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韓国ドラマ「病院船」から(連載217)
「病院船」最終話➡好きだから⑧
★★★
ヒョンは鞄を開けた。ノートパソコンを取り出して映像を見せた。
ウンジェの診療を受けた患者が登場した。
「私よ」
ウンジェは顔を上げる。
「私が髪を掴んだから腹を立てて―遠くへ去ったんでしょ。あっははは、二度と髪はつかまない。だから…会いたい。必ず戻って来ておくれ」
「…」
「私よ。お酒はやめたわ。先生にすごく会いたい。本当に会いたい」
ウンジェは目を開けて聞いている。
「気の毒に。小言が言えなくなって寂しいだろ。早く戻って来るんだ。みんな待ってる」
「…」
「塩辛い物や甘い物は控えてるわ…だから早く戻ってきて」
手話の女の声が聞こえてウンジェは顔を起こした。子供が話し出す。
「戻ってきてください。会いたいです」
ウンジェはついに身体を起こす。まじまじと映像に見入りだす。
「パク・スボンだ。ジェゴルと一緒に魚を釣った。身体にいいから戻ってきて食べなさい。いつでも歓迎だ」
「…」
「ソン・ウンジェ先生。ハンソルの母です。ハンソルは人工呼吸器を外して退院しました」
ウンジェは今にも泣きそうな表情になった。
「先生~感謝しています。そしてすみませんでした」
「今度は私たちが先生を応援することで恩返しします」
ウンジェは泣き出す。
「先生、戻ってきてください。私たち全員が先生を待っています」
ヒョンはベッドの縁に腰をおろす。ウンジェの肩に両手を当てた。
「巨済に戻って僕と一緒に闘おう」
「…」
「君のためだけじゃない。君がいないと―僕がダメなんだ」
ウンジェは涙を流しながらヒョンの言葉を聞いた。
「お願いだ」
「…」
「君の隣が僕の居場所なんだ。だから僕を…突き放さないでくれ」
ウンジェは涙を流しながらヒョンの胸に顔を埋めた。そのまま泣きじゃくった。
泣きじゃくるウンジェにヒョンは、彼女の背を手で優しく宥めては頷く仕草を見せた。
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★★★
巨済第一病院でウンジェは手術を受けることになった。
その日が来た。
手術室の前でヒョンはウンジェの手を握った。
「頑張れるよね?」
ウンジェはヒョンを見つめあげた。
「君は1人じゃない。気を楽にして」
「…行って来るわ」
ヒョンは笑った。
「それでいい。そういうべきだ」
ウンジェは晴れやかな笑みを返した。
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執刀医は第一病院のキム・スグォン院長だった。
手術の準備が整った中、キム院長は最後に姿を見せた。ウンジェの前に立った。
「ここには韓国一の整形外科医がいるのに、今までどこに行ってたんだ」
ウンジェは苦笑を浮かべる。
「心配せずに寝てろ。100歳まで生きてもびくともしない脚にしてやる」
ウンジェは頷いた。
「安心しろ」
キム院長は手術スタッフとアイコンタクトを取った。ウンジェは麻酔で眠りに沈んだ。
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それから1年が経過した。
病院船は方々の島々をめぐって順調に診療活動を続けていた。
今日も子供を抱いた男性が病院船に向かって駆けこんでくる。
「先生~どうしたらいいんだ」
診察を行うヒョンのところに病院船のスタッフがみんな顔を出す。
ヒョンは言った。
「虫垂炎だ」
「搬送できないな」と事務長。
「困ったわね」とゴウン。
「俺は韓方医だ」とジェゴル。
「僕も手術できない」とジュニョン。
つまり、外科的処置が必要だと、病院船は今日もお手上げ状態なのだった。
「だから、こういう時は…」とアリム。
「外科医が必要だって?」
後ろで誰かの声がした。
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アリムがびっくりして声の方角に目をやる。他のスタッフもアリムに習う。
姿を現したのはウンジェだった。腕を組んで、自信満々のオーラをまとっている。以前のままのソン・ウンジェが目の前に立っている。
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ヒョンだけは落ち着きの表情を見せている。
「戻ってきました」
ウンジェは切り出した。
「今日から再び、病院船に勤務する―外科医のソン・ウンジェです」
皆の表情は驚きから懐かしさと晴れやかな笑顔に変わっている。
ヒョンも穏やかな笑みを見せた後、子供を抱き上げる。
「患者を手術室に移しましょうか?」
「もちろんよ」
ウンジェは快諾する。
一番前をウンジェが歩き、ヒョンが続く。
「アリムさん」
そう言ってゴウンが続き、アリムも一列で続く。
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ウンジェは船のデッキに立った。海や空の遠くに目をやった。
― 昔は1人でも平気だと思っていた。人に頼るのは恥ずかしいとも思っていた。でも今は、彼に助けを求めて支えてもらうことを恥ずかしいと思わない。
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ウンジェの横にヒョンがやってきて立った。ウンジェは笑顔を向けた。ヒョンも笑顔を返してきた。
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― 私たちは人生で何度もつまづき、道に迷うこともある。そんな時は自分の隣を見てほしい。ふらつく自分を支えてくれる人がいるはずだ。おかげで私たちは新たな航海に乗り出せる。愛の力を信じて…
ウンジェはヒョンの肩に顔を預ける。ヒョンの腕がウンジェの身体を支える。ウンジェは静かに目をつぶる。
2人の前方からは漣が時を刻んで滑ってくる。…
終わり(完)