「道端で何してるのよ! 邪魔じゃない。早くどけてよ、早く!」
アンナは農機のタイヤを蹴った。
「何をそんなに焦ってるんだ?」
農機のオヤジは不思議がるが喧嘩を買うでもない。農機のエンジンをかけようとする。しかしセルは回ってもエンジンはかからない。
「おかしいな? 雪のせいだろうか?」
「早くどけなさい、早く」
事故に巻き込まれそうになったアンナの怒りは収まらない。
しかし、そうしてばかりいられないことに気付き、車に戻る。すると車の中にいたマイプリンセスがいなくなっている。ドアが開いたままになって外に飛び出ていったのだ。
「プリンセスは…?」
辺りを見わたし、彼女は大きな声で叫んだ。
「プリンセ~ス!」
今のアンナの孤独と絶望を支えてくれているのはプリンセスだ。彼女は夢中になってプリンセスを捜し始める。
あまりの大雪にチョルスはため息をつく。
「まいったな…何で急に雪なんか降り出したんだ…もう、すぐそこなんだが…事故でも起きたのか?」
アンナはプリンセスを捜してどんどん車の後方列へと移動していく。
「みんな動かないで、プリンセスがいないわ!」
プリンセスが車に轢かれるのを怖れてアンナは叫んだ。
「プリンセスはどこ? プリンセスは!」
人騒がせな声で横を通っていった女を見てチョルスの友人はぼやいた。
「何だ、あの女は? あの女のせいで渋滞してるのか?」
「何か探してるようだ」
「まてよ?」
チョルスの友人ははたと行き当たった。
「あれは…前にチョルスが捜してた女じゃないか」
チョルスの車も渋滞の最後尾にたどりついてしまった。
「やけに混んでるな…」
携帯が鳴る。
「ええ、先輩どうしました?」
「君の知り合いが事故に遭ったようだ」
「私の知り合い?」
「この前、捜してた女だよ」
「彼女は今どこに? この先の事故現場に? はい」
チョルスは携帯のイヤホーンをはずした。
「すると、この先にお前がいるのか!?」
チョルスは車の外に飛び出した。
もう、居ても立ってもいられない気持ちだった。
渋滞列の前方に向かって走り出す。次第にそのピッチは上がる。
アンナはプリンセスを捜して後方列に向かう。
チョルスは前方に走る。
「プリンセスがいるから気をつけて」
アンナは苛立って他人の車を蹴る。
「動かないでよ! プリンセス、どこにいるの?」
そしてアンナはようやくプリンセスを捜しあてる。抱き上げる。
「ここにいたのね。やっと見つけたわ。行こう」
安心して我に返ったアンナはそばに人の気配を感じた。
見るとチョルスが目の前に立っていた。
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb