チョルスとユギョンは海を眺めて話をした。
「私、結婚しないわ。渡米もしない」
チョルスはユギョンを振り向いた。
「ユギョン…」
「私、破談にされたの」
チョルスは戸惑いを見せた。
「でも、これでよかったわ。私の好きな人が誰なのか、よくわかったから」
「…」
「あなたを思って別れた、って話そうかとも考えたわ。でも、チョルスさんにウソはつきたくなかった。私のこの気持ちにウソはないから」
チョルスは目を落とした。ユギョンを見ることが出来ない。彼女の気持ちに応える自分はもういないのを感じていた。
「私、チョルスさんのところに戻ってもいい?」
チョルスは顔を上げた。困惑の目でユギョンを見つめた。
ユギョンが必死ならアンナも必死だった。
アンナは走った。チョルスのところに向かって脇目も振らずに走った。
――花束女にチョルスは渡せない!
「チョルスさんが私の気持ちを受け止めてくれたら・・・これからはずっとそばにいるわ」
走って走って、アンナはチョルスの事務所にたどり着いた。全力で事務所の階段を駆け上がった。ドアノブを引いた。
しかし、中には誰もいない。
息を荒げながらアンナは落胆した。意気消沈して外に出た。
手すりを握ってすごすごと階段をおりた。
「もう聞いちゃったわね。寄りを戻したければ、そうすればいいわ。私に関係はないんだ」
階段を降りきった時、背後からチョルスの声がした。
チョルスは車に乗って戻ってきたところだ。
アンナのそばで車を止めた。
「何しにきたんだ?」顔を見て続けて訊ねた。「走ったのか? 汗かいてるぞ」
チョルスは笑った。
「チャン・チョルス」アンナは口を尖らせた。「仕事をさぼってどこ行ってたのよ!」
チョルスは余裕の顔で言った。
「お前こそ、ここへ何しに来た。まさか、俺に会いにか?」
アンナは動揺した。
「違うわ。私は…思い出したことがあって、それでやってきたのよ」
「思い出したって何を?」
アンナは返事に詰まる。
「そ、それは」とっさに車を叩いた。「運転できることを思い出したのよ」
チョルスはアンナの表情などから気持ちが読み取れるようになっている。可笑しそうに言った。
「前に運転したじゃないか」
「そうだったっけ? 私は覚えてないわ」
とぼけながらもユギョンが一緒でないのにアンナはほっとした。
「帰ろう。私が運転するわ」
チョルスは車からおりた。ちょうどよかったとばかり言った。
「俺は家に行かないから、約束した場所でおろしてくれ」
そう言って助手席に回りこんだ。
「約束ですって?」
アンナは歯軋りした。
「これから花束女に会うのね」
チョルスは助手席に乗り込んだ。シートベルトを締める時、アンナを見て言った。
「さあ、運転してくれ」
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