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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(101)





韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(101)


 クムスンはウンジュの部屋を出てフロアに戻った。すると携帯が鳴りだした。
 スンジャからだった。
「急用で何度も電話したのに何してたの? ねえ、大変なことになったわ。おばあちゃんにみんなバレたわ」
「みんなですか? どうしよう、叔母さん。でも、どうして知られちゃったの? わかったわ。今すぐ行きます」
 クムスンは急いで店を出た。
 その後、ウンジュは明かりのついた店に顔を出した。
 しかし、ウンジュの姿はない。
「何なのこれ? 声もかけずに帰っちゃったの?」

 ミジャはヨンオクを見舞っていた。
 ボケとツッコミ――まるで話の合わない二人だが、ジェヒとウンジュが縁をつないでいた。
「もっと早く話してくれればいいのに」
「実は私もまだ信じられないんです。受ける資格があるのかと」
「まあ、ほんとにつつましい方だわ。ジェヒにも言ったけど――ヨンオクさんが徳を積んだから福が来たと。再婚して前妻の子を育てるのにも苦労したでしょ」
「院長、違いますよ。知らないからですわ」
 ミジャは笑った。
「それくらい私にもわかるわ。聞かなくても当然のことだもの。これでも勘はいい方なの。鼻が利くんです」
 ヨンオクはミジャの話を聞き終えるとすぐ訊ねた。
「院長――美容室で働く娘にナ・クムスンという名前の・・・」
「クムスン? その娘がどうかしました?」
「その娘の出身地と身の上をご存知ですか?」 
 ミジャは怪訝そうにする。
 ヨンオクは目を落とした。
「少し気になって・・・」
「さあ・・・出身地は履歴書を見ないと分からないけど、身の上についても・・・さほどよくはなさそうよ。婚家で暮らしてるの。実家が裕福なら夫もなしに婚家で暮らさないわ」
「そうですか・・・」
「なぜ? どうしても必要なら、明日、美容室で調べますけど」
「でしたら、面倒でしょうがお願いします」
「面倒だなんて・・・そうじゃないけど――理由を聞いてもいいですか?」 
 ヨンオクは困ってしまう。
「わかったわ。明日、調べますね」

 テワンはクマを居酒屋に連れていった。
 クマは飲めない酒をがぶ飲みする。
 テワンは呆れた。
「まったく・・・お前らは酒の飲み方を知らない。弟嫁もいつも一気飲みだ」
 クマは下からテワンを睨みあげた。
「最低なヤツ」
「”ヤツ”? ”ヤツ”でも何でもいいから話くらいしろよ。飲むだけじゃ悪酔いするぞ」
「なぜ、私とキスしたの? あの日は可愛く見えて」
 クマは吐いた息に恨みをこめた。
「それじゃ――なぜ抱きしめたの?」
「お前が泣くからさ」
 クマは立ち上がった。腕を伸ばし、テワンのホッペ目がけてビンタを飛ばした。テワンはそれを間一髪でかわす。
「やめろ」
 テワンは顔をしかめた。
「店中だから外で殴れよ。殴らせるから」
「・・・」
「いま出るか?」
「おい、テワン」クマは叫んだ。
 テワンは辺りを気にし、頭に手をやる。
 クマは辺りにかまわず続けた。
「あなたは簡単にキスしたり抱擁するのかもしれないけど、私は――私は・・・」
「クマ、やめろ・・・だいぶ酔ってるな」
「私は――あなたが好きだったの。初キスがあなたでよかったし、抱きしめてくれてうれしかった」
 クマの話にテワンの動揺は消えた。真剣な顔でクマを見た。
 テワンは腰をおろした。
「もう、いいわ」
 クマは酒ビンを握った。
「あなたが違うならいいの」
 自分のグラスに注いでテワンを見た。目には涙が溢れ出している。
「先に帰って。代金は私が払うから。帰ってよ」
 そう言って酒をぐいとあおった。ため息をついてまた酒を注ぐ。鼻をグスグス言わせながら泣くのをこらえている。
 テワンはそんなクマを見るのが辛くなった。
 また鼻をグスッと言わせてクマは頬杖をつこうとする。
 その手をテワンはつかんだ。クマは顔を上げた。テワンはその頬に手を伸ばす。
「やられたよ」
「・・・」
 テワンは笑った。
「お前にひっかかってしまった」
 それを聞いてクマは嬉しさよりむしろ戸惑いの表情になる。諦めるつもりはなかったけど、ずっと先のことと思っていた顔。

 ピルトが帰ってきた。ジョンシムを見て訊ねた。
「やけに静かだな」
「・・・」
「子供たちはまだか?」
「あなたに従えば運が向くの? 運どころじゃないわ」
「・・・」

 ジョムスンはスンジャの帰りやクムスンが立ち寄るのを待っている。
遅いので何度も柱時計を見た。
 家の前まで来てスンジャは中に入ることが出来ないでいる。一人で入っていく気力がないのだ。
「まだなのかしら・・・」
 そこにジョムスンが出てきた。スンジャは逃げるもならず思わず背を向けた。
 ジョムスンは叫んだ。
「入りなさい」
「・・・」
「早く入って」
「はい、お義母さん」
 スンジャは大きな身体をすぼめた。
 ジョムスンはスンジャの手を握って中に入ってきた。
「上がりなさい」
 ジョムスンは水を入れたグラスと何かの袋をちゃぶ台に並べた。
「これ、何か分かる? 劇薬よ」
「・・・」
「今から私の聞くことに正直に話しなさい」
「・・・」
「少しでも嘘をついたら――この場で私とあなたは薬を飲んで死ぬの。分かったわね」 
「はい」
「示談金を払うからと手術を受けるように頼まれたの?」
「違います。母親が生きてるとだけ言うようにと・・・」
「それであなたの口でクムスンに話したの? ”母親は生きてる””死にそうだ”と?」
「・・・」
 ちゃぶ台をひっくり返しそうにする。
「答えなさい」
「・・・」
 もう一度ちゃぶ台を揺らす。水はグラスごと飛び散った。
「答えなさい」
「違います。ほんとに違います。私は最後までダメだと止めたのにクムスンがすると言ったんです」
「・・・!」
「”手術はダメだ””おばあちゃんのためにもダメだ”と」
「あの子が手術をすると?」
「はい。クムスンが”する”と・・・」
 ジョムスンは動揺した。身体から力の抜けたような表情になった。
「私は最後まで止めたんです。”叔父さんのことは心配いらない””罪を犯した人が悪いから絶対ダメだ”と止めたんです。でも”見殺しには出来ない”とあの子が決めたんです」
 ジョムスンはショックに見舞われ一点を見つめている。
 スンジャは薬の袋を握った。すばやく自分の後ろに置いた。

 この時、入り口のドアが鳴った。沈痛な表情でクムスンが入ってきた。
 二人の目が合う。睨みつけるジョムスンを気にしながらクムスンは部屋に上がる。そっと腰をおろす。
「おばあちゃん」
 クムスンから声が発せられた瞬間、ジョムスンはクムスンの身体を両手で押した。クムスンは後ろにのけぞった。うつむいたまま黙っている。
「バカなことを」
「・・・」
「情けない子ね」
「おばあちゃん・・・ごめんなさい」
「私にあなたのような孫はいない」
「・・・」
「何だって? 手術をすると? 私に断りもなく手術だと?」
「ごめんなさい、おばあちゃん」
「おばあちゃん、なんて呼ばないで」
「おばあちゃん、私が間違ってた。ごめんなさい。ごめんなさい、おばあちゃん」
「・・・」
「おばあちゃん――だけど、見殺しにはできないわ。知ってるのに――素知らぬ顔でいられない」 
「・・・」
「おばあちゃん・・・他の意味はないの。ただそれだけよ」
 ジョムスンは黙ってクムスンをにらみつけている。
「おばあちゃん」
 ジョムスンはいきなり立ち上がった。
「あの女はどこ? 病院? どこなのよ!」
「昼間、病院にいると聞きました」とスンジャ。
 ジョムスンは出かけようとする。
 クムスンが慌てて止める。
「ダメよ。本当にダメよ」
「何が」
 クムスンは手をつかんだまま言う。
「絶対にダメなの。身体が弱くて、ショックを受けたらどうなるか・・・」
「・・・」
「やめて、おばあちゃん」
 しかし、ジョムスンはクムスンの手を振りほどいて行こうとする。
 クムスンはジョムスンを離さない。
「絶対にダメよ。行かないで」
 振りほどこうとするジョムスンにクムスンは必死で説得する。
「あの人は何も知らないの」
 ジョムスンはクムスンを突き飛ばす。
 それでもクムスンはジョムスンの足元にしがみつく。泣き出しながら訴える。
「ダメよ、行かないで。行ったらママが死んじゃうわ」
「”ママ”?」
 クムスンはジョムスンの手を握った。
「おばあちゃん・・・」
 ジョムスンはその手をふりほどいた。土間におり、外へ飛び出していった。
 スンジャはあわててジョムスンの後を追おうとする。
 クムスンは座り込んだまま動けない。
「クムスン、大丈夫? ”ママ”だなんて言って、おばあちゃんは血圧が高いのよ」
 スンジャも外に飛び出していった。
「お義母さん、待ってください」
 外ではスンジャがジョムスンをつかまえて説得を始めている。
「いけません。血圧も高いんですから」
 ジョムスンはスンジャの説得を受け付けない。
 我に返ってクムスンも外に飛び出してきた。ジョムスンの前に立った。
「私が間違ってた。私が悪いの。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
 クムスンは手を合わせた。
「このとおりよ」
「・・・」
「本当にごめんなさい。許して。私が悪かったの。正気じゃなかった。おばあちゃん・・・ほんとは分からないの。分からないのよ。一度も思ったことないのにあんなことを・・・」
 クムスンを睨みつけ、話を聞いてるうちにジョムスンの身体はよろけた。後ろに倒れそうになった。
「お義母さん!」
 スンジャがあわててジョムスンの身体を支えようとする。しかし、ジョムスンは膝から地面に崩れ落ちた。


 ジョンシムは耳にした話をすべてピルトに話した。
「誰が言ったんだ」
「クムスンの叔母さんよ。手術をするなと大金を準備してあげたのに、相談もせず、そんな決定をするなんて」
「本当なのか?」
「手術日も決ってるらしいわ」
「そうか」
「ひと言もなしにありえないでしょ」
「まさか・・・後で言うつもりだったのさ」
「肩を持つことじゃないわ。フィソンもいるの。自分だけの身体じゃないのよ。まったく、手術するなとお金まで作ったのに」
「・・・」
「黙ってないで何とかいったらどう?」
「よもや、と心配はしていたさ。どうであれ、産みの親だろ」
「"親”だなんて何もしてないのよ」
「知らなければまだしも――辛かっただろうさ」
「フィソンを思うならこんな決定は許せないわ。健康である以外に子供には何もしてあげられない」
「・・・」
「どうであれ、事前に相談もなしに1人で勝手に決めて。今何時? 許さないんだから」
 
 シワンはソンランに呼ばれた店にやってきた。
「注文は少し後で」
 ソンランはウエイターに言った。
「私の負けよ」ソンランは切り出した。「私が悪かったわ」
「・・・」
「怒らせて悪かったわ。1人暮らしが長くて自分勝手なのはよく分かってるわ。犠牲になるのも嫌うし――結婚に適合する遺伝子も劣ってる。でもそれより問題なのは――私は被害意識が強いの」
「・・・」
「再び失敗するのを恐れる強迫観念ね。私の失敗は結婚で人生じゃない。決心はしても被害意識を失くせなかった。潜んでいた被害意識が強く防護本能に働いた」
「・・・」
「2度と男に人生をかけたり、結婚に比重を置きたくなかった。だから、当初から結婚に重点を置く気はなかったわ。あなたとも適当な距離を維持したかったの。納得できなくても――すべてを賭けること――結婚に人生を賭けるのは私には怖いわ」
「・・・」
「だから傷ついた人間はダメよね。疑ってばかりいる。世の中だけでなく――自分自身を否定するの」 
「・・・」
「それが、あなたに対する懐疑と感じられたでしょ。悪かったわ」
 やや間があった。シワンは訊ねた。
「懺悔のつもりか?」
「そうね」
「それなら――今後は変わるのか?」
「おそらくね。懺悔は”2度としません”――ってことでしょ?」
「・・・」
「絶対じゃないけど・・・」
「そうだな・・・改心するのは難しいことだ。正直に話してくれてありがとう。問題に直視できれば解決方法はあるさ。安心したよ」
「ありがとう。不十分な私にずいぶん我慢してくれた」
 シワンは苦笑した。
「仕方ないだろ。俺の妻なんだ」
「あなたが偉大だからそばにいたら――いつか私も大きくなれる気がする」
「やけに褒めるんだな」
「私は太っ腹なのよ」
「褒めちぎっておいて、あとで噛み付くんだろ?」
「ハ・ソンランだからね」
 シワンは笑って言った。
「久しぶりに部屋でも取るか?」
 するとソンランも微笑した。
 すでに部屋はキープされていたのだ。
「505号室よ」

 ジョムスンはクムスンとスンジャの手で部屋に寝かされた。
 スンジャは言った。
「クムスン、今日はもう帰りなさい。遅くなったわ」
「・・・」
「義父母も待ってるわ」
「・・・」
「嫁にあんな大金を出せる人たちはいないわ。行きなさい、早く。みんな待ってるわよ」
 居間にクムスンを連れ出してスンジャは言った。
「手術は考え直した方がいいわ。おばあちゃんを傷つけてまではできないでしょ?」
 クムスンはそれには答えない。
「義父母はどうするつもり?」
 クムスンは立ち上がった。
「私のせいで手術のことを知ったの」
「知ったの?」
「そうよ。事前に口止めしてれば私も言わなかったのに、婚家のことは全然分からなくて・・・」
「大丈夫です。近いうちみんなに話すつもりでした。じゃあ、帰ります」

 クムスンが帰った後、スンジャは部屋に寝かしつけたジョムスンの様子を見に入った。ジョムスンは上体を起こし、布団の上に座り込んでいた。
 スンジャを見るとジョムスンは訊ねた。
「婚家がお金を出したってどういうことだい?」
 さっきクムスンと話したのを聞いていたのだ。
「お義母さんが起きたら、放そうと思っていました。チャン先生から借りたお金が2000万だったので・・・この話は気を落ち着けてから」
「・・・」
「まず、この薬を飲んだら一部始終を話します」
「・・・」
「薬を飲んで、私を怒るなり、彼女のところになり行ってください」
 薬を差し出そうとするスンジャの手をジョムスンは払いのける。 
「薬でごまかさないで、ちゃんと話しなさい」


 ヨンオクはクムスンのことが気になっていた。
「どう考えても変だわ。なぜ、私を避けたの?」
 あの人だけじゃなく、叔母さんも一緒に地方の大学に通ってると言ってた・・・なぜ、こんなに不安になるんだろう?
「違うわ。名前と年齢が同じでも違うはずよ」 
 ヨンオクは立ち上がった。携帯を手にし、オ・ミジャ院長に電話を入れた。
「院長。ウンジュの母です。遅くにすみません。他でもなく、先ほどお願いした件で・・・院長の――美容室の従業員のナ・クムスンの出身地を、――お願いした件で必ずお願いできれば、と。可能なら明日1番にお願いします」

 クムスンはジョムスンの前であの人のことを”ママ”と呼んだ自分のことを思い起こしていた。
 そんな自分をおばあちゃんは突き飛ばしてきた。
 義父母もこの事を知ったという。何と説明すればいいのか、
クムスンは気が重かった。家に向かう足取りも重かった。
 この時、ジェヒから電話がかかってきた。
「俺だよ、白菜」
「こんばんは」
「どこ?」
「家に帰るところ。ええ。遅くなったの」
「元気がないようだけど、夕食は食べた?」
「まだなんです。帰って食べるわ」
 そこに後ろから声がかかった。振り返るとシワンとソンランが一緒に歩いてくる。
 クムスンは前を向き直った。
「切りますね。家に着いたの」
「わかった。どこにいるかと思ったから。早く入って夕食を取らないと」
 クムスンとの電話での会話は終わった。急に気分がよくなった。彼女から元気をもらってジェヒは幸せを感じた。
 浮き浮きした気分に浸っているとミジャが部屋に入ってくる。
「準備ができたわ。来なさい」
「はい。でも早朝に出るから長い時間は無理だ」
「分かったわ」
 肩を叩いてミジャは出ていった。


「一緒だったんですか?」 
「罪滅ぼしに食事をしたの」とソンラン。「遅かったのね?」
「祖母の家に寄ったので」
「何だか元気がないね」
 クムスンは頷いた。
「お義兄さま――どうしようかな」
 深刻そうなクムスンにシワンたちは顔を見合わせた。
「私、問題を起こしちゃったんです」



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