雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「上流社会（全16話）」から⑥

2020-06-17 19:44:33

韓国ドラマ「上流社会（全16話）」から⑥

　テジングループのチャン会長と副会長を務めるチャン・ギョンジュン（ユナの兄）は経営理念をめぐって対立している。少々臭くても隠し通せるものはフタをして隠し通そうとする父親に対し、チャン・ギョンジュンは非は非として認め、ガラス張りの経営にスイッチしていくべきだと事あるたびに提唱した。しかし、チャン会長は息子の考えをまったく認めなかった。認めたら自分の隠居が早まるだけと思っているからだ。

　テジングループの裏金づくりが大々的にスクープされ、チャン会長は検察に出頭せざるを得なくなった。
　ギョンジュンの姉、チャン・イェウォンは自分を捨てるために父親が仕組んだと悲観する。しかし、秘書の見解は違っていた。
「会長の座を狙う副会長が仕掛けたのでしょう」
「…」

　ユナの母、ミン・ヘスは夫のチャン会長より息子のギョンジョンに期待を寄せていた。自分を相手にせず、気に食わないことがあると愛人の部屋に行ってしまう夫に愛想をつかしていた。

　テジングループが窮地に立ったのを感じたミン・ヘスはユナを呼びつけた。
　家政婦の手で飲み物が二つ運ばれて来る。
　家政婦が下がった後、ヘスは言った。
「今、会社は厳しい状況なの。分かるでしょ？」
「はい。ニュースを見たわ」
「あなたにも一肌脱いでもらわないといけないわ」
「…」
「あなたには政略結婚をしてもらう」
「…」
「私もそうだった」
　ユナは母親を見た。
「私にお母さまのようになれと？」
「愛があっても、なくても結婚生活は同じよ」
「目をつぶった結婚は嫌よ。それは愛する人と結婚して自分で確かめる」
「少しは自分を殺して従いなさい。悪いようにはしないから」
　ユナはヘスと目を合わせない。
　そこにユナの携帯が鳴った。
　電話をかけて寄こしたのはチェ・ジュンギだった。
「チェ・ジュンギ？　体重を量るあれ？」
　冗談とも本気とも区分がつかない。
　ジュンギは真顔で応えた。
「チェ代理です」
「ああ、あの～」
　気が弾みかけて、ユナは慌てて思いとどまる。　
　ユナは母に向き直った。
「部屋に戻るわ」
　しおらしく頭を下げてユナは立ち上がった。

　部屋に戻ってユナにいつもの調子が戻った。
「はい、何でしょう？」
「会社に来てください」
「やっぱりね…そうなると思ったわ。仕事に復帰するってことでしょ？」
「違います。前向きな性格ですね」
　ユナは急いで会社に出向いた。
　チェ・ジュンギに会って訊ねた。
「復帰させないのになぜ呼んだんですか？」
「最強の後ろ盾でもおありになる？」
「えっ」
「お客様が謝りたいと言って待ってます。必死に頼まれました」
　ユナはすかさず言った。
「帰ります」
「なぜ？」
　ユナは顔を上げ、ジュンギを見た。
「もう従業員じゃないし、謝罪を断ればチェ代理が困るでしょ。だからです」
「やっぱり思った通りの人だ」
「…！」
「責任感がない。他人に迷惑をかけても平気なんですね」
　ユナはなぜか反論できなかった。…
　

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