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アンナの手を握ってチョルスは詫びた。
「お前をだまして…ほんとに悪かった」
アンナは照れくさそうに応じた。
「厄介になるから、それに免じて許してあげる」
チョルスは嬉しそうに笑った。
「捜してくれて…ありがとう」
アンナはチョルスの手を握ったまま立ち上がった。
チョルスはアンナの手を離した。
「行こう」
バス停の待合所を先に出た。
歩きながらチョルスは言った。
「サンシラーッ、お前は本当に金持ちだったぞ」
アンナはチョルスと肩を並べた。
「でも、今は一文無しよ」
「どうして? 財産は逃げないぞ。記憶が戻れば自然とお金も戻るさ」
「そうかしら? そんなにお金持ちだったの?」
「そうさ。お前の車は…」チョルスは前方を指差した。「あれよりずっと高級車だった」
アンナの機嫌は戻ってきた。
「そうね。私は高級車に乗ってたはずよ。あの車は趣味じゃないわ」
「それにお前は」
チョルスはアンナの乗せ方もわかってきている。
「すごく洗練されてた」
「そうよね。この私がダサかったはずないわ」
「俺も心苦しかったよ。今のその格好だってぜんぜんダサくない。何せ、気品さえ漂ってるからな」
アンナは口笛でも出そうな顔になっている。
「まあね。自分でいうのも何だけど確かにそう思うわ」
「サンシラーッ」
アンナを見てチョルスは言った。
「記憶が戻っても俺のこと忘れるなよ」
アンナは顎を突き出すようにした。
「あんたの心がけ次第よ」笑顔になった。「チャン・チョルス。私は大金持ちだし、お酒をご馳走するわ」
「えっ?」
「行きましょう」
「サ、サンシラーッ」
チョルスはあわててアンナを制した。
「昨日、お前が持ち出した机の中の金・・・それで酒を飲む気なら返してくれないか? 使うところがあるんだよ」
アンナは舌を鳴らした。
「記憶が戻ったら倍にして返すわ。だから付けといて。早く行きましょ」
先に立って歩き出したアンナを見ながらチョルスは舌打ちした。
「まいった。先に返してもらうんだった! サンシラーッ」
アンナを追ってチョルスは駆け出した。
二人は居酒屋に落ち着いた。
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