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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(100)





韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(100)



  クムスンが店に戻ってくるとスンジャが入り口に立っていた。クムスンはスンジャに気付いて走り寄った。
「叔母さん、どうしたの?」
「あなたが心配で寄ったのよ。心配で夜も眠れない。手術のこともあるし・・・おばあちゃんにも話してないし」
 ちょっとためらってからクムスンは切り出した。
「ちょうどよかった。お話することがあって――叔母さん、婚家で5000万ウォンを融通してくれたんです」
「どういうこと?」
「ご存知になって――義父母と義兄が示談金に足して使うようにと」
 スンジャはびっくりする。
「まさか、そんな・・・クムスン――婚家には尽くさないといけないわ。そんな義父母はどこにもいないわよ」
 クムスンは笑顔で頷いた。
「ほんと、どこにもいませんね」
「それでそのお金は?」
「示談はしたのでチャン先生に返しました」
「そうなの。じゃあ残りは2000万ウォンね」
 スンジャはクムスンの手を取った。
「それなら手術はやめられないの? お金が目的ではなかったけど」
 クムスンは説明した。
「手術日が決ったそうです」
「何ですって?」
「それで義父母に、1度、挨拶に行ってください。きっと挨拶にも来ないと思ってるわ。数日経ってるし」
「それは構わないけど手術日が決ったなんて・・・」

 ピルトが出かけようとするとジョンシムが寝ている。家事とフィソンの面倒を見てきた疲れがどっと出たようである。
 ピルトは部屋から枕を持ってきてやった。頭の下に入れてやろうとするとジョンシムは目が覚めた。
 ジョンシムは起きようとするが、ピルトはそれを制した。
「もっと寝てろよ。俺は少し出かけてくるから」
「どこに行くのよ?」
 ピルトは答えずに出かけていった。
 フィソンが保育園に通うようになり、ジョンシムにも少しゆとりが出た。
「今夜はサムゲタンでも作りましょう」
 ジョンシムも買い物に出た。

 買い物に出かけてきたジョンシムはそこでばったりジョムスンに出くわした。
 フィソンが育つ過程で二人はすっかり親しさを増している。
 挨拶に当たり障りのない話を交わした後、ジョンシムは訊ねた。
「示談はうまくいきましたか?」
「それをどうして・・・何とか」
「よかったですわ――老婆心からお話しするんですが、万一ですけど・・・おばあさま――母親だとはいえ、移植はするべきじゃないですよね」
 クムスンの移植話は初耳だった。
「もちろん、おばあさまも・・・そうお考えだと思いますが、もしか、と思って・・・同じご意見ですよね? 移植には反対でしょ」
 ジョムスンは訊ねた。
「移植って何のことですか?」
 ジョンシムは”あっ”となった。クムスンの手術話は、ジョムスンには寝耳に水のようである。
「聞いていませんか?」
「ええ、私はまったく知らない話で・・・」
「何だか、余計なことを話したかしら・・・?」
「そんなことないわ。余計じゃないから詳しく話してください。母親に移植とは?」
 ジョンシムは聞いた通りのことを話した。
「クムスンの母親が現れて移植してくれと・・・」
「何ですって? 母親がですって?」
 ジョンシムは困った。
「本当に何もご存じなかったんですね。当然、話を聞いたかと・・・」
「何のことか、もっと詳しく話してください」

 ジョムスンは頭に血を上らせて帰宅した。
 水を飲み、ジョンシムから聞いた話を反芻した。

――母親の夫が示談金を出すからと移植を頼んだそうです。ぜんぜん知らなかったですか?

 そういえば病人として歩いていたのを病院で見かけた。あの金はそれとつながっていたのだったか・・・。

 スンジャの言葉を思い出した。

――夫が捕まったのを知って”できることはないか”と。

 ジョムスンは急いで居間にあがり、スンジャのもとに電話をかけた。
 しかし、スンジャは退勤したとの返事だ。
 それならとクムスンの携帯に電話を入れようとする。だが、寸前で思いとどまる。
「それより・・・まずは嫁をやりこめて一部始終を突き止めないと・・・」


 ジョンシムも帰宅した。
「どういうこと? 叔母さんとクムスンだけが知ってるの? おばあさんは何も知らず、余計なことを言ったのかも・・・どうなってるのかしら・・・おばあさんは急に顔色変えたわ。クムスンに電話しないと・・・」
 電話機のところに走るとチャイムが鳴った。
 ジョンシムは玄関に出た。スンジャがノ家を訪ねてきたのだった。
 ジョンシムはスンジャを部屋にあげた。
 屋内の涼しさにスンジャは感心した。
「壁を暑くしたので夏は涼しいの」
 牛骨を手土産で差し出した後、スンジャは恐縮しながらお礼を言った。
「いくらお礼をしても足りません。夫が釈放されたら婚家の分から返済します。心から感謝します」
 ジョンシムの気がかりはクムスンの手術の件だった。
「それで、あの・・・」
 言いそびれているとスンジャは言った。
「クムスンを大事にしていただき、本当に感謝してますし、私からクムスンにも言いましたが――すばらしい義父母に誠心誠意尽くすようにと」
「・・・嫁に来てから頑張ってくれてます」
「いいえ。良いも悪いも見方次第ですから、憎いと思えば憎いものです」
「ええ・・・お話はもう全部?」
「・・・?」
「私が話してもいいですか?」
「どうぞ」
「それで、あの件は――クムスンと叔母さんだけがご存知で?」
 スンジャは頷いた。
「そうなんですね。おばあさんにはどうして? ショックを受けるから?」
「それと・・・義母には母親が仇同然なんです」
「そうでしょうね。子供を置いて再婚したから」
「はい」
「ですけど――おばあさんが知る方がいいのでは? そうすればクムスンがバカなことをしないわ」
「そうなんです。それで悩んでるんです。義母に話して手術を断念させるべきか。それとも、クムスンの母親だし意思を尊重するべきなのか・・・」
「手術を決心とはどういうことです?」
「・・・」
「じゃあ、クムスンが手術を決心したと?」
「いえ、それが・・・」
「そうなんですね。こんな重大なことを私たちに相談もなく――手術を決定したんですか?」
「・・・」
 ジョンシムは声を荒げた。
「勝手に何の手術をすると?」
「・・・」
「おばあさんが知ってよかったわ。私は許可しませんが、おばあさんが止めてくださるでしょ」
 スンジャは動揺した。うろたえた。
「あの・・・今の話はどういうことですか? 義母が何を知ったと?」
 ジョンシムは買い物でジョムスンにばったり会い、示談や手術の話などしたことを説明した。

 
 初出勤して同僚たちと会社を出てくると表でテワンが待っている。
 同僚はクマに訊ねた。
「彼氏?」
「わぁ、カッコいいわ」
「あなた有能なのね」 
 クマは照れくさそうにしながら、テワンに冷たい目を向ける。
 同僚はクマの肩を叩いた。
「じゃあ、また明日」
「はい、先輩。さようなら」
 同僚を見送った後、クマはテワンにブスっとした目を送る。
 テワンはクマに駆け寄った。
「仕事終わったんだろ?」
「何の用? ここへはどうして?」
「借りがあるからな。初出勤の感想は?」
「・・・」
「怒ってるな。まず、どこかに入ろう」
「・・・」
 テワンは先に歩き出す。憎みながらもクマは後をついていく。


 ノ家を出たスンジャは気持ち穏やかじゃない。
「おばあちゃんにみんな知られ、どうしたらいいかしら・・・いいえ、これでよかったの。手術日が決ったし、黙ってるわけにもいかなかった・・・でもどうしたら」
 スンジャは嘆く。
「いやいや、しっかりするのよ。そうよ、気を引き締めて――まずは電話よ」


――ウンジュ。俺はあの子と別れられない。

 ウンジュはジェヒの言葉を思い返している。

――別れようと思った。でもダメだった。

 ウンジュは立ち上がる。店に出てクムスンを捜した。化粧室で見つけた。クムスンは手洗いを使っていた。
 ウンジュは言った。
「先に手を洗わせて」
「はい」
 手を洗った後、ウンジュは言った。
「あとで私の部屋に」


 ジェヒがヨンオクの病室に顔を出す。
 ミジャがいた。
「母さん、どうしたの?」
「ヨンオクさんの見舞いに来たのよ」
「奥様は?」
「透析室みたいよ。1時間になるけどまだなの。10分待って来なかったら帰るわ」
「連絡して来ないからさ」
「近くに来たから寄ったの」
「看護師の話だとヨンオクさん手術するって?」
「・・・」
「本当なら、どんなに幸いなことかしら。きっと善良で徳を積んだからよね」
「・・・」
「手術して健康になったら・・・」
「母さん、帰った方がいい。透析室から戻らないのは透析中に・・・」
 ドアの音がした。
 キジョンに付き添われてヨンオクが戻ってきた。
 ミジャは立ち上がる。
「来たわね。無事に終わられたのね」
「ずっとここで?」
「来たばかりです。先生、お久しぶりです」
「どうも」
「手術を受けられるそうですね」
「はい。聞きましたか。私も信じられませんが、朝、連絡があって・・・」
 キジョンはちらとジェヒを見た。ジェヒも視線を返した。
「本当によかったですわ。私がこれだけ嬉しいんですから。お二人の思いはなおさらでしょう」
「ともかく座って」とキジョン。
「そうだわ。お座りになって」
「大丈夫よ。透析が無事に終わって、体調がいいの。でもこちらに」
 ヨンオクはベッドに腰をおろす。
 ジェヒが病室を出るとキジョンもついて出た。

 外に出たキジョンはジェヒに言った。
「ちょっと話そう」
「私も先生に話があります」
 キジョンは自分の部屋にジェヒを連れていった。
「聞いただろうが、妻が手術する。クムスンさんが同意した」
 ジェヒはキジョンをにらむ。
「なぜ俺がお前に――釈明するのかわからない。彼女を好きだというし、仕方ない。正直、お前が情けない。ウンジュのことはあったが、だが俺は、お前が――俺の一番弟子だと信じていた」
「・・・」
「なのに、そのお前が・・・俺の一番辛い時に牙を剥くとは思わなかった。
どうであれ」
「先生」
「話は終わってない。どうであれ、理解してくれ」
「・・・」
「当事者であるクムスンさんが決めた」
「もうしわけありません。理解できません。先生のお話には決して理解できません」
「・・・」
「説教をするつもりではありません。鬱憤した忠言でもありません。今ここにいるのは弟子ではありません。一人の人間としています。私も先生同様余裕がありません。彼女の生活をご存知で?」
「・・・」
「これまでの生活は?」
「・・・」
「病院に青汁配達に来て――彼女と知り合いました。スクーターの事故で警察署で一夜を明かし、呼べる家族もいなかった。今も婚家で暮らし、私の母の美容院でわずか月50万の月給をもらい、辛いスタッフ生活にも1度たりとも――文句やグチを言ったり、泣くこともなかった。そんな子が――手術日が決り泣きました。そんな子が怖がってです。ダメです。いけません。過酷すぎます。私が阻止します。2度と泣くことがないよう私が守ります。撤回してください。それがダメなら奥様に話します」
「ジェヒ」
「脅かしではありません。私がどんなヤツ・・・」
「ジェヒよ!」キジョンは声を荒げた。「俺に何を望んでる? 切迫した妻を見守りながら、良心を守れというのか?」
「他の方法をお願いします」
「方法が他にあるのか? 分かるだろう。何がある? あるなら答えろ」
「・・・」
「そうだ。お前のいうとおり、過酷だ。人間のすることじゃない。親の道理も果たしてないのにクムスンに頼む。それを俺が分からないと思うか?」
「・・・」
「頼む。お願いだ。邪魔をしないでくれ。俺は妻を生かしたい」
「私は彼女を――守ります」
 ジェヒは立ち上がった。
「どうか。他の方法を探してください。私から言えるのはそれだけです」
 頭を下げて部屋を出ていった。

 クムスンたちはユン室長の指導のもと、染色の練習に励む。それが終わった後、クムスンはウンジュのところに顔を出す。
「染色教育で遅くなりました」
「座って」
 クムスンが腰をおろすとウンジュは切り出す。
「今まで苦労だったわね」
「・・・」
 ウンジュは給与袋を手にした。
「これが初めての給料でしょ?」
「・・・」
「店では前借りや問題処理で支払ったけど――こうして受け取るのは初めてよね。受け取って。今月の給料よ」
 クムスンは頭を下げる。
「・・・ありがとうございます」 
「基本給に20万追加したわ。店からの育児手当よ」
「えっ?」
「破格でしょ」
「はい。驚きました」
「その分、頑張って。主婦の半分は仕事を持ってる。働く女性は増えてるし、それに見合う政策が必要よ。うちの店では――育児をする職員がいれば、今後、手当てを支給するわ」
「ありがとうございます」
「・・・子供の年齢は?」
「3歳です」
「性別は?」
「男の子です」
「昼間は誰が面倒を?」
「義父母です」
「そうなの・・・でも、大変でしょ。育児に仕事で」
「・・・」
「夫とはいつ死別を?」
「・・・」
「交通事故と聞いたわ。そうでしょ?」
「はい」
「結婚生活はどれくらい?」
 クムスンは答えるのに窮した。ウンジュの意図が読めないからなおさらだった。
 この時、ウンジュの携帯が鳴った。
 院長からだった。
 クムスンは席を立った。
「まだ店にいます」
 ウンジュが電話しだしたので引き下がるタイミングを計った。
 すると母親の話が切り出される。クムスンはウンジュのやりとりに耳を傾けた。
「ええ、ママと一緒に? 本当ですか? ママが移植手術をすると? もちろんです。嬉しいです。夢のようです。こんな吉報を早く教えてくれずに。ええ、代わって」
 クムスンは動揺する。話を聞きたい気持ちといたたまれない気持ちが交錯する。背を返す。いたたまれない気持ちに引きずられて歩き出す。
「ママはいつ知ったの?」
 ウンジュの言葉にピクピクンと反応しながらクムスンは部屋を出ていった。 





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