ユギョンは言い返した。
「彼の元を去ろうとしてるくせに、終わってしまうのが本当は怖いのね?」
「そうよ。以前はそうじゃなかったのに――チャン・チョルスのせいでこうなったの。だから彼に手を出さないで」
「…」
「本当に終わった時はちゃんと連絡するから」
アンナは行こうとしてもう一度立ち止まった。
「いいえ。どっちにしろ、あんたは気に入らない。ダメよ」
ユギョンは開いた口が塞がらない。
憎々しげにつぶやく。
「正直過ぎて、呆れるしかないわね」
行こうとするユギョンをアンナは呼び止める。
「時に人は何かに執着することもあるし、誰かに頼りたくもなる。なのに、私はあなたをバカにしてた。今までのこと、悪かったわ」
ユギョンに詫びを残しアンナは行こうとする。
今度はユギョンが呼び止めた。
「まさか、戻ってこないわよね?」
「どうかしら?」
アンナの脳裏にカンジャの顔が浮かんだ。
――お姉さん、雪が降る日に会おうね。
「雪が降ったら戻るかもね」
「ここには雪は降らないわ」
「知ってるわ」
アンナは歩き去る。
いろんな思いを去来させながらユギョンは彼女を見送った。
チョルスは元気がない。アンナのいなくなった部屋で気が抜けたようになっている。
「そろそろ出発した頃かな。何も残さず、ぜんぶ持っていけ。そう言えば~、いつも隠してたお金もぜんぶ置いていったな」
チョルスは立ち上がる。アンナの寝床だったソファの枕元をはがした。手をつっこんだ。封筒が出てくる。中には紙幣が入っている。
「これは掛け金の残りだ。単純なやつだ。隠し場所なんてとっくに知ってたよ。ぜんぶバレバレだったのに」
――ダメよチャン・チョルス、あっちへ行って。ここは私の場所よ。
そう言ってアンナはこの場所から離れようとしなかった。
「他の分も回収してみようか」
階段の壁に貼られた縁起物の軸。アンナは階段を駆け下りてきて、
ここの前に立ちはだかったこともある。
――ここ、何かついているわ。チャン・チョルス、あっちへ行って。
子供らの部屋の本棚も隠し場所のひとつだった。本を抜き出して開くとやっぱり紙幣が貼り付けてある。
チョルスは思いだし笑いした。
――これ、私の本だから触らないで。
冷蔵庫もこの上ない隠し場所のようだった。
――チャン・チョルス、お金は凍っていても使えるよね? 冷蔵庫って便利だわ。
そうも言ってたな…。
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