アンナは自分の寝床に入った。天井を眺めて思った。
「チャン・チョルスがいないと退屈だわ~」
携帯を取り出す。チョルスにかけようとして思いとどまる。
「ダメよ。格好悪いわ」
それなら寝るに限る。その分朝は早くやってくる。アンナは目をつぶった。
そんなアンナに夢が訪れた。テーブルの前に高価な衣装をまとった自分がいる。テーブルの上に置かれた指輪を当然のように手にし、自分の寝床に歩いていく。アンナの半分は幽体離脱している。目の前に居るのももう半分の自分だった。アンナは眠りに沈んだ別の自分(ナ・サンシル)を静かに見つめ下ろした。
――ここで何してるの? もう戻らなきゃいけないでしょう?
――ここは…暖かすぎる。
――幸せを感じるほど傷は深まるわ。
幽体離脱したアンナは手にした指輪を見つめる。指輪はアンナの記憶と感情を揺さぶり続ける。アンナはクールに言い放つ。
――傷つきたくなければ、元の自分にもどりなさい。私は、今まで誰のことも…傷つくほど愛したりはしなかった。
――…。
もう半分のアンナは眠り続けながら涙を流した。
携帯が鳴った。
アンナは夢と眠りから覚めた。
チョルスからの電話だった。
「チャン・チョルス…」
「寝てたか? だったら、またかけなおすよ」
「チャン・チョルス…私、怖いの」
「何が?」
「記憶が戻った時に…今、感じてるすべての物をなくしたらどうしよう?」
チョルスは笑顔になった。
「心配するな。俺がいるじゃないか。お前がなくしたら、俺が拾っておくから」
アンナは嬉しくなる。
「そうね。私がなくしたらあんたが全部持っていて。もし私が遠くに行っても――捜しにきて、必ず返してね」
「あんまり遠いと大変だから近場にしろよ」
「大変でも我慢して。それが愛なのよ。チャン・チョルス…愛してるわ」
「…!」
チョルスは一瞬呆然となった。
精一杯の告白の後、アンナは携帯を閉じた。
「私はちゃんと言ったわ。もう傷ついたって構わない」
チョルスは動揺しながら携帯を見つめた。
「そんなに大事な言葉を…電話で言ってすますのか?」
チョルスは携帯に向かって怒鳴った。
「そんなの無効だ、無効!」
しかし、憎まれ口もすぐ無効になった。
チョルスの顔はすぐさま嬉しさで満ち溢れたからだ。
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