アカデミー賞最有力と噂されている話題作ということで、観てまいりました。
ほとんど事前情報なく鑑賞。
早速感想を。
激しくネタバレしておりますので、
ここから先はご自身の判断で。
1980年代の韓国系アメリカ移民のお話。
韓国での生活も大変で。
どうせ同じ苦労をするならアメリカへ。
大きな土地に憧れ、農場経営を夢見る夫。
夫の夢にある程度の理解を示しつつも、
安定した生活を求める妻。
しっかり者の娘。
心臓病を患う息子。
アーカンソーの荒地にポツンと建っているトレーラーハウスに彼らが、越してくるところから、物語は始まります。
水源を自力で探し。
荒地を耕しながら、
息子の病気の身体を気にかけつつ、
副業で鳥の孵卵場でひよこの選別のアルバイトに精を出す毎日。
そうそう。
ひよこって雄は殺処分するって、先日ニュースで見て初めて知ったんでした。
この映画の中で、煙突からのぼる殺処分の煙を見ながら、
「雄は食べるとまずいし、卵も産めないから、殺される。だから、(俺たちは)役に立つように働かないと」父親が息子に話す姿が何だか印象的。
子供たちが学校に通っている様子はなく、
夫妻が仕事に出る間、
子供たちの世話をするために、妻の母親が韓国からやってくる。
ここで、名優ユン・ヨジョンさん登場。
当初、字も読めず、クッキーも作れないおばあちゃんに「おばあちゃんらしくない」と反発する息子だが、
日々の小さな繋がりの中で、徐々におばあちゃんとの距離が縮まっていく。
テレビでのプロレス鑑賞と花札が大好きなちょっと変わった、でも家族のことを想っているおばあちゃんをユン・ヨジョンさんが好演。
お料理全く作れないおばあちゃんは粉唐辛子と煮干しをあんなにたくさん差し入れない気もしますが。
そこは、まあ、ね。
そんなこんなで続く日々の生活。
水が出なくなったり、作った野菜を買ってくれる約束だった相手に裏切られたりと、
なかなか農業は軌道に乗らず。
そんな中で、おばあちゃんが病に倒れ、
さらに生活困窮。
夫婦仲は悪くなるばかり。
妻は先が見えない生活に嫌気がさして
別れを決意する。
農場と家族どっちを選ぶ?的な決断を夫に迫る。
家族としての幸せよりも、自分の信念を貫くことを優先したかのような苦渋の決断をする夫。
その後、
新しい野菜の買取先が見つかったり、
息子の心臓病がよくなったりと、
うまくいく方向性が見えてくる。
単純に喜び、今まで通り家族でやっていけると思う夫と、
一度家族を捨てる選択をした夫を許せない妻。
(息子の身体のため、水は変えない方がいいと医師に言われたのに、なぜ、土地を捨てて出て行くことを考えているのか、ちょっと妻の思考が私にはわからない。)
で、あることが起こり。
最後はめでたしめでたし?
最後の方はさすがに書かずにおきました。
途中、ちょっとオカルトチックというか
スピ系な行動をする隣人が出てきたりして。
(彼の立ち位置が最後までよくわからなかったです。朝鮮戦争と十字架を背負うのと、土地の秘密と何か見えるのは何か繋がりがあるのか…全くわからない。)
いつか、何かすごいことが起きるんじゃないかと、ドキドキしながら観ていましたが、そんなにショッキングなことは起こりません。
アカデミー賞、韓国と聞いて「パラサイト」のような作品を期待すると肩透かしかもしれません。
何だか、記憶の糸を手繰るべく、ダラダラ書いてしまいました。
こう書いていても、この映画、あまりにつかみどころがないような印象です。
が、私なりに見どころを考えてみました。
丹念に細かく描かれた家族の姿と絆、そして、土地で生きる「覚悟」でしょうか。
共に家族の幸せを願いながらも、厳しい生活ゆえ、想いがすれ違う夫婦ですが、ささやかな出来事の描写から、家族への想いがしっかり伝わってくるところ、
また、そこに妻の母親が加わることによって、息子との関係性に変化がおこり、息子の成長へと繋がっていくあたりは、細かく描けているなぁーと感心しました。
また、危機を経てお互いの大切さに気づいた夫婦がラストシーンで見せる表情は、この土地で、土地に馴染み、受け入れながら、家族と共に生きる「覚悟」を決めたという決意が現れているようでした。
エンディング。
息子と夫がおばあちゃんが植えた「ミナリ」(芹)を仲良く摘む姿が印象的。
祖母の手でもたらされた、何処の地にも根付く逞しさを持ったミナリ。
これからこの家族はミナリのように逞しくアメリカの地で暮らしていくに違いないと
思ったのでした。
(一緒してくださったお友達は、「外来種の植物を勝手に植えて大丈夫なのかしら」とご心配のご様子でした。今考えると、それってもしかして、この映画の中で、すごーく深くて重要な提言だったりするのかも?・移民問題…いろいろありますから。)
突飛なことが起こらないだけで、意外に社会の深い闇をついた深い映画なのかもしれませんかね…。
鍵はやはりミナリ。しっかりと根を張り増えていく。ここね!
じんわり、響いてきました。
はい、じわっと来る映画でした。
こうやって書いて初めて気づく。(笑)
しかし、ユンヨジョンさんは圧巻でしたね。
また、是非ご一緒してくださいませ。