雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(47)






韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(47)


  家に帰ってきたウンジュはヨンオクに話があると切り出した。
「ちょうどよかった。私もあるのよ」
 ヨンオクはキジョンの部屋を気にし、ウンジュを食堂の方へ連れていった。
「先日は酔って心ないことを口にしてしまったわ。すみません」
「…」
「反省しています――正気じゃなかったの。酔ったせいで幼い頃の自分が出たみたい。すみませんでした」
「わかっているわ。もう気になんてしてない」
「昨日、ジェヒさんに結婚話をしたわ」
「そうなの?」ヨンオクは笑顔になった。「それで彼は?」
「考えたことがないと言ってた。だから、話は進展しなかったわ」
「そう…」
「でも心配しないで―何があっても必ず彼と結婚するから」
「…」
「きっと天も助けてくれる。私の望みを1度も叶えてくれなかったし、好きな人の心も得られなかった。まさか、これ以上は」
 ヨンオクは顔を上げた。
「私は何をしたらいい?」
「今日は話が通じるわ」
 ウンジュは身を乗り出した。
「院長への後押しとパパの説得を。パパの反対は気にしないけどね」
「わかったわ。明日の昼、院長に会うことになってる。私を信じて。私はあなたの味方よ」
「ええ。信じさせて」
 ヨンオクはウンジュの手を取り、頷いた。

 
「結婚しよう」
 シワンは言った。
「その話はしないで」
 シワンは切り出した話を引っ込めない。
「結婚しよう」
 同じ言葉を繰り返す。
「無理よ」ソンランは言った。「ご両親が承知しないわ。長男への期待も大きいし、子供もいるバツイチの女なのよ」
「むろん、がっかりして反対するだろう。でも結局は折れて許してくれるはずだ。お前は俺を信じろ」
「…」
「俺たちの結婚だ」
「急ぎ過ぎよ。こんなに簡単に結婚を決めるなんて」
「お前に会わない間にも気持ちはどんどん固まってきた。だから、決めた。長く考えても同じことだ。結婚してくれ」
「嫌よ。私は結婚が嫌いなの。とても怖いわ」
 ソンランはベンチに腰をおろした。
「また傷ついて卑屈になるのも嫌よ」
 シワンもソンランの隣に腰をおろした。
「また卑屈になって――ご両親の前では罪人で…過去を打ち明けて許しを乞うのよ」
 シワンは両手で顔を拭きおろした。
「じゃあ、そうしてくれ。卑屈になるくらい何だ。お前は人に、頭も下げられないのか? それなら」
 ソンランはシワンを向き直った。
「俺を手に入れるのにその覚悟も?」
「だからこのままで十分って言ってるの」
「それで、俺を失ってもいいのか? いいんだな?」
「…」
「なら、そうしろ。お前はプライドを守って、生涯、仕事に没頭して成功すればいいさ。堂々と独身を貫け」
「ノ・シワン!」
「それでお前が幸せなら――」
「…」
「お前は成功が幸せだと思うのか? 俺は違う。幸せな人生が成功だと思う」
「…」
「決めろ。俺は家に帰ったら、両親にお前と結婚すると伝える」
「えっ!」
「明後日、お前と両親の挨拶の席を設けるつもりだ」
「何ですって?」
「両親はお前が未婚だと思ってる。俺も先入観なしにお前に会ってほしい。何も言わずにいく。この前の中華料理店に1時だ」
「何を言ってるの?」
「言っただろ。長く考えても同じだ。明後日、1時にこの前の中華料理店だ。俺が必要なら来い。でなければ来なくていい」
「本気で言ってるの?」
「本気だ。俺を信じて来い。明後日1時だ」
「ダメだと言ってるでしょ」
「待ってる」
 シワンはソンランにキスをした。
「待ってるから」
「…」
 
 家ではジョンシムのギプスの取れた祝杯をあげている。
「ああ、美味い」
 ビールをグイと飲んでピルトはゴキゲンだった。
「ギプスが取れて爽快でしょう?」
 クムスンが訊ねる。
「そりゃ、当然よ。爽快でどこへも飛んで行きそうよ」
 気分が乗ってジョンシムが歌を歌いだした頃にシワンが帰ってきた。
 場が弾んでいる席でシワンは切り出した。
「父さん、母さん――俺は結婚したいと思ってます」
 それを聞いてピルトとジョンシムは緊張した。
「結婚?」
 ジョンシムが真剣な表情で訊ねた。
「誰と?」
「ソンランです」
 クムスンは飲みかけたビールを思わず吐き出しそうになった。
「あのハ・ソンランさん?」とジョンシム。
「別れたんじゃないのか?」とピルト。
「心配かけました」
「心配したけどよかったわ」
 ジョンシムはピルトを見た。
「あなた、シワンが結婚するって」
「そうだな。お前の選んだ人は条件なしに歓迎だ」
「そうよ。あなたが選んだ相手ですもの。彼女なら言うことなしよ」
 彼女のところに押しかけたクムスンとテワンはうろたえた。
「兄さん、本気なのか?」テワンが訊ねる。
「何のことだ?」
「本当に彼女と結婚するのか?」
「そうだよ」
「彼女もそのつもりなのか?」
「お前、どうしたんだ?」とシワン。
「そうよ、なんて顔してるの?」とジョンシム。
「そこで」と、シワンは切り出す。「明後日の昼に、彼女が挨拶をしたいと」 

 クムスンとテワンは席を離れ、キッチンにきた。
「どうしよう。お義兄さまはまだ知らないのよ」
「言うわけないさ。そんな話を兄貴にするわけないだろ。他の男といたのがバレるんだ」
「そうじゃないですよ」クムスンは呆れた。「相手の人は何でもない人だったのよ。私たちが誤解したのよ」

 梅茶とコーヒーを作ってきて二人に出した後、頃合を見てクマは切り出した。
「ママ、じつは話があるんですけど」
「話しなさい」
 しかしクマはなかなか切り出さない。
「何なの? 早く話しなさい」
「私ね、教職試験を諦める」
「どういうこと?」
「教師は諦めて就職するわ」
「突然何言ってるの」
「私は――教育学科を出て教師になるつもりだった。でも教師にはなりたくないの」
「…」
「就職するわ。この前、とても辛かったわ。お金を稼いでママを手伝いたい」
「お前、私を心配するようにしてそんなこと言わないの。私の夢を知ってて、今更、何を言うの? 私はあなたを希望に生きてるのにひどいじゃないの」
「就職してママを喜ばせるわ」
「これ以上、私を苦しめたいの?」
「…」
「何を言い出すかと思ったら、もう―勉強に精が出ないのは気の緩みすぎよ。何ですって? 勉強も嫌で、教師も嫌ですって?」
「私は勉強が嫌なわけじゃ」
「黙りなさい! ダメよ。絶対にダメ。今年中に試験に合格して発令も受けるの。わかった?」
 
 美容室でクムスンの先輩格の試験発表があり、3人のうち2人が合格した。落ちたのはヘミだった。
 いつも自分を目の敵にしているヘミが落ち、クムスンは少し溜飲が下がった思いのようである。
 
 キジョンはいただいた贈り物のお返しに果物の盛り合わせをスンジャに贈った。
 この時、互いの家族の話になった。
 キジョンは腎臓を患っている妻の話をし、スンジャはキジョンから質問を受け、事故で亡くなった夫の話をした。

 オ・ミジャはヨンオクを食事に招待した。
 ヨンオクはオ・ミジャのズケズケの物言いに困惑した。

 ジェヒは自分の母親の経営する美容室のそばに車を停車させ、クムスンが仕事を終えて出てくるのを待っている。
 クムスンが出てくる。すかさず車を横付けする。クラクションを鳴らす。窓をおろす。
「元気か?」
 声かけて反応がないと見ると、母親をダシに使う。
「母さんに会いに来たら出たってさ」
「はい。早く帰られました」
「ほんとに訴えるつもりか?」
「しないわ。心配しないで」
「そうか。ありがとう。乗れよ。送ってやる」
「…」
「疲れてるだろう。乗れよ」
「けっこうよ。行って」
「乗れってば」
「…」
「罪滅ぼしだ。俺にも良心はあるさ。どんな風にでも、罪を償いたいんだ」
「そうよね。あなたの罪を考えれば1ヶ月半は乗らないと気がすまないわ」
「だから乗れよ」
「いいわ」
 クムスンは助手席のドアを引いて、ジェヒに注文をつける。
「椅子を前に倒して」
「また後ろに乗るのか?」
「はい」
「タクシー扱いせずに前に乗れ」
「前は車酔いするからダメなの。後ろに乗るわ」
「後ろは余計に車酔いするぞ」
「私は違うのよ」
「本当に変わってるな。分かったよ。乗れ」
 車に乗ってからクムスンは言った。
「ドアが二つなんてほんとに不便だわ」
「多くの人は”不便”ではなく”洗練”というよ」
「あなたみたいな格好づけの人はね」
「何だと? 格好づけ?」
「歩く姿が首にギプスした人みたい」
「…」
「これ、外車でしょ? 故障したら外国に持っていって直すの?」
「国内に修理工場がある」
「そうなのか。今日はどこまで送ってくれるの?」
「腹は減ってない? 何か食べて行こう。家まで送ってやるから」
「おなかが?」
「ああ」
 ジェヒは笑顔になった。 
「腹ぺこなんだ」
「それなら~、そこの駅で降ろして食べに行って――私は家に帰りますから」
 ジェヒの顔から笑みが引いた。
「わかった。家まで送るよ。家はどこだ?」
「本当? いいのに。チンネ洞です」
 クムスンを送ってゆく途中、携帯に電話が入った。
 ウンジュからだった。ジェヒはバックミラーからクムスンを見た。
 ウンジュの電話に煩わしさを感じたジェヒは電源を切った。

 途中で寝入ったクムスンが目覚めるのをジェヒは車を停車させて待った。 
 クムスンはやがて目覚めた。ジェヒは車を発進させた。
 家の近くまで来たところで、ジェヒの車は徐行になった。道の真ん中を歩いていく男がいたからだった。車の気配を感じて男は振り返った。
 その男はテワンだった。
 テワンに気付いてクムスンは緊張した。





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