雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載123)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載123)



「30だけど17です」第14話(2人きりの夜)⑧


☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★

 ベンチのヘボムはチャンを見て言った。
「チャンのやつ、さっきから1人で何をゴチャゴチャとパフォーマンスしてるんだ…?」
「ほっとけ」とドクス。「いつものことだ」
 2人は声を揃えて叫んだ。
「この大げさ野郎!」
 チャンは2人の許に歩み寄った。
「それ、おじさん(ミスター・コン)のおごりだろ?」
「ああ」
 ヘボムは親指を突き出した。
「最高だ」
「…これは俺のものだ」
 チャンはウジンの差し入れ袋をつかんで逃げ出した。
「こらっ、待て。コギソ〜っ!」
 ドクスたちは慌ててチャンを追いかける。

★★★


「今の君を見て伝えておくべきだと思った。ただし、一緒にやるかどうかは君が決めることだ」
 ソリは事務所の屋上にあがり、シム先生から伝えられた話を思い返していた。先生はついでの用向きだけで訪ねてきたわけでもなかったのだ。
 ソリの事情をうっすら知っているだけに、先生は先生なりに伝えようか迷いつつ訪ねて来たようだった。
「音楽祭の組織委員長が、事情を聞いて君にチャンスを与えたいと話を聞かされたのだ」
「私が音楽祭の舞台にですか?」
「私としては、13年前に予定していた曲を今度こそ一緒に演奏したい。一度考えてみて」


 どうしようか、思い悩んでいるとウジンが屋上に顔を出した。声をかけてきた。
「ここにいたのか。昨夜はひとりで大丈夫でした?」
 しかし、ソリはウジンが姿を見せたのに気づかない。
 思いつめた様子で何事か考え込んでいる。
 ウジンは歩み寄ってソリの前に顔を出した。
「ただいま」
「あら、おじさん ― チャン君が元気になってよかったですね。疲れてるでしょ?」
「ソリさんこそ、眠れなかったみたいだけど…大丈夫?」
 ふと、目の前にバイオリンが置かれているのに気づいた。
「おっ、直ったんですね」
「…」
「どうしたの? きちんと直ってなかった?」
 ソリはさっきの思いつめた表情に戻った。
「…だったら、他の店を探してみようよ」
「いいえ、直りました」
 おもいつめた表情のままソリは答えた。
「なのに、なぜ思いつめた顔を?」
 そこにヒョンもやってきた。
「やっぱり、ここだった。ソリさん、これを持って」
 ヒョンに気付かずソリは口を開いた。
「この私に―できるかしら…」
 ヒョンは頷いた。
「布を持つだけです。誰にもできます。こうしてピンピンするだけ」
「台無しにしたらどうしよう」
「…」
「私に資格はある?」
 ヒョンはソリの今の事情を読めない。
「嫌なら別にいいよ」
 そう言ってため息をつく。
「エサやりの一件いらい冷たいんだから。そうそう、代表が6時から会議だそうです」
 ヒョンは黙ったままでいるウジンを見た。
「ウジンさん」
 返事がないので指を鳴らす。
「何だよ。ウジンさんまで変になって…」
 足元をを見るとスリッパ姿だ。
「何事です? スリッパでやって来たんですか?」
「…」
「2人とも僕の話、聞いてます?」


 ヒョンが先におりて、しばらくしてウジンたちも下におりてきた。
 ウジンには、今のソリに明解なアドバイスのできる自信はなかった。できるのは今のソリの悩みを受け止めるだけと分かっていた。
 だから、ソリの後に続いて階下におりて来たのだった。


 ソリは自分のデスクの上にバイオリンケースを置いた。すぐ後ろに椅子があるものと思って腰をおろそうとする。ウジンは慌てて椅子をつかんだ。ソリのお尻の下に素早く押し込んだ。


 これまでのもろもろの悲しみを封印してきた。義父に許され、事故で亡くした夫の墓前で手を合わせたジェニファーにも、ひとつの転機が訪れようとしていた。 
 あの日の事故でそれまでの幸せは一度に崩壊した。流れ出る涙と悲しみで、何げに普通にこなしてきたコン家の家事がうまくこなせない。
 鍋で沸き立つ汁物を沸騰させてこぼすのも、焼け付いた蓋に慌ててふれてしまうのも、ジェニファーにはあり得ないミスだった。


 外での仕事をすませてウジンは帰ってきた。
 ヒョンがウジンに言った。
「代表が帰ってきたら会議を始めます」
 頷いてウジンはソリの後ろに立った。
 沈み込んだソリの表情は出かける前と変わらない。おそらく仕事も手につかなかっただろう。
 ヒョンはウジンに訊ねた。
「ソリさんを帰しますか?」
「ああ、そうだな」
 ウジンは小さな声で頷く。
 ヒョンは腕を伸ばし、考え込んでいるソリの肩を叩いた。
「ソリさん、お疲れさま。また明日ね」
 席を立ち、給湯室に向かいかけてヒョンは訊ねた。
「コーヒー飲みますか?」
 ウジンはソリの背を見つめたまま首を横に振る。
 少し間があってからソリは席を立った。
「それではお先に失礼します」
 ウジンが帰って来たのにも気づかない様子でバイオリンケースを背負い、事務所を出て行く。
「どこへ行くの?」
 ウジンはようやく声をかけた。
「え?」
 振り返ったソリは無表情で答えた。
「家です」
 ウジンはソリに歩み寄った。両腕でソリの身体を横に動かす。
「こっちは屋上、出口はあっちだ」
「そうだった…」
 ソリはウジンにペコンと頭を下げた。
「ありがとうございます」
 ソリはゆっくりした足どりで事務所を出ていった。
 
 気が抜けたようなソリを見送った後、ウジンは大きくため息をついた。


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