んだ。
「でも、凄いと思う。何でも認められるまでになるっていうのは凄いことさ」
「お前だって、その歳で天下のHarper's Bazaarの専属フォトグラファーなんて凄いよ」
「何だか自慢大会みたいだな。俺たちは本当に凄い」
ヒョンジェはふざけたように言う。
「じゃ、最高に凄い俺たちに乾杯だ」
ミンシクはそういうとビールをピッチャーごと持ち上げた。
「で・・次は何撮るんだよ」
ヒョンジェがミンシクに訊ねる。
「それが・・・いい台本がなくってね。
ラブロマンスっていうのは決まってる。
で、舞台はパリにしようと思ってるんだ」
ミンシクはちょっと嬉しそうに言った。
「何で?パリなの?」
ヒョンジェは不思議そうに訊ねる。
「え?俺がパリに行きたいから」
ミンシクは飄々と答えた。
「バカ言えよ。お前ぐらいになれば自腹で好きなだけ行けるだろ。
パリあたり。それにお前とパリはあんまり似合わないぜ」
ヒョンジェはゲラゲラと笑った。
「相変わらず失礼な奴だな。
実は今回はだな・・・主演女優も決まってるんだ。
で、彼女の出演しているフランスの化粧品会社とのタイアップも決まってる。
資金はふんだんだ。」
ミンシクはニヤッと笑った。
「なんだ。そんなことか。で、女優誰?」
ヒョンジェが興味津々に訊ねた。
「まだオフレコなんだぞ。 パク・ユナ 」
「え~。あの妖精みたいな子かよ」
ヒョンジェの眼が輝いた。
「所帯持ちの癖に・・怪しい奴だ」
ミンシクは色めき立つヒョンジェを横目で睨む。
「関係ないさ。美しいものは美しい。
あの子はいいよ。魅力的だ」
ヒョンジェは興奮しながらビールを注いでいる。
「奥さんにばらすよ」
「どうぞ。うちのかみさんはそんなこと気にしませんから。」
「全く・・・お前にはもったいないいいかみさんだよ。可愛いし、賢いし」
「まあな。」
自慢げなヒョンジェ。
「で・・どんな話がいいんだよ。」
「華やかな話がいいな・・・恋あり、ファッションあり、観光あり。
そして歌と踊りだ」
「待てよ・・・俺・・・知ってるよ。そういう話の本」
ヒョンジェはニヤッと笑った。
一時間後。
ミンシクとヒョンジェの席にはボンスが同席していた。
ミンシクはずっと原稿を読んでいる。
「いいね・・・これ面白いよ。
ねえ、これすぐ台本に書きなおせるかな。」
「え?マジですか。もちろん。えっと・・・3日下さい」
ボンスは紅潮した顔で答えた。
「OK、じゃ頼むよ。それからさ・・・ヒョンジェ」
「え?」
すっかり一仕事終えた表情のヒョンジェはのんびりとタバコをふかしていた。
「お前・・・この映画一緒にやらないか?」
「どういうこと?」
「お前、共同監督ってやってみない?」
「え?」
「ストーリーとかは俺に任せてさ。Special Visual Consultant ってどうよ。」
「何?それ」
「つまりだな・・なんかこう・・新しいことしたいわけよ」
「うん」
「映画の色彩設計とか・・色彩撮影とか。
普通に撮る以上に視覚効果を狙って斬新な映画にする。
主役は元々お前なわけだし・・・お前らしい、写真を生かしたスタイリッシュな映画にしてみないか?」
「うん。凄い面白そうだ。
え?じゃあさ、タイトルバックのデザインしたり・・映画の中に俺の撮った写真とかをオプティカルプリンターで焼きこんだりしていいの?」
「何だか細かいことはわからないけどさ・・お前のその才能を是非映画に生かしたい。プロデューサーには俺が掛け合うから。
任せとけ。一緒にやろうぜ」
「おお・・何だか面白くなってきたな」
ヒョンジェは新しい挑戦を目の前にわくわくしていた。