雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ ファンタスティック・カップル 第13話(7)



「どうして泣いてるの?」
 女性から声がかかった。
 てっきりアンナが声かけてきたのだと思った。
「玉ねぎのせいで…」
 振り向くと意外な顔がある。ビリーはびっくり仰天、悲鳴とともに縮み上がった。 
「何で君がこんなとこに?」
 キツネにつままれたようにアンナを見る。アンナは説明する。
「前に会ったことあるでしょ。カンジャよ」
「お姉さん」カンジャは声はずませた。「私、この人と仲良しなの。一緒に鬼ごっこや駆けっこをしたわ」
 ビリーはうろたえる。しかし、風変わりで無邪気な女の言葉を否定するわけにいかない。
「あっはははは」
 ビリーは乾いた笑い声を響かせる。
「冗談でしょ? お二人の方がずっと仲良しだ」
「友達じゃないわよ」
 アンナはさらっと答える。
「違うわ」
 カンジャは駆け寄ってアンナの腕を取る。ビリーのそばに引っ張ってくる。
「お姉さんと私は友達。おじさんとお姉さんは…」
 ビリーは目を剥き、口もとを震わせる。座っていられず立ち上がる。
「ワワワワーッ! ジャージャー麺が伸びそうだ」
 叫んで火の元に駆け寄る。鍋を素手で握って放り出す。
「あっ、熱い! アッチィチッチーッ!」
 熱さに痺れた手を振り回しその辺を飛び回る。気がふれたように動き回る。
「アッチィチッチーッ!」
 アンナとカンジャはあっけに取られる。
「おじさんが踊ってるわ」
 カンジャ。
「熱いからよ」
 とアンナ。
「大丈夫?」
 ビリーは流しで手を濡らした。
「大丈夫です」
 上着を脱ぎ始める。
 そこに携帯が鳴った。
 アンナは携帯を取り出す。
「チョルス、私よ」
 チョルスからアンナへの電話にビリーはピクンと反応する。厳しい顔に豹変する。この時、二つ折りした上着から指輪が落ちる。
「携帯が見つかったのよ。何よ。私に話があるの?」
 アンナは訊ねる。
 チョルスは仕事の現場だった。
「携帯を探すためにかけただけだ。出てきたならそれでいい。切るよ」
 通信があっけなく途絶えてアンナは気分を悪くする。
「さっさと切れた。何よ、失礼ね」

 ビリーはアンナに申し出た。
「ジャージャー麺、私が作り直しましょうか?」
「ジャージャー麺、もうないわ」
 ビリーは封の切れてない袋を指差す。
「そこにあるじゃないですか」
「あなたの分はひっくり返したでしょ。その分はもうないの。過ぎてしまったことよ。お帰りください」
「…」
 ビリーはうなだれ、チョルスの家を出た。しょぼくれた足取りで引き揚げて行った。



script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script>  google-site-verification: google3493cdb
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「韓国ドラマ「ファンタスティックカップル」」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事