<script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb2db9ede
韓国ドラマ「病院船」から(連載215)
「病院船」最終話➡好きだから⑥
★★★
ため息をつく。ウンジェの目元は次第に潤んでくる。
「空や海が青く美しく見えるのも、雑草すらきれいに見えるのも、彼の存在があるからみたいです」
ウンジェは顔を天井に向けた。濡れた瞳はキラキラ光った。両手で顔を覆った。
鼻をすすってゴウンを見た。涙目で言った。
「私の身体を蝕んでいるガンはタチ(性質)が悪そうです。肺に転移すれば死ぬ恐れが…生き延びたとしても元気に歩き回れなくなるかも」
「ソン先生…」
「彼の前でこんな自分をさらしたくないんです。美しく健康な姿で彼のそばにいたい」
「…」
「病気で苦しむ姿を見せたくないんです」
ゴウンは首を横に振った。
「そんなこと言わないで、ソン先生」
「何よりも、彼の―重荷になりたくないんです。すでにたくさんの重荷を抱えている人なんです」
「…」
「支えてくれる人や頼る人がほしくてこの恋を始めたわけじゃないの。そんな恋なら最初から始めなかった…一緒にいる時に安らぎを与えたかった…彼を癒してあげたくて―始めた恋なんです」
「…」
「だから、このまま彼の前から去りたい」
ゴウンはじっとウンジェを見つめた。ぽつんと言った。
「カッコいいわ」
「そうありたい」
「でも残酷ね」
ウンジェは切り返した。
「元からです」
ゴウンはウンジェに身体を寄せた。姉御の契りで抱きしめた。
ウンジェはゴウンに抱かれ本当の妹のように泣きじゃくった。
★★★
ウンジェの荷物をバスのトランクに入れてヒョンは言った。
「どうしてわざわざ始発バスに乗るんだ」
「私じゃなくウジェと父の予定に合わせただけよ。出国前に半日ほどしか会う時間を作れないみたいなの」
「わかったよ。向こうに着いたら電話して」
うんうんとウンジェ。
「寒いから早く乗って」
「元気でね」
軽いタッチでウンジェは言った。
「何て挨拶だ。”行ってきます”と言うべきだろ。永遠の別れみたいな挨拶だよ」
「私、そう言った…?」
ヒョンは笑いながら付け足す。
「もう言わないで」
うんうんとウンジェ。
「早く乗って」
乗って座席についたウンジェはヒョンに目を寄こす。
ヒョンは親指と小指で電話マークを作って口を動かした。
「(着いたら必ず電話をくれ)」
ウンジェは口を結んだまま頷いた。
バスが動き出すと2人は手のひらを向け合った。笑顔でバイバイし合った。
バスが後部を見せだすとヒョンは大きく手を振った。ウンジェは少しずつ後ろ向きになりながら手を振り返した。
バスが街道に出るとウンジェにひとりの時間が戻った。そしてその時間はヒョンや病院船の仲間をどんどん後ろへ追いやっていく。
ウンジェの目はみるみるうちに潤んできた。
ウンジェはソウルの病院で精密検査を受けて闘病生活に入った。
「病巣の範囲が広く、PETーCT画像では肺転移が認められる。まずは肺に転移したがん細胞を減らす―化学療法を行おう」
1日が推移するとウンジェは眠たくなるまでソウルの夜景を眺めて時間をつぶした。
病院船もウンジェのいないいつもの時間が流れていた。
ヒョンの診療室にジェゴルが顔を出した。
「連絡は?」
「ない…」
ヒョンは目を落とした。ジェゴルは息をついた。
「ほんとかよ。ひと月も音信不通ってどういうことだ?」
「…」
「研修先には?」
「連絡した」
「それで?」
「スカウトの担当者がソマリアに派遣された。韓国人も1人参加を」
「ソン先生か?」
「分からない。確認してもらってるところだ」
「ソマリアか…心配にはなるし、もどかしい話だな」
そこへヒョンの携帯が鳴った。
ヒョンは電話を受ける。
「はい、母さん…」
ジェゴルはヒョンに手ぶりで示し、診療室を出て行った。
「X線撮影を? 午後いらした時にお話します…はい」
ヒョンは事務長の部屋にやってきた。事務長の姿は見当たらない。
「どこへ行ったんだ…?」
モニタが光を放っている。ヒョンはモニタ前の椅子に腰をおろした。
「自分で探すとするか…」
ヒョンはウンジェの脚のことが気にかかっていた。脚に絡み、事務長はウンジェのことで何か隠しているんじゃないかと気になりだしていた。
ヒョンはマウスを握り、PCの中のファイルを検索しだす。
そしてX線で撮った脚の画像が出て来た。
ウンジェのものに間違いない。
これは……?
怪訝そうしていると後ろから声がかかった。
「ここで何してるんです?」
事務長だった。
「これは何です?」
答えられずにいるとヒョンが画像を睨んで訊ねた。
「ソン先生のでは?」
事務長は観念した。
「クァク先生…」
「ソン先生は病気じゃないですか!」
「病気ですって?」
たまたま顔を出したアリムが訊ねた。
「聞き間違いかしら。違いますよね。どこが悪いんですか?」
「…」
ヒョンは診療室に戻ってきた。ドカッと椅子に腰を落とした。ショックと動揺がヒョンの脳裏を走り回った。
このため、彼女は自分の前から去ったのか。ここを去る直前、彼女の見せた態度や行動が妙だったのにも得心がいく。
しかし、なぜ? ヒョンは拳を握った。椅子にもたれかかり、天を仰いだ。目を閉じた。大きく息を整えた。
携帯を引っ張り出した。
ウンジェに電話を入れた。
「出てくれ…」
祈る思いだった。
しかし、ウンジェは出てくれない。ヒョンはうな垂れた。肩を落とした。携帯を投げ出した。
仕事を終え、途方に暮れて部屋に戻ると携帯が鳴った。
「病院船」最終話➡好きだから⑥
★★★
ため息をつく。ウンジェの目元は次第に潤んでくる。
「空や海が青く美しく見えるのも、雑草すらきれいに見えるのも、彼の存在があるからみたいです」
ウンジェは顔を天井に向けた。濡れた瞳はキラキラ光った。両手で顔を覆った。
鼻をすすってゴウンを見た。涙目で言った。
「私の身体を蝕んでいるガンはタチ(性質)が悪そうです。肺に転移すれば死ぬ恐れが…生き延びたとしても元気に歩き回れなくなるかも」
「ソン先生…」
「彼の前でこんな自分をさらしたくないんです。美しく健康な姿で彼のそばにいたい」
「…」
「病気で苦しむ姿を見せたくないんです」
ゴウンは首を横に振った。
「そんなこと言わないで、ソン先生」
「何よりも、彼の―重荷になりたくないんです。すでにたくさんの重荷を抱えている人なんです」
「…」
「支えてくれる人や頼る人がほしくてこの恋を始めたわけじゃないの。そんな恋なら最初から始めなかった…一緒にいる時に安らぎを与えたかった…彼を癒してあげたくて―始めた恋なんです」
「…」
「だから、このまま彼の前から去りたい」
ゴウンはじっとウンジェを見つめた。ぽつんと言った。
「カッコいいわ」
「そうありたい」
「でも残酷ね」
ウンジェは切り返した。
「元からです」
ゴウンはウンジェに身体を寄せた。姉御の契りで抱きしめた。
ウンジェはゴウンに抱かれ本当の妹のように泣きじゃくった。
★★★
ウンジェの荷物をバスのトランクに入れてヒョンは言った。
「どうしてわざわざ始発バスに乗るんだ」
「私じゃなくウジェと父の予定に合わせただけよ。出国前に半日ほどしか会う時間を作れないみたいなの」
「わかったよ。向こうに着いたら電話して」
うんうんとウンジェ。
「寒いから早く乗って」
「元気でね」
軽いタッチでウンジェは言った。
「何て挨拶だ。”行ってきます”と言うべきだろ。永遠の別れみたいな挨拶だよ」
「私、そう言った…?」
ヒョンは笑いながら付け足す。
「もう言わないで」
うんうんとウンジェ。
「早く乗って」
乗って座席についたウンジェはヒョンに目を寄こす。
ヒョンは親指と小指で電話マークを作って口を動かした。
「(着いたら必ず電話をくれ)」
ウンジェは口を結んだまま頷いた。
バスが動き出すと2人は手のひらを向け合った。笑顔でバイバイし合った。
バスが後部を見せだすとヒョンは大きく手を振った。ウンジェは少しずつ後ろ向きになりながら手を振り返した。
バスが街道に出るとウンジェにひとりの時間が戻った。そしてその時間はヒョンや病院船の仲間をどんどん後ろへ追いやっていく。
ウンジェの目はみるみるうちに潤んできた。
ウンジェはソウルの病院で精密検査を受けて闘病生活に入った。
「病巣の範囲が広く、PETーCT画像では肺転移が認められる。まずは肺に転移したがん細胞を減らす―化学療法を行おう」
1日が推移するとウンジェは眠たくなるまでソウルの夜景を眺めて時間をつぶした。
病院船もウンジェのいないいつもの時間が流れていた。
ヒョンの診療室にジェゴルが顔を出した。
「連絡は?」
「ない…」
ヒョンは目を落とした。ジェゴルは息をついた。
「ほんとかよ。ひと月も音信不通ってどういうことだ?」
「…」
「研修先には?」
「連絡した」
「それで?」
「スカウトの担当者がソマリアに派遣された。韓国人も1人参加を」
「ソン先生か?」
「分からない。確認してもらってるところだ」
「ソマリアか…心配にはなるし、もどかしい話だな」
そこへヒョンの携帯が鳴った。
ヒョンは電話を受ける。
「はい、母さん…」
ジェゴルはヒョンに手ぶりで示し、診療室を出て行った。
「X線撮影を? 午後いらした時にお話します…はい」
ヒョンは事務長の部屋にやってきた。事務長の姿は見当たらない。
「どこへ行ったんだ…?」
モニタが光を放っている。ヒョンはモニタ前の椅子に腰をおろした。
「自分で探すとするか…」
ヒョンはウンジェの脚のことが気にかかっていた。脚に絡み、事務長はウンジェのことで何か隠しているんじゃないかと気になりだしていた。
ヒョンはマウスを握り、PCの中のファイルを検索しだす。
そしてX線で撮った脚の画像が出て来た。
ウンジェのものに間違いない。
これは……?
怪訝そうしていると後ろから声がかかった。
「ここで何してるんです?」
事務長だった。
「これは何です?」
答えられずにいるとヒョンが画像を睨んで訊ねた。
「ソン先生のでは?」
事務長は観念した。
「クァク先生…」
「ソン先生は病気じゃないですか!」
「病気ですって?」
たまたま顔を出したアリムが訊ねた。
「聞き間違いかしら。違いますよね。どこが悪いんですか?」
「…」
ヒョンは診療室に戻ってきた。ドカッと椅子に腰を落とした。ショックと動揺がヒョンの脳裏を走り回った。
このため、彼女は自分の前から去ったのか。ここを去る直前、彼女の見せた態度や行動が妙だったのにも得心がいく。
しかし、なぜ? ヒョンは拳を握った。椅子にもたれかかり、天を仰いだ。目を閉じた。大きく息を整えた。
携帯を引っ張り出した。
ウンジェに電話を入れた。
「出てくれ…」
祈る思いだった。
しかし、ウンジェは出てくれない。ヒョンはうな垂れた。肩を落とした。携帯を投げ出した。
仕事を終え、途方に暮れて部屋に戻ると携帯が鳴った。