雨の記号(rain symbol)

絵門ゆう子さんのこと

アイドルグループ・SMAP(スマップ)の中居正広司会でおなじみのテレビ番組<金スマ>を昨夜見た。毎週話題の俳優やタレント、歌手などをゲストに呼んで繰り広げるトークショー番組である。
 僕はこの番組をたまに見ている。昨夜は癌と壮絶な闘いの果て亡くなった絵門ゆう子さんの特集を組んで流していた。
 絵門ゆう子さんと書いてもピンとこない人もいるだろう。ちょっと説明する。覚えておいでの方もあろう。彼女は元NHKアナウンサーの池田裕子さんのことである。NHK入局後、またたくうちに人気アナになり、数年でフリーアナウンサーとして独立し、女優などもこなし、精力的にタレント活動を行った方である。
 その頃、NHKから出てきたにしては、ちょっと派手目で目立ちたがり屋の性向を僕はこの人に見ていた。実際、テレビのワイドショーなどに出てきて、女優をやってみたかった、などと彼女は発言していたと記憶する。世間もそんな彼女を奔放過ぎると見て、いささか冷ややかな目を向けていたようにも思う。
 そうするうち、ちょっとしたスキャンダルなんかもあり、彼女は芸能界で次第に話題の中心軸から逸れていった感があった。たまにテレビのドラマなどに登場しても、もはや旬のタレントは別にいて彼女は地味でしかなかった。 
 テレビなどに登場する機会が減っていき、その後、彼女がどのような芸能活動を行っていたかはよく知らない。
 何年かが過ぎてテレビに再び登場してきた時、彼女は不治の病に冒された悲しい女性となっていた。2003年七月の<金スマ>に彼女は登場しているが、僕はこの番組を見た記憶がある。最初から見たわけでなく、チャンネルを切り替えているうちこれにぶつかったのだ。その後、別の番組に切り替えたのだったかもしれないが、この女性、以前に比べてきれいになったな、可愛くなったな、との印象を持ったのは覚えている。
 そしたら昨夜の番組で、中居君も彼女を指してあの時<可愛いですよ>と発言していたのを知り、わが意を得たりの思いとなった。そう、間違いない。あの時の彼女はとっても可愛く見えたのである。
 この時すでに、彼女の癌は全身に転移し、病院に通いつめて六時間にも及ぶ点滴を受けなければならない身となっていた。2003年七月、<金スマ>に登場したのはその話をするためだったのだ。
 ゲスト出演で出た時の映像が流されたが、その際、彼女はとっても重要な話をしている。
 こういう病気になって知りました、人生というものは生まれた最初からカウントダウンが始まっているのですね、と彼女は語っている。もちろんそれは意識として分かっていたことだけど、不治の病を宣告され、人生のカウントダウンを意識して初めて明瞭な形で自分のやるべきことが見つかった気がします、と。
 養老孟司が「バカの壁」の中で、アウシュビッツの強制収容所に収容されていた経験を持つ、V・E・フランクルという心理学者の言った(人生の意味)について取り上げている。
 以下、そこの一節を引用してみる。
 
 ガンの末期で寝たきりになった患者の生きる意味を彼は問います。医者によっては、そういう人はもはや生きる意味はない、と判断するかもしれません。しかし、フランクルはこう考えました。「その人が運命を知ったうえで取る態度によって、周囲の他人が力づけられる」という意味があるのだ、と。
 
 彼の言葉は絵門ゆう子さんが癌を宣告され、人生のカウントダウンを意識し、その中で自分にとっての生きる意味を見出そうとしたことと見事に重なっている。
 彼女は入院先の病院において白血病で余命いくばくもない少女と出会っている。少女との出会いと交流が彼女のその後の生き方の明確な指針となったようである。
 その後、絵本や自身の語り部としてライブ活動を通し、ガン医療、患者たちとの交流に命果つるまで関わり続けていった彼女の生き方は素晴らしいのひと言に尽きる。彼女のこの生き方にどれだけの人たちが励まされ、勇気をもらったことだろう。
 彼女は最終章で大きく羽ばたいた。
 彼女の、ゆっくり生きよう、のメッセージを引用させていただいて、僕の哀悼の意としたい。
 


天使は、幸せの光を放つ時、

微笑みをたたえ、

片目をつぶってウィンクをします。

そんな天使のウィンクのように、

さわやかな心あたたまるメッセージを

お贈りしたいと思います。
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