韓国ドラマ「30だけど17です」(連載76)
「30だけど17です」第9話(戸惑いと心地よさ)②
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
「いつのだ…?」
チャンとの電話を切った後、ウジンはデジカメに残っていた写真に見入った。
ようやく思い出した。
「ああ、あの時か…」
偶然に撮った一枚だった。
削除しようとして思いとどまる。神経科医の言葉を思い出したからだった。
「13年前の少女と同一視しないことが重要だ」
ウジンは思い出した。
無意識に彼女の名を呼んだあの日のことを…。
あれを”同一視”と言ってよいのか?
「いつからですか?」
彼女は訊ねた。
「一度も呼ばないから、てっきり知らないのか、と…」
なぜ”ウ・ソリ”と叫んだのか自分でもよくわからない。彼女を特に知りたいわけでもなかった自分がいつその名を認識したというのか。
13年前の少女は”ノ・スミ”だった。
まるで別人なのに、彼女が現実の”ウ・ソリ”に重なって来たのがウジンには解せなかった。
神経科医は言った。
「両者が別人だと認識すれば苦痛から抜け出せる」
ウジンは”ウ・ソリ”の写真に繁々と見入った。
★★★
チャンは外に出て月を眺めた。
「月がもうあんなに高いぞ」
急いで携帯を取り出す。
カン・ヒスに電話を入れた。
「ヒスさん、いけないよ。悪徳社長なの? 新人を遅くまで働かせないで」
「何言ってるの。とんでもないわ」
ヒスは呆れて返す。
「牛肉とお酒で今日は歓迎会をやってあげたの」
「何だって!」チャンは長椅子から飛び上がった。「おばさんに酒を飲ませたの?」
泥酔したソリは楽器の修理店にやってきていた。
店のガラスに顔を押し付け、中を覗き込んでいた。彼女が修理で出したバイオリンはていねいに飾られていた。
ソリは虚ろな目でバイオリンに語りかけた。
「待っててね、すぐに取りにくるから―きちんと直してもらうのよ。私が…お金を稼いで必ず迎えに来るわ」
ガラスに押し付けた手をトントントンと叩いた。
行こうとしてよろよろと床に崩れ落ちる。身体が思うように動かない。
「30だけど17です」第9話(戸惑いと心地よさ)②
☆主なキャスト&登場人物
○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)
★★★
「いつのだ…?」
チャンとの電話を切った後、ウジンはデジカメに残っていた写真に見入った。
ようやく思い出した。
「ああ、あの時か…」
偶然に撮った一枚だった。
削除しようとして思いとどまる。神経科医の言葉を思い出したからだった。
「13年前の少女と同一視しないことが重要だ」
ウジンは思い出した。
無意識に彼女の名を呼んだあの日のことを…。
あれを”同一視”と言ってよいのか?
「いつからですか?」
彼女は訊ねた。
「一度も呼ばないから、てっきり知らないのか、と…」
なぜ”ウ・ソリ”と叫んだのか自分でもよくわからない。彼女を特に知りたいわけでもなかった自分がいつその名を認識したというのか。
13年前の少女は”ノ・スミ”だった。
まるで別人なのに、彼女が現実の”ウ・ソリ”に重なって来たのがウジンには解せなかった。
神経科医は言った。
「両者が別人だと認識すれば苦痛から抜け出せる」
ウジンは”ウ・ソリ”の写真に繁々と見入った。
★★★
チャンは外に出て月を眺めた。
「月がもうあんなに高いぞ」
急いで携帯を取り出す。
カン・ヒスに電話を入れた。
「ヒスさん、いけないよ。悪徳社長なの? 新人を遅くまで働かせないで」
「何言ってるの。とんでもないわ」
ヒスは呆れて返す。
「牛肉とお酒で今日は歓迎会をやってあげたの」
「何だって!」チャンは長椅子から飛び上がった。「おばさんに酒を飲ませたの?」
泥酔したソリは楽器の修理店にやってきていた。
店のガラスに顔を押し付け、中を覗き込んでいた。彼女が修理で出したバイオリンはていねいに飾られていた。
ソリは虚ろな目でバイオリンに語りかけた。
「待っててね、すぐに取りにくるから―きちんと直してもらうのよ。私が…お金を稼いで必ず迎えに来るわ」
ガラスに押し付けた手をトントントンと叩いた。
行こうとしてよろよろと床に崩れ落ちる。身体が思うように動かない。
「脚がしびれた!」
未成年がお酒なんか飲むから…ソリははっと思い直す。
「違う―大丈夫、私は30歳だもの」
ソリはまた足を引きずって歩き出す。
その時、背後で男の人の歌声がした。
あなただけは知っていてね
私は17歳なの
ソリは向き直った。男に呼び掛けた。
「私も17歳です」
捜しまわってきたチャンはソリの声に足を止めた。
「おばさんだ」
「誰が17歳だって?」
ソリは男に絡んでいた。
胸を叩いて答えた。
「私は〜、30歳よ」
言い終えると背を返した。さっぱりした足取りで歩きだした。
男はあっけらかんとソリを見送っている。
チャンは頭に手をやった。
「いま声かけたら、恥ずかしがるよな、きっと」
チャンはソリのふらふらした足取りを見守りながら後ろについて歩いた。
ソリは途中で足を止めた。昼間は子供たちの憩い場で、雨の夜にひとりで一夜を過ごした場所だった。
ソリは設置された大きなパイプの中に入った。
見ていてソリの行動は不思議だった。
チャンはソリが通り抜けたパイプの入り口に立った。しゃがんで中を覗いた。
「どうしてこんなことを?」
そう思いつつ自分もパイプを通り抜けた。そしてソリの後に続いた。
ふらふら歩いて倒れそうになりながらもソリは持ち直して家に向かう。
すんでのところで助けた場所もあるが、ソリは無事家に帰り着いた。門の暗証番号を押して中に入っていった。
直接的な助けはしないですんだ。
ソリの帰宅を無事見守った後、チャンは呟いた。
「ふらつきながらも帰り着いた。偉いよ」
チャンも家に入った。
「叔父さんとおばさんのせいで老け込みそうだ」
ヒヨコがピヨピヨと鳴いた。
「また、そんな目で見てる―違うってば」
一番遅く家に帰り着いたのはウジンだった。ドアノブを握ったウジンは手を放し、庭先の長椅子でしばし思案に耽った。
「遅かったですね」
横から声がかかり、ぎょっとなる。ジェニファーだった。
「驚かせたならお詫びします」
ウジンは小さく頷く。
「庭に唐辛子を干しています。そこで重要なのは―天日に干した唐辛子が夜露に濡れないことです」
「…」
「美味しく干すには…」
「あの…聞いてませんけど」
「確かに聞かれてませんね」
「はい」
「夜食を召し上がるなら…」
「必要ありません」
「確かに夜食は召し上がりませんね」
「はい」
2人はしばし黙っていた。
ウジンが言った。
「まだ何か?」
「月明かりがきれいなので、月光浴をしようかと」
「咲良が開いたかと思ったら時が経つのは早いですね」
「そうですか…僕は遅く感じます」
ジェニファーはウジンを見た。
「時が進むのがもっと早ければいいのに…目が覚めたら一か月後になってるとか」
「引き止めたくても急いで進めたくとも時は一定に過ぎます。死んでしまいたいくらいつらく苦しい時間も―いつかは通り過ぎます」
ウジンはジェニファーを見上げた。
「永遠に消えないと思えた辛く苦しい記憶すら―思い出さなくなる日が来ます」
ウジンの眼差しは真剣味も帯びた。
「時間が過ぎる前から目を背けてしまえば―大事なものまでその時間と共に流されてしまいます。後悔しても遅いのです」
身を起しかけたウジンにジェニファーは言った。
「月光浴はここまで。これで失礼します」
ジェニファーはウジンに深々と挨拶して背をを向けた。
ウジンはしばしそこに佇んだままだった。
未成年がお酒なんか飲むから…ソリははっと思い直す。
「違う―大丈夫、私は30歳だもの」
ソリはまた足を引きずって歩き出す。
その時、背後で男の人の歌声がした。
あなただけは知っていてね
私は17歳なの
ソリは向き直った。男に呼び掛けた。
「私も17歳です」
捜しまわってきたチャンはソリの声に足を止めた。
「おばさんだ」
「誰が17歳だって?」
ソリは男に絡んでいた。
胸を叩いて答えた。
「私は〜、30歳よ」
言い終えると背を返した。さっぱりした足取りで歩きだした。
男はあっけらかんとソリを見送っている。
チャンは頭に手をやった。
「いま声かけたら、恥ずかしがるよな、きっと」
チャンはソリのふらふらした足取りを見守りながら後ろについて歩いた。
ソリは途中で足を止めた。昼間は子供たちの憩い場で、雨の夜にひとりで一夜を過ごした場所だった。
ソリは設置された大きなパイプの中に入った。
見ていてソリの行動は不思議だった。
チャンはソリが通り抜けたパイプの入り口に立った。しゃがんで中を覗いた。
「どうしてこんなことを?」
そう思いつつ自分もパイプを通り抜けた。そしてソリの後に続いた。
ふらふら歩いて倒れそうになりながらもソリは持ち直して家に向かう。
すんでのところで助けた場所もあるが、ソリは無事家に帰り着いた。門の暗証番号を押して中に入っていった。
直接的な助けはしないですんだ。
ソリの帰宅を無事見守った後、チャンは呟いた。
「ふらつきながらも帰り着いた。偉いよ」
チャンも家に入った。
「叔父さんとおばさんのせいで老け込みそうだ」
ヒヨコがピヨピヨと鳴いた。
「また、そんな目で見てる―違うってば」
一番遅く家に帰り着いたのはウジンだった。ドアノブを握ったウジンは手を放し、庭先の長椅子でしばし思案に耽った。
「遅かったですね」
横から声がかかり、ぎょっとなる。ジェニファーだった。
「驚かせたならお詫びします」
ウジンは小さく頷く。
「庭に唐辛子を干しています。そこで重要なのは―天日に干した唐辛子が夜露に濡れないことです」
「…」
「美味しく干すには…」
「あの…聞いてませんけど」
「確かに聞かれてませんね」
「はい」
「夜食を召し上がるなら…」
「必要ありません」
「確かに夜食は召し上がりませんね」
「はい」
2人はしばし黙っていた。
ウジンが言った。
「まだ何か?」
「月明かりがきれいなので、月光浴をしようかと」
「咲良が開いたかと思ったら時が経つのは早いですね」
「そうですか…僕は遅く感じます」
ジェニファーはウジンを見た。
「時が進むのがもっと早ければいいのに…目が覚めたら一か月後になってるとか」
「引き止めたくても急いで進めたくとも時は一定に過ぎます。死んでしまいたいくらいつらく苦しい時間も―いつかは通り過ぎます」
ウジンはジェニファーを見上げた。
「永遠に消えないと思えた辛く苦しい記憶すら―思い出さなくなる日が来ます」
ウジンの眼差しは真剣味も帯びた。
「時間が過ぎる前から目を背けてしまえば―大事なものまでその時間と共に流されてしまいます。後悔しても遅いのです」
身を起しかけたウジンにジェニファーは言った。
「月光浴はここまで。これで失礼します」
ジェニファーはウジンに深々と挨拶して背をを向けた。
ウジンはしばしそこに佇んだままだった。
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