雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載63)





韓国ドラマ「30だけど17です」(連載63)


「30だけど17です」第7話(内職に励む)⑤


☆主なキャスト&登場人物


○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)



★★★


 ソリはここに来る途中の”メイク体験”のキャンペーンを思い出した。
    
― ”果汁パンパン”をどうぞお試しください、というのを…。 


「それを試して、頬は”果汁パンパン”、唇は”美少女プンプン”になりました…若く見られたかったので」
 ウジンは呆れた。
「どこがパンパンで、プンプンなのやら…」
 ソリは頬に手をやった。
「少し塗り過ぎちゃったかな…」
「…」
「演奏会では叔母やプロ任せで、自分では初めてだったから」
 ソリは照れくさそうにした。
「そうじゃなくて、こんな状況の時に化粧なんかするから―誤解を招いてしまうんだ」
 ソリはウジンの言ってることがにわかには呑み込めない。
「誤解って何のこと?」
 ソリはさっきの男たちのいる店の看板を目にした。
「まさか、私があの店に入ったと思ったんですか?」
 かえって藪蛇だ。今度はこっちが恥ずかしくなる番だ。
 ウジンは何も答えず先に歩き出す。
「待っておじさん」
 ソリは叫んだ。
「靴が脱げてます」
 拾ってウジンの後を追う。
 
★★★


 靴が脱げたまま行こうとするウジンの前でソリは拾った靴を差し出す。ウジンが靴に足を出したら、ソリは舌打ちする。
「もう、ガムをふんじゃったわ」
 ウジンは”しまった”顔をする。
「大丈夫」とソリ。「靴下があります」
 急いで靴下を取り出す。
「でも〜、これは無理ですよね」
 女性用のレースをほどこした靴下だ。
「いや」とウジン。「はかないよりマシだし誰も見やしない」
 ウジンは足首にほぐれた靴下をはいて歩きだす。だが道行く女性らは目ざとくそれを見つけてジロジロ見た。笑いだす者もいる。
 さすがにウジンもそんな人の目はこたえた。
 ソリは弁解気味に言った。
「レースの曲がった不良品を一足くれたんです」
「…」
「人が見てます…変な人だと思ってるかも」
 ウジンは意地を張って言った。
「自分は別にかまいません」
 しかし、ソリは心配する。
「正気じゃない人を見るような感じですよ」
「いいんです。それでもかまいません」
「でも―」
 ソリは同調した。
「確かにおじさんは―ウンコ漏らしと思われても構わない人ですもんね」
「…」
 ウジンは時化た顔を周囲に向ける。
「そうだ―、おじさんは意外に声が大きいんですね」
 ウジンは咳払いして足を速める。
 ソリはすぐ追いつく。
「私が化粧して―あんな店で働くと誤解したんですか?」
 ウジンは足を止めた。いきなり左手首に目をやる。
「今、何時だろう…?」
 触れられたくない話を遮断したかったらしい。
 ソリはウジンの腕を覗き込んだ。
「腕時計、忘れて来たみたいですね」
 何も答えないでウジンは先に歩き出す。
 ウジンは小走りに追いつく。
「つまり…、私のことが心配で店に乗り込んだ。違います?」
 図星を指されてウジンは渋い表情になる。
「それで結局、両脇を抱えられ、あの人たちに引きずり出されたんでしょ?」
 ソリは顔を突き出した。
「でしょ?」
 ウジンは咳払いして先を急ぐ。
 ソリはウジンにまつわりつきながら追いかける。問いかける。
「ねえ、そうだったんでしょ? 答えてください。でしょ?」
 2度3度と顔を突き出す。
「でしょ?」
 
 来る大会に備えてチャンたちの厳しい特訓は続く。
 さらに調子が出てきた頃、チャンの手からオールが離れた。後ろからドクスが喝を入れた。
「チャン、何してるんだ。しっかりしろ!」
「このへんがかゆいんだ」 
 チャンは胸を押え、意味不明な返事をする。
「あん?」
「虫が入ったかな」
 練習を終えてドクスはチャンの水着の中を見て言った。
「不潔にして、ノミが繁殖してかゆいんだ」
「そうなのか…」とヘボム。
「ノミなもんか…」とチャン。「乾燥してもかゆい」
 ヘボムはバッグから何か取り出した。
「保湿力がすばらしい新商品だ」
 ヘボムはフタを取った。
「どうだ、俺が塗ってやろうか」
 チャンは両腕で胸を押えた。
「何を言ってるんだ」
 ヘボムの手を振り払う。するとそのクリームはドクスの頬についた。 
 チャンは1人で不思議そうに水着の中を覗き込んだ。
 顔を上げてつぶやく。
「ああ〜あ、虫もいないのに胸がチクチクする」


 公園の小道でソリは訊ねた。
「いつから知っていたんですか?」
「何を?」
「私の名前です。一度も呼ばないから、知らないのかと」
「…」
「心配してくれて感謝します」
「別に心配なんか…」
「いくら切羽詰まっても、時間がかかっても…地道に稼いでバイオリンを直します」
 ウジンはソリを見た。
「後ろめたいお金で直すことはありません」
 ウジンは苦笑いする。その意気に好感を覚える。
「というか…私が言いたいのは―心配しないでくださいってことです」
 頷きつつ、ウジンはソリを見た。
「同年代なのになぜ”おじさん”と呼ぶの?」
「だって、おじさんは担任の先生と同い年…」
 ソリはそこまでで話すのを中断した。
「そうだった。私はもう30歳だった」
 つぶやきながら遠くに目をやった。「あっ」と叫んで駆けだした。
 すぐ前は噴水広場だった。
 ウジンもソリの後を追った。
 噴水の前で立ち止まる。下を見ると”飲料水”と書かれたパネルが路面に張りつけられている。
 ソリは噴水を指さした。
「この水、飲めるんですって」
 ウジンは噴水に目をやった。
「わあ、噴水の水が飲めるなんて―」
 ソリは感激した。
「世の中、変わったのね」
「あれは飲み水じゃないみたいだけど」
 ソリはウジンを見た。
「どうして? ここに”飲料水”と書いてあります」
 ソリは抱えた袋を置いて噴水に近づいた。
 ウジンは”飲料水”のパネルを見てつぶやく。
「違うと思うけどな…」
 その時はもうソリは噴水の水を飲み出している。
 ソリは気分よさそうにウジンを振り返った。
「おじさんも飲んでみて。冷たくておいしいわ」
 ウジンは頭に手をやる。
「やっぱり違う気がする」
 ソリを見て叫ぶ。
「飲まない方がいいよ」
「なぜ? おいしいですよ」
 噴水をもう一度口に含んでソリは異変に気付く。
「炭酸水かしら? 何だかピリッとするわね」
 ウジンは水を浴びて楽しそうにするソリが心配になりだす。

 そこへ公園管理の人がやってきた。路面に張り付けてあるように見えたパネルを拾い上げた。
「また外れてるじゃないか」
 そう言って飲料水の場所にパネルを戻して張りつけた。
 ウジンは叫んだ。
「だから、飲むなと言っただろ」
 ソリは口に含んだ水をドバーッと吐き出した。そうして泣きっ面になった。
 ウジンは大笑いした。
 この後、ソリはお腹を気にして歩いた。
「痛いようなかゆいような…」 
 内職の袋はウジンが背負っている。
「何だかお腹が」
「痛いの?」とウジン。
「お腹がすいたようです。キュルキュル鳴ってます」
 ウジンは笑った。
「あっ、靴下の袋は?」
 ウジンは戻ろうとするソリの手を掴んだ。袋を背負った姿を見せて前を歩いた。
 ソリは不思議そうにウジンについて歩いた。
「なぜ見てるんです?」
「間違いないわ」
「何が?」
「やっぱりおじさんはいい人に間違いないです」
「…」
「でも、少し変わってる」
「よく言われるよ」
「そうじゃなくて…いい人だってことをわざと隠そうとしてるみたい」
 ウジンは足を止めた。
「何ていうか…」
 今度はソリが前を歩く。
「心をギュっと奥に閉じ込めてる感じ…そう見えたりします」
 その時、ウジンの携帯が鳴った。
 ソリは振り返った。ベコリと頭を下げる。
「また勝手に解釈してごめんなさい」
「はい、コンです」
 パーキング管理のスタッフからだった。
「カフェの駐車場に車を置きっぱなしですよ」
「すぐに取りに戻ります」
 携帯を切り、ウジンは言った。
「車を取りに戻ります。先に戻ってください」
「分かりました」
 ソリは内職の袋を受け取った。
 2人は背を向け合った。
 ウジンは立ち止まり、ソリを振り返った。


― いい人だってことをわざと隠そうとしてるみたい


 ソリの言葉が強く耳の奥にまつわってくるのを覚えていた。


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 ウジンが歩き出すと今度はソリがウジンを振り返った。
 ウジンは音の出ないイヤホーンを耳につけて歩いていく…。



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