韓国ドラマ「30だけど17です」(連載109)
「30だけど17です」第13話(家は売らない)③
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
「えっ?」
ヒョンジョンは我に返った。腰かけていたベッドから立ち上がった。
「何でもないわ」
ウジンの握ったマグカップを握りながら横を見るとトイレで使うラバーカップが棚にかかっている。
「なぜ、あんな物が?」
「あれかい? いいものを見せるよ」
ウジンはラバーカップを握って事務仕事を行うテーブルの上に立った。振り返って言った。
「姉さんもおいで」
「何しようというの?」
ヒョンジョンも言われるままテーブルの上に立った。
「見てて」
ウジンは天窓にラバーカップの吸盤を窓に押し付けた。
「これを力いっぱい横に引くんだ」
窓が開いてヒョンジョンは歓声をあげる。
「この窓、開くんだ〜!」
ウジンは頷く。
ヒョンジョンは先に天窓から顔を出す。続いてウジンも顔を出す。
「いい眺めね」
「だろ? いいだろ?」
ウジンからこんな明るい言葉を聞かされたのは何年ぶりだろうか…?
ヒョンジョンはウジンが昔描いてくれた家族のスケッチ絵を思い出した。あの頃のウジンは今みたいに明るく楽しい話のできる弟だった。
「これをドイツに持っていって」
そう言って渡されたのも昨日の出来事のようだ。
あの頃のウジンが目の前で戻って来ている。何がこの子をあの頃の明るさに引き戻したのだろう…?
ヒョンジョンは不思議そうに弟の横顔を見つめた。
「この眺め、最高だろ?」
「うん」
ヒョンジョンは涙ぐみながら頷いた。
★★★
ジェニファーは街中で再会した女性とカフェラウンジに落ち着いていた。
「すっかり御変わりになって―」
懐かしさのこもった口調だった。
「まるで別の人のようです」
「…」
「家に高校生がいますね。もしや、ご結婚されたんですか?」
「いいえ」
ジェニファーは短く答えた。
「だけどこうして、また会えてうれしく思います」
ジェニファーは顔を上げた。
「意外です。こんな私になど…二度と会いたくないかと思ってたのに」
ジェニファーの言葉に相手の女性は黙ってしまった。
ウジンは姉と下におりてきた。
目をさましたチャンが慌てて階段を駆け下りてくる。
「母さん、待って」
ヒョンジョンは呆れて振り返る。
「ここにいるわよ。起きたのね」
チャンはウジンをちらと見た。
「誰と何してたの?」
「何してたって…ウジンとおしゃべりよ」
ウジンはチャンを見て頷いた。もう大丈夫、の表情で。
チャンは胸をなでおろす。
「そろそろ行くわ」
ヒョンジョンは時計を見て言った。
「空港まで送るよ」
「そう?」
ヒョンジョンは2階を振り返る。
「バッグを部屋に忘れちゃった。取ってくる」
そう言って2階に上がった。
部屋でバッグを取ってきたヒョンジョンはソリを見かけて声をかける。
「ゆっくり話せなかったわね」
「これをどうぞ」
ソリはヒョンジョンに歩み寄り絆創膏を差し出した。
ヒョンジョンは絆創膏を握った。
「靴ずれで痛そうだったので」
ソリの言葉にヒョンジョンは踵を見やって苦笑する。
「手当するつもりが忘れていたわ。ありがとう」
「…」
「あなたのおかげで2人とも元気のようだし、安心したわ」
「いえ、私の方がお世話になってます」
ソリは恐縮した。
ヒョンジョンは親しみをこめて言った。
「急ぐから話の続きは今度にしましょ」
ウジンは車を出して外で待っていた。
ヒョンジョンは車の前に立った。
「じゃあ、行くわ」
ドアを開けようとしたら、チャンも乗り込もうとする。
ヒョンジョンはチャンを見た。
「どうしたの?」
「見送りに行くよ。息子なんだから」
「見送るって」
ヒョンジョンは呆れた。
「”目標は優勝”なんでしょ?」
運転席のウジンは笑う。
「そんな時間があるなら練習に行きなさい。行くわ」
ヒョンジョンはそう言って、ソリにも笑顔を向けた。
会釈されてソリは深々と頭を下げる。
乗り込もうとするヒョンジョンにチャンは後ろから抱き着く。
「ごめんなさい、母さん」
ヒョンジョンはびっくりする。
「何? 急にどうしたの?」
ヒョンジョンはチャンの尻を叩いた。
「何か謝ることでもあるの?」
「そうじゃなくて、大好きだ、母さん」
「…」
「叔父さんのことは僕に任せて。心配いらないからさ」
ヒョンジョンは含み笑いを続ける。
「父さんにもよろしく」
「わかったわ」
ヒョンジョンは頷いてソリを見た。笑顔になった。
この人を庇っているのね―しばらく見ないうちにこの子も成長したものだわ…。
ヒョンジョンはソリに一礼して車に乗り込んだ。
ソリは申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらヒョンジョンを見送った。
空港に向かうヒョンジュンを見送り、庭先に戻ったソリはどうにも気が晴れない。チャンやウジンと一緒に彼女を騙した後ろめたさは胸の中でどんどん膨れ上がって来る。…
「ああ〜、久しぶりに会えてよかった」
後ろでチャンが言った。
ソリは歩みを止めた。
「驚いたでしょ?」
チャンの言葉にソリの肩はピクンと動いた。
ソリは突然身を返した。
外へ駆けだしていく。車を追いかけていく。
今度の話では遅い! 今、話さなきゃ。
ソリはウジンの車を追いかけた。必死においかけた。
「待って〜、待って下さ〜い」
ヒョンジョンはバックミラーを見て後ろからかけてくるソリに気付いた。
「ウジン、車を止めて」
止まった車の横でソリはゼイゼイ息をついた。ヒョンジョンたちは車から降りて来る。ウジンが訊ねた。
「どうかしたの?」
「すみません」ソリは息を切らした声で言った。「私は家政婦ではありません」
「30だけど17です」第13話(家は売らない)③
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
「えっ?」
ヒョンジョンは我に返った。腰かけていたベッドから立ち上がった。
「何でもないわ」
ウジンの握ったマグカップを握りながら横を見るとトイレで使うラバーカップが棚にかかっている。
「なぜ、あんな物が?」
「あれかい? いいものを見せるよ」
ウジンはラバーカップを握って事務仕事を行うテーブルの上に立った。振り返って言った。
「姉さんもおいで」
「何しようというの?」
ヒョンジョンも言われるままテーブルの上に立った。
「見てて」
ウジンは天窓にラバーカップの吸盤を窓に押し付けた。
「これを力いっぱい横に引くんだ」
窓が開いてヒョンジョンは歓声をあげる。
「この窓、開くんだ〜!」
ウジンは頷く。
ヒョンジョンは先に天窓から顔を出す。続いてウジンも顔を出す。
「いい眺めね」
「だろ? いいだろ?」
ウジンからこんな明るい言葉を聞かされたのは何年ぶりだろうか…?
ヒョンジョンはウジンが昔描いてくれた家族のスケッチ絵を思い出した。あの頃のウジンは今みたいに明るく楽しい話のできる弟だった。
「これをドイツに持っていって」
そう言って渡されたのも昨日の出来事のようだ。
あの頃のウジンが目の前で戻って来ている。何がこの子をあの頃の明るさに引き戻したのだろう…?
ヒョンジョンは不思議そうに弟の横顔を見つめた。
「この眺め、最高だろ?」
「うん」
ヒョンジョンは涙ぐみながら頷いた。
★★★
ジェニファーは街中で再会した女性とカフェラウンジに落ち着いていた。
「すっかり御変わりになって―」
懐かしさのこもった口調だった。
「まるで別の人のようです」
「…」
「家に高校生がいますね。もしや、ご結婚されたんですか?」
「いいえ」
ジェニファーは短く答えた。
「だけどこうして、また会えてうれしく思います」
ジェニファーは顔を上げた。
「意外です。こんな私になど…二度と会いたくないかと思ってたのに」
ジェニファーの言葉に相手の女性は黙ってしまった。
ウジンは姉と下におりてきた。
目をさましたチャンが慌てて階段を駆け下りてくる。
「母さん、待って」
ヒョンジョンは呆れて振り返る。
「ここにいるわよ。起きたのね」
チャンはウジンをちらと見た。
「誰と何してたの?」
「何してたって…ウジンとおしゃべりよ」
ウジンはチャンを見て頷いた。もう大丈夫、の表情で。
チャンは胸をなでおろす。
「そろそろ行くわ」
ヒョンジョンは時計を見て言った。
「空港まで送るよ」
「そう?」
ヒョンジョンは2階を振り返る。
「バッグを部屋に忘れちゃった。取ってくる」
そう言って2階に上がった。
部屋でバッグを取ってきたヒョンジョンはソリを見かけて声をかける。
「ゆっくり話せなかったわね」
「これをどうぞ」
ソリはヒョンジョンに歩み寄り絆創膏を差し出した。
ヒョンジョンは絆創膏を握った。
「靴ずれで痛そうだったので」
ソリの言葉にヒョンジョンは踵を見やって苦笑する。
「手当するつもりが忘れていたわ。ありがとう」
「…」
「あなたのおかげで2人とも元気のようだし、安心したわ」
「いえ、私の方がお世話になってます」
ソリは恐縮した。
ヒョンジョンは親しみをこめて言った。
「急ぐから話の続きは今度にしましょ」
ウジンは車を出して外で待っていた。
ヒョンジョンは車の前に立った。
「じゃあ、行くわ」
ドアを開けようとしたら、チャンも乗り込もうとする。
ヒョンジョンはチャンを見た。
「どうしたの?」
「見送りに行くよ。息子なんだから」
「見送るって」
ヒョンジョンは呆れた。
「”目標は優勝”なんでしょ?」
運転席のウジンは笑う。
「そんな時間があるなら練習に行きなさい。行くわ」
ヒョンジョンはそう言って、ソリにも笑顔を向けた。
会釈されてソリは深々と頭を下げる。
乗り込もうとするヒョンジョンにチャンは後ろから抱き着く。
「ごめんなさい、母さん」
ヒョンジョンはびっくりする。
「何? 急にどうしたの?」
ヒョンジョンはチャンの尻を叩いた。
「何か謝ることでもあるの?」
「そうじゃなくて、大好きだ、母さん」
「…」
「叔父さんのことは僕に任せて。心配いらないからさ」
ヒョンジョンは含み笑いを続ける。
「父さんにもよろしく」
「わかったわ」
ヒョンジョンは頷いてソリを見た。笑顔になった。
この人を庇っているのね―しばらく見ないうちにこの子も成長したものだわ…。
ヒョンジョンはソリに一礼して車に乗り込んだ。
ソリは申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらヒョンジョンを見送った。
空港に向かうヒョンジュンを見送り、庭先に戻ったソリはどうにも気が晴れない。チャンやウジンと一緒に彼女を騙した後ろめたさは胸の中でどんどん膨れ上がって来る。…
「ああ〜、久しぶりに会えてよかった」
後ろでチャンが言った。
ソリは歩みを止めた。
「驚いたでしょ?」
チャンの言葉にソリの肩はピクンと動いた。
ソリは突然身を返した。
外へ駆けだしていく。車を追いかけていく。
今度の話では遅い! 今、話さなきゃ。
ソリはウジンの車を追いかけた。必死においかけた。
「待って〜、待って下さ〜い」
ヒョンジョンはバックミラーを見て後ろからかけてくるソリに気付いた。
「ウジン、車を止めて」
止まった車の横でソリはゼイゼイ息をついた。ヒョンジョンたちは車から降りて来る。ウジンが訊ねた。
「どうかしたの?」
「すみません」ソリは息を切らした声で言った。「私は家政婦ではありません」
ソリを追いかけて走ってきたチャンは嘘がバレるかとうろたえた。
ヒョンジョンは黙ってソリを見ている。
ソリは続けた。
「実は居候をさせてもらっています」
「…」
「話せば長くなるんですけど、以前、あの家に住んでいて、家族とも連絡が取れず、いろいろあったりして…嘘をついて申し訳ありませんでした」
ソリはペコンと頭を下げた。
「なるべく早く家を出て行きます」
少し間をおいてヒョンジョンは言った。
「時間がないから1つ、いえ2つだけ質問するわ―鉢植えの置き場を教えたのはあなた?」
「あ、はい…」
「天窓の開け方も?」
ソリはウジンを見やった。
「はい、私が教えましたが…それが…」
ヒョンジョンは得心して頷いた。
「だったのね。わかった。それでいいわ」
「正直に言えないですみません」
ソリはもう一度ペコンと頭を下げた。
「私はウジンの姉であり、チャンの母親よ」
ヒョンジョンは2人を見やった。
「2人にはあなたを守りたい理由があったみたいね」
「…」
「また会いましょう」
ヒョンジョンはドアノブを握った。
チャンが歩みよる。
「話はそれだけ? それで終わり?」
「いいえ」
ヒョンジョンはいきなり息子の脚を蹴った。
「何がそれで終わりよ」
今度は拳固を腹に入れた。
「部活に集中しなさい」
そしてソリを見た。
「またね」
「あの〜」
何か言おうとするソリをウジンが制した。
「大丈夫だよ」
そう言ってウジンも車に乗り込んだ。車を発進させた。
車を見送ってチャンは言った。
「さすがだ、俺の母さんは―最初から正直に話しておけばよかった」
ソリはため息とともにうな垂れた。
ヒョンジョンは黙ってソリを見ている。
ソリは続けた。
「実は居候をさせてもらっています」
「…」
「話せば長くなるんですけど、以前、あの家に住んでいて、家族とも連絡が取れず、いろいろあったりして…嘘をついて申し訳ありませんでした」
ソリはペコンと頭を下げた。
「なるべく早く家を出て行きます」
少し間をおいてヒョンジョンは言った。
「時間がないから1つ、いえ2つだけ質問するわ―鉢植えの置き場を教えたのはあなた?」
「あ、はい…」
「天窓の開け方も?」
ソリはウジンを見やった。
「はい、私が教えましたが…それが…」
ヒョンジョンは得心して頷いた。
「だったのね。わかった。それでいいわ」
「正直に言えないですみません」
ソリはもう一度ペコンと頭を下げた。
「私はウジンの姉であり、チャンの母親よ」
ヒョンジョンは2人を見やった。
「2人にはあなたを守りたい理由があったみたいね」
「…」
「また会いましょう」
ヒョンジョンはドアノブを握った。
チャンが歩みよる。
「話はそれだけ? それで終わり?」
「いいえ」
ヒョンジョンはいきなり息子の脚を蹴った。
「何がそれで終わりよ」
今度は拳固を腹に入れた。
「部活に集中しなさい」
そしてソリを見た。
「またね」
「あの〜」
何か言おうとするソリをウジンが制した。
「大丈夫だよ」
そう言ってウジンも車に乗り込んだ。車を発進させた。
車を見送ってチャンは言った。
「さすがだ、俺の母さんは―最初から正直に話しておけばよかった」
ソリはため息とともにうな垂れた。
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