雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(31)



韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(31)


 あわてて書類をしまう夫を見てヨンオクは訊ねた。
「何なの? 私が顔を見せたとたん、急いで隠すなんて」
「何でもないさ」
 キジョンは笑みをつくった。
「なら隠す必要もないのに」
「そうじゃない。手術時の写真だから見たくもないだろうさ」
「・・・」
「早かったな、ともかく座って」
 
 腰を打って怪我をしたクムスンは薬局で塗り薬を買った。

 オ・ミジャは風邪気味のようである。
 ウンジュはしきりに心配する。
「大丈夫よ。家に帰って薬を飲んで寝るから。映画を見に行くんでしょ。心配など無用よ」
「そういうわけにいきません。ジェヒさん、キャンセルして家に行こう。院長に夕食を作るから」
 オ・ミジャとジェヒは顔を見合わせる。
「ウンジュさん、料理が出来るの?」
「大したことはないです。行きましょう」
「気にしないでいいから」
 ウンジュは言った。
「具合が悪い時に一人だと寂しいのはよく分かるし、休日の彼を独占するのは申し訳なかったから、ちょうどよかったわ。行きましょう」
 ウンジュの話にオ・ミジャは感激したようである。
 笑顔でジェヒを促す。
「願ってもないな」
 ジェヒも同調した。

 三人は席を立った。先にウンジュたちが部屋を出た。ジェヒはちらと薬箱を見た。開けて傷薬を取り出した。
 クムスンが怪我したのをジェヒはずっと気にかけていたのだった。

 美容室を出る時、店内に目をやりクムスンを捜したジェヒだったが、彼女はなかなか目に飛び込んでこない。苛立ちだしているとウンジュが呼んだ。
 表に出てきた時、ジェヒは通りを戻ってくるクムスンに気付いた。クムスンは痛む腰を押さえながら歩み寄ってくる。
「院長、お帰りですか?」
 続いてジェヒにも頭を下げた。
「どうも」
 知らない間柄を通しているジェヒは横を向く。実直が取り柄のクムスンは彼に訊ねる。
「やけどは治りましたか?」
 話をはぐらかすため、ジェヒを空咳をやった。
「おっ!」
 クムスンは丸い目をさらに丸くし、感激の声を発する。
「指が治ってる。でしょ?」
 ジェヒは困った。顔をしかめた。
「治るの早いですね」
 ジェヒを見てオ・ミジャは怪訝そうにする。
「何してたの?」
 ウンジュが口をはさんだ。
 クムスンの馴れ馴れしい口の利き方に不快感を覚えたようである。
「ユンさんが大忙しよ」
「薬局に行ってました。すぐ入ります」
 クムスンは腰を気にしながら店中に戻っていった。
「ジェヒさんの怪我に気付いてたみたい・・・観察が鋭いですね」
 オ・ミジャとウンジュが食べ物の話をしている時、ジェヒは店内のクムスンに目をやり続けた。


 クムスンは負けず嫌いだ。ヘミにやられっぱなしでいたくはないと思っていた。
 ヘミがトイレに行くのを見て、クムスンは後からこっそりついて行った。トイレに入ったのを確かめ、クムスンはそこのドアにゴミ容器とモップでドア止めをかけた。
 ゴミ容器に足をかけてあがり、顔を出して便座にすわりこんでいるヘミに謝罪を求めた。しかしヘミはその気などない。クムスンを馬鹿にする態度は変わらない。ヘミと言い争い、頭にきたクムスンは用意した水を頭からヘミにぶっかけた。モップを外し、ドアを開けられるようにしてそこから逃げ出て行った。
 
 シワンは銀行にやってきたソンランと顔を合わせた。仕事の打ち合わせが始まったが、シワンは担当から外れている。
 上司が呼ぶのでシワンはソンランの隣に席を取った。若い職員が訊ねた。
「大学時代の同級生だそうですね」
「はい」
 ソンランは明るい声で答える。
「課長は忙しいので、僕が補佐します」
 シワンは頷く。
「そうか。悪いな」
 ソンランはシワンに言った。
「今回の修正を最終にしたいんだけど、見て」
 シワンは気が乗らない。
「僕も素人ですからね。こちらの要望が反映されてればいいかと」
「・・・」
「だよな」と上司。「これでいきましょう」
「はい。では週末から着工を」

 外に出たソンランは中にいるシワンを振り返った。ため息が出た。
「シワン・・・あなたも他の男と同じね・・・」

 ウンジュとオ・ミジャは母と娘のようにスーパーでの買い物を楽しんだ。
 食材の買い物のどこがいいのかわからないジェヒは退屈そうに買い物籠を押してついて歩いた。
 買い物をすませ、ウンジュはオ・ミジャの家で料理の腕前を振るった。
「ウンジュ。美味しいわよ。最高ね」
 ウンジュはゴキゲンな顔になり、ジェヒにも訊ねる。
「ジェヒさんは?」
「まあまあだな」
「おいしいと言ったら損でもするわけ?」
「そうじゃない。冷静な評価が発展を生む。美味しいと言ったら勘違いし、そこで発展が止まってしまうだろ?」
「誉められて成長する人もいるわよ」
 オ・ミジャは二人のやりとりに目を細める。

 ヨンオクのいたいけな透析は今日も続く。彼女にとって必死の生存への闘いだ。
 キジョンが様子を見にやってくる。ヨンオクに声をかける。
「つらいか?」
 ヨンオクは笑みを浮かべ首を振る。
「我慢はするな。大丈夫か?」
 ヨンオクは目をつぶる。
「終わったらまた来る」


 透析を終え、キジョンとともにヨンオクは帰宅する。ウンジンが出迎え、嬉しそうにする。
 ウンジンが部屋を出て行った後、ヨンオクは言った。
「今日くらいだったならこれ以上は望まない。透析を受けながらずっと生きられそう」
「移植の申請をしておいた。その日を待とう」
「私は望んでないわ。一度だけで十分よ。断って。今日くらいの体調を維持して行ければそれでいいわ」
「・・・」
 部屋を出ていこうとするキジョンにヨンオクは言った。
「ウンジュを結婚させましょう」
「誰と?」
「ジェヒさんと」
「あいつはダメだ」
 キジョンはにべもなく言った。

 テワンは書店でハ・ソンランのインタビュー記事を載せた雑誌を見つけた。その本を買って家に帰った。

 ジョンシムはピルトを相手に愚痴をこぼした。クムスンをしばらく休ませたら、と提案するが、ピルトは相手にしない。

 家に帰ってきたテワンは買ってきた雑誌を家族に見せた。
「”未婚の美女社長・・・何々・・・インテリア業界の新星・・・春の街角でおしゃれなハ社長に会った。開業してから毎月、増収を続けている・・・”これがどうしたというんだ?」
 とページを読み上げたピルト。
 待ってましたとばかりにテワンは答える。
「その女性が兄さんの彼女さ」
「ほんとに?」
 ジョンシムの顔はぱっと輝く。ピルトから雑誌をむしり取ろうとする。しかし、ピルトも離さない。
「待て待て、この人がか?」
「インテリア会社の社長ですってお義母さん」
「このお嬢さんがシワンの恋人だって? 洗練された女性だわ」
「素敵ですね、お義母さん。背も高そうだし・・・」
 気分よさそうにテワンも頷いた。
「兄さん、大物を釣り上げたよな」
 ジョンシムは訊ねる。
「あなたもその人に会ったの?」
「いや、二人でいるのを見たことがある。俺のタイプなんだけどな。外見がよくて金持ち・・・その気がないようにして、こんないい女を捕まえるとは」
「それくらいにしろ」
 ピルトが箸でテワンの頭を叩く。テワンは引き下がらない。
「俺は正直に感想を述べただけさ。こんな女は現代に生きる男の理想だよ」
 記事を読んでクムスンはため息をつく。
「すごいです。32歳で、もう社長です」
「32歳と書いてあるの?」
「はい」
「シワンと同じじゃ年を取りすぎね」
「そうですか?」とクムスン。「同い年なのに?」
「・・・」
「年なんてどうでもいいさ」とテワン。「母さん、社員を7人も抱え増収を続けてる――人気インテリア会社の女社長だよ」
 ジョンシムは嬉し笑いした。
「だけど、経済的な面より人間性が重要でしょ」
 ピルトはジョンシムの顔を覗きこむ。
「何だか表情が明るくなってきたな」
 ピルトの皮肉などジョンシムの耳に入らない。
「どこか、出身大学や家のことが書いてない? 今度こそ、両親ともに健在な一人前の嫁を・・・」
 そこまで言って、ジョンシムは(あっ)とクムスンを見た。
 クムスンの表情は固まってしまった。
 ピルトもテワンもシラけた顔になる。
 ジョンシムは弁解する。
「間違ってはないでしょ。みんなが普通に望むことだもの。そうでしょう?」
 クムスンに訊ねる。
「ええ、その通りです」
 クムスンは笑顔を返す。しかし、胸中は複雑だった。
 ピルトが学歴や出身を確かめようとしたら、テワンが説明を始める。
「出身は大邱(テグ)で平凡な家庭らしく、父親は航行の校長を退職したってさ」
「教育者の家庭だったらいいわよ」
 家族のやりとりを聞いているうち、クムスンは自分が疎外されていくような寂しさを味わった。次第にいたたまれなくなり、席を立ち、離れた。

 フィソンのやってくる時間が遅れるにつれ、ジョムスンとスンジャの関係は険悪になりだす。いつものことだが、スンジャは仕事を失ったから余計だった。
 顔を出した時、クムスンはまずスンジャに詫びることから始めねばならない。
「早く帰ったらいいわ」とスンジャ。
 腰を怪我したクムスンはフィソンを歩かせて帰ろうとする。
 しかし、それを知らないジョムスンはおぶって帰れという。
 結局、クムスンは腰の怪我がジョムスンにバレてしまった。
 ジョムスンがフィソンを背負い、家まで送ってくれることになった。
「いい気分だわ。おばあちゃんと二人で歩くのは久しぶりね」
「ひどい怪我をして何がいい気分なのよ。誰にやられたの。どんな性悪にやられたのよ」
「・・・転んで」
「転んでそんな傷はできない! ごまかしてもムダよ」
「大丈夫よ。トイレに閉じ込めて水をかけてやったんだから」
「・・・」
「美容院の先輩が、なぜか私ばかりをイジめるの」
「何てひどい人なの!」
 ジョムスンは自分のことのように腹を立てる。
 クムスンはジョムスンをなだめる。
「だから、水をかけてやったんだって」
「何いうの! 水は乾けばすむけど、傷は1ヵ月治らないよ。・・・どんな人なの? 明日駆けつけて吠え面ひっかいてやるから教えなさい」
 クムスンは祖母の愛情にただただ笑うばかりだった。
「何が可笑しいの?」
「おばあちゃんに叱られてるとすごく気持ちがいい。おばあちゃんの思いで胸がいっぱいになって、明日も元気で生きられそうよ」
 ジョムスンはクムスンを心配そうに見る。
「私は校長の父親なんかより、おばあちゃんの方がいい」
「何のことよ?」
「何でもない。家についたし、フィソンを抱いていくわ」

 そんな二人を車の中からじっと観察しているのはキジョンだった。
「さあ、家についたよ、フィソン。・・・おじいちゃん、おばあちゃん、フィソンが今帰りましたよ」
 車からおりたキジョンはクムスンの家の前に立った。



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