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韓国ドラマ「病院船」から(連載79)
「病院船」第7話➡あるひとつの望み⑫
★★★
奥さんがウンジェに渡したのは親子三人の写真を収めた額縁だった。
「先生のおかげです。感謝してます」
「ありがとう」とウンジェ。
「何してる。早く食堂にご案内しろ」と船長。
スタッフが2人を食堂へ案内する。
「話はもう一つあるぞ」船長。「チュノ、中へお連れしろ」
甲板長のチュノは出入り口に立ち、外で待機する人に声をかける。
「どうぞ中へ」
入ってきたのは若い女性だった。
それまで柔和だったヒョンの表情は険しくなる。
「え~、こちらの方は、ニューヨークで絵を学んだ画家の先生だ。我が病院船をテーマにした―個展を企画してるそうだ」
船長は画家の先生を促した。
「先生、挨拶をどうぞ」
紹介を受けて彼女はペコっと頭を下げる。
「初めまして、チェ・ヨンウンです」
男たちから若い画家に対し大きな拍手が起こった。
船長が追加説明をする。
「なんと次の個展で得た利益は、全額、島の患者の治療費に寄付してくださるそうだ。みんな拍手しろ」
大きな拍手が起こる中、チョ・ヨンウンはヒョンの前に進み出た。
「お久しぶり、こんなところで会えたわね、クァク先生」
チョ・ヨンウンは右手を差し出す。
ヒョンはためらいつつ「そうだね」と答え、右手を差し出す。
その手をチョ・ヨンウンはしっかり握った。
ウンジェは握手を見て平然とした顔で目をそらした。
★★★
ジュニョンがヒョンを追って診療室へやってきた
「美人だな。彼女とはどういう関係?」
「知ってどうするんだ」
ヒョンは機嫌が悪い。
「暇ならカルテでも何でも読んでろ」
「怒ることないだろ」
ジュニョンも気分を壊して出ていった。
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アリムも画家の女の登場を気にしていた。
「先輩」
「何よ」とゴウンの声。
「どんな関係ですかね」
「なぜ知りたがるの」
「もしかして私のライバルかしら」
「ライバル?」
「話さなかったですか? 私、クァク先生が好きなんです」
「えっ! 何で?」
「セクシーだから。バスで患者を救う姿を見て―私が探し求めていた理想の医者だと…」
「アリムさんも懲りないわね」
「何がです…」
「つい先日、浮気されて泣いてたのに…もう次の恋?」
「失恋には新たな恋が一番なんです。それが特効薬なんです」
「特効薬? オエーッ」
そう言ってゴウンは逃げてしまう。
「ひどい。私は本気なのに…」
ゴウンとアリムのやりとりにウンジェは耳を傾けていた。彼女もあれこれ気になり、仕事が手に付かないでいたのだった。
しかし、医者の業務は待ってくれない。恋の煩わしさだけにかかずらっていられない。
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この日、ウンジェは初見の患者に出遭った。
「ちょっと見せてください」
患者のようにしてやってきたが、診てもらうのを拒む患者だ。
「治療するためです」
ウンジェの説明に患者は困った顔をするばかり。
しかし、ウンジェも思い込みは強い。診療室まで入ってきて治療ベッドにまで座ったからには患者は当人だと思い込む。
ゴウンは訊ねた。
「なぜ、病院船に来たんですか?」
しかし、当人は悲痛な顔で黙っている。
「韓国語は?」
英語でも訊ねる。
「ドウ・ユー・スピーク・イングレッシュ? コリア? イエス・ノーで答えて」
それでも相手は黙っている。
患者は顔を背けてしまう。どうしてここへ私を入れたの?、そうじゃない、という表情だ。
ここまで来て、彼女はようやく手話らしき仕草を見せだす。うめき声のような声まで発し、彼女の置かれた状況もわずかに見え始める。
しかし思い込みがウンジェ達を気づかせない。
彼女はシビレを切らして2人の前から逃げ出す。ここではラチがあかない、と思ったらしい。
要領を得ないウンジェとゴウンは顔を見合わせた。患者を追いかけて出た。
逃げ出した患者の前にふらりとヒョンが現れる。立ち止まった患者にウンジェたちが追いつく。
「どうしました?」とヒョン。
「何も話してくれないの」
患者は手を動かして何かをヒョンに訴える。その仕草でヒョンはすぐにピンときた。
「話しているよ」とヒョン。
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ヒョンの視線を見てゴウンは気づいた。
診療室に連れていってヒョンは手話で彼女に問いかける。
「なぜ、治療の拒否を?」
「私のことはかまわないの」
「では何でここへ?」
「子供が病気なんです」
彼女の訴えは明解だった。
「お子さんはどこに?」
「お家にいます」
ヒョンは笑顔を返した。
「心配いりません。お子さんは僕たちが治療しますから」
「ありがとうございます」
彼女は深く頭を下げた。
「お家はどこですか?」
ヒョンの患者に対する対応にウンジェも深く感銘を受けた。ヒョンを医者として後輩扱いした自分を恥じる思いだった。
そんなウンジェの横にだれかが立った。
「あの顔…ずっと見たかった”私の男”の顔だわ」
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ウンジェは彼女を見た。チェ・ヨンウンだった。
ここにもアリムさんのようなことをいう女性がいた。
「”私の男”とは?」
ヨンウンは訊ねたウンジェを見つめ返す。軽く息を整えた。
「聞いてません? 私たち婚約してるんです」
この言葉にウンジェは軽いショックに見舞われた。
―アリムさんにも私にも強烈なライバルみたい…
ウンジェはヒョンの横顔に目をやった。ふだん見てるよりずっと男の顔を彼は持っていた。
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