雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第11話(8)




 アンナの手を握ってチョルスは詫びた。
「お前をだまして…ほんとに悪かった」
 アンナは照れくさそうに応じた。
「厄介になるから、それに免じて許してあげる」
 チョルスは嬉しそうに笑った。
「捜してくれて…ありがとう」
 アンナはチョルスの手を握ったまま立ち上がった。
 チョルスはアンナの手を離した。
「行こう」
 バス停の待合所を先に出た。
 歩きながらチョルスは言った。
「サンシラーッ、お前は本当に金持ちだったぞ」
 アンナはチョルスと肩を並べた。
「でも、今は一文無しよ」
「どうして? 財産は逃げないぞ。記憶が戻れば自然とお金も戻るさ」
「そうかしら? そんなにお金持ちだったの?」
「そうさ。お前の車は…」チョルスは前方を指差した。「あれよりずっと高級車だった」
 アンナの機嫌は戻ってきた。
「そうね。私は高級車に乗ってたはずよ。あの車は趣味じゃないわ」
「それにお前は」
 チョルスはアンナの乗せ方もわかってきている。
「すごく洗練されてた」
「そうよね。この私がダサかったはずないわ」
「俺も心苦しかったよ。今のその格好だってぜんぜんダサくない。何せ、気品さえ漂ってるからな」
 アンナは口笛でも出そうな顔になっている。
「まあね。自分でいうのも何だけど確かにそう思うわ」
「サンシラーッ」
 アンナを見てチョルスは言った。
「記憶が戻っても俺のこと忘れるなよ」
 アンナは顎を突き出すようにした。
「あんたの心がけ次第よ」笑顔になった。「チャン・チョルス。私は大金持ちだし、お酒をご馳走するわ」
「えっ?」
「行きましょう」
「サ、サンシラーッ」
 チョルスはあわててアンナを制した。
「昨日、お前が持ち出した机の中の金・・・それで酒を飲む気なら返してくれないか? 使うところがあるんだよ」
 アンナは舌を鳴らした。
「記憶が戻ったら倍にして返すわ。だから付けといて。早く行きましょ」
 先に立って歩き出したアンナを見ながらチョルスは舌打ちした。
「まいった。先に返してもらうんだった! サンシラーッ」
 アンナを追ってチョルスは駆け出した。

 二人は居酒屋に落ち着いた。



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