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「どうして泣いてるの?」
女性から声がかかった。
てっきりアンナが声かけてきたのだと思った。
「玉ねぎのせいで…」
振り向くと意外な顔がある。ビリーはびっくり仰天、悲鳴とともに縮み上がった。
「何で君がこんなとこに?」
キツネにつままれたようにアンナを見る。アンナは説明する。
「前に会ったことあるでしょ。カンジャよ」
「お姉さん」カンジャは声はずませた。「私、この人と仲良しなの。一緒に鬼ごっこや駆けっこをしたわ」
ビリーはうろたえる。しかし、風変わりで無邪気な女の言葉を否定するわけにいかない。
「あっはははは」
ビリーは乾いた笑い声を響かせる。
「冗談でしょ? お二人の方がずっと仲良しだ」
「友達じゃないわよ」
アンナはさらっと答える。
「違うわ」
カンジャは駆け寄ってアンナの腕を取る。ビリーのそばに引っ張ってくる。
「お姉さんと私は友達。おじさんとお姉さんは…」
ビリーは目を剥き、口もとを震わせる。座っていられず立ち上がる。
「ワワワワーッ! ジャージャー麺が伸びそうだ」
叫んで火の元に駆け寄る。鍋を素手で握って放り出す。
「あっ、熱い! アッチィチッチーッ!」
熱さに痺れた手を振り回しその辺を飛び回る。気がふれたように動き回る。
「アッチィチッチーッ!」
アンナとカンジャはあっけに取られる。
「おじさんが踊ってるわ」
カンジャ。
「熱いからよ」
とアンナ。
「大丈夫?」
ビリーは流しで手を濡らした。
「大丈夫です」
上着を脱ぎ始める。
そこに携帯が鳴った。
アンナは携帯を取り出す。
「チョルス、私よ」
チョルスからアンナへの電話にビリーはピクンと反応する。厳しい顔に豹変する。この時、二つ折りした上着から指輪が落ちる。
「携帯が見つかったのよ。何よ。私に話があるの?」
アンナは訊ねる。
チョルスは仕事の現場だった。
「携帯を探すためにかけただけだ。出てきたならそれでいい。切るよ」
通信があっけなく途絶えてアンナは気分を悪くする。
「さっさと切れた。何よ、失礼ね」
ビリーはアンナに申し出た。
「ジャージャー麺、私が作り直しましょうか?」
「ジャージャー麺、もうないわ」
ビリーは封の切れてない袋を指差す。
「そこにあるじゃないですか」
「あなたの分はひっくり返したでしょ。その分はもうないの。過ぎてしまったことよ。お帰りください」
「…」
ビリーはうなだれ、チョルスの家を出た。しょぼくれた足取りで引き揚げて行った。
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