カンジャは海へやってきた。海に向かって自分の気持ちを伝えた。願いを叫んだ。
「こんにちは。もうすぐ雪が降りますよ。お日様、こんにちは。雪を降らせてくださ~い」
部屋に戻ったアンナはビリーときちんと向き合った。別れの言葉を切り出した。
「ビリー、私は行くわ。ホテルは任せるわ。あなたにあげる」
「…」
「これまでありがとう。それと、ごめんなさい」
立ち去ろうとするアンナにビリーは言った。
「僕とは終わったのに…、どうしてあいつの元へ戻らない」
アンナは振り返る。ビリーを見つめ返す。
「まだ自信はないのか? この話をしたら自信を持てるかな?」
「…」
「チャン・チョルスは――君のために僕の過ちを」
「もういいわ」
アンナはきっぱり言った。
「二人とも格好悪いわ。もう終わったの。些細なことよ。今さら蒸し返さないで」
「えっ? ”些細なこと”だって?」
「そうよ。今となってはね」
アンナは話を切り上げた。
出て行くアンナと入れ替わるようにコン室長がやってくる。アンナの背にちらと目を走らせた。ビリーに訊ねた。
「社長、話したんですか? だったらチャン・チョルスの元へ戻ったでしょうね?」
「いや、話さなかった」
「…」
ビリーは答えた。
「”些細なこと”だってさ。それはつまり…」
ふいにある疑念に突き当たる。
「僕を捨てる理由が些細なことだってのか?」
ビリーの胸に不快感と苛立ちがどっと雪崩れ込む。
アンナは外に出た。歩きながら自分に言い聞かせた。
「些細なことよ。そう思わなきゃ・・・」
右手に人影が立つ。やってくる女はユギョンだった。
アンナに気付いてユギョンは足を止める。アンナはユギョンに向かっていく。いったん足を止めたユギョンも意地を張ってアンナの前に進む。
アンナは立ち止まってユギョンが近づくのを待った。
「花束女を見ると腹が立つのは――まだ執着心が残ってるようだわ…」
ユギョンはアンナの前に立った。
「今日、発つそうね」
「あんたは私が去ったら、チョルスの元へ戻るの?」
「あなたに何の関係があるの?」
「それはそうだ」
アンナはユギョンの横をすり抜け、何食わぬ顔で歩き去ろうとする。だが、こみ上げてくる対抗心を抑えられない。
突然、振り返る。
「ちょっと、花束女!」
ユギョンも振り返る。
「私が就職先を紹介するから、彼の元へ戻らないで。何なら最高の結婚相手も紹介するわ。だから、チャン・チョルスのことはかまわないで」
「どうして?」
ユギョンの問いかけに、ためらいつつもアンナは正直になった。
「もしものために彼に手を出さないで」
「何て自分勝手な人なの?」
「ええ、私は自分勝手よ。自分だけが大事なの。今は確信がなくて戻れないけど、心はまだ――彼を忘れられない。あんたと同じね」
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