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韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑦
韓国ドラマ「青い海の伝説」第13話⑥
★★★
モランは買い物の帰り、いつか息子らしき青年を見かけた場所で立ち止まった。辺りを気にしていると、後ろから走ってきたバイクがモランのバッグをかっさらって走り去ろうとする。
たまたまそれを見かけ、追いかけだした女がいる。エイトマンのようなスピードでオートバイを追いかけだす。モランはじめ、周囲にいた人はびっくりして足を止める。
オートバイは横合いに逃げ込んだが、オートバイの排気音はすぐに止まった。ボカスカ乱闘してる音がしばし聞こえ、やがて奪われたバッグを握ってセファが戻ってくる。
「はい、奪われたバッグ」
モランはありがたさより驚きの方が強かった。逃げるオートバイを走って追いかけ、捕まえる人間なんて見たことも聞いたこともないからだった。
「いったいどうやって…!」
セファはバッグをモランの手に戻した。辺りに散らばった食物などを拾い集め、袋に入れる。最後は携帯を拾ってあげた。
モランは驚きと困惑を抑えきれない。
「お礼をしたいんだけど…お名前など」
「要らないわ。気をつけてね。バイバイ」
「バイバイ…」
女の立ち去る速さにモランはまたも驚いた。
オートバイで逃げようとした泥棒はベルトで電柱に括り付けられていた。
「あの野郎、何てバカ力の女なんだ」
買い物に行かせたモランが戻って来るのをシアは車で待っていた。バックミラーで確かめ外に出る。待たされて苛立っている。
「おばさん、10分の遅刻ですよ。時間は守って下さいな」
「すみません。ひったくりに遭ってしまったもんで…」
モランはシアに続いて石段を下りる。インターホンを押す。
「誰の家なんです?」
「私の恋人…になる人の家です」
「…」
「彼はおばさんの料理を気に入ってます」
シアはもう一度インターホンを押す。
「いないのかしら…?」
モランは豪華な建物を下から見上げた。
ドアが開き、シアに続いてモランも中へ入ってくる。
中を見た瞬間、モランは目を見開いた。
★★★
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そこには先ほど自分をひったくりから救った女がいたからだ。
「あなたの家だったの?」
「ええ、まあ…」セファはシアを見た。「シアのお母さんですか?」
シアは顔をしかめる。
「お母さんじゃなくて、うちのお手伝いさんなの」シアはモランを見る。「知り合いなんですか?」
「ひったくりからカバンを奪い返してくれたんです」
モランは嬉しそうにセファを見る。
セファは笑顔を返し、重そうに持ってる買い物袋をさっと自分の手にする。
「さすがのバカ力ね」
シアの皮肉に「そうね」と鼻先で挨拶を返し、背を向ける。
「あ、私がやるわ」慌ててモランが追いかける。
シアはセファらを目で追いかける。
「ほんと目ざわりな人(女)…!」
思い直したシアはジュンジェがいるかが気になる。彼の部屋に向かう。
「さすがジュンジェね。キレイな部屋だわ」
書棚などを眺め、天井裏の小口ドアと梯子を見つけて目を止める。
「あそこがあの女の部屋?」
ムカついてメタル製の梯子を蹴る。下がってベッドの縁に腰をおろす。メモを取り出す。
そこには「頼まれてたタムリョン関連の資料よ。やっぱり彼とあなたは似てると思う」と書き込んである。
棚の上に置かれた小さな額縁写真が目に留まる。子供と母親らしき女性とのツーショット写真だ。
「お母さんかしら…」
微笑ましさを覚えながら出て行こうとして、ふと足が止まった。何か見たことある写真に思えたからだ。
モランの部屋で見たのは父親らしき男性もまざっていたが、女性と子供の顔は…まさか!?
シアは額縁の前に歩み寄る。額縁を掴み上げる。写真をじっと見つめる。
モランの部屋で見た二人と何か似ている…シアは膨れ上がる不安を必死に打ち消した。
「そんなはずない、他人のそら似よ、きっと…!」
しかし、年頃も顔立ちもそっくりに思え、シアの表情は絶望的な予感に包まれだしてくる…。
シアはそれでも否定する。
「子供の顔って見分けもつきづらいし…」
自分に言い聞かせながら懸命に否定した。
だが、見つめれば見つめるほどあの写真の二人と同一人物に思え、早く確認したい焦燥に駆られた。
ジュンジェはホン刑事らとマ・デヨンの足取りを車で追い続けている。
「マ・デヨンには確か通院歴があったよな」
「ああ」
「何科だ?」
「精神科だ。妄想性障害と躁うつ病の治療を受け―暴力的な衝動を抑える薬を処方されてた…」
「だったら今もその薬がいるんじゃないのか? トラブルのストレスを軽減するために…」
「そうかもしれないな」
「医者の中にヤツへの協力者がいるかも」
「あんな殺人犯に協力する医者が?」とホン刑事の相棒。
「可能性はある。調べるに越したことはない」
「分かった。調べてみよう」とホン刑事。
「その先で止めてくれ」
ジュンジェは車をおりて手を振った。
歩き去るジュンジェを見送ってからホン刑事の相棒はぼやいた。
「まるで上司を相手にしてる気分だ。どうしてあいつに従うんです?」
「振りをしてるんだ。マ・デヨンを捕まえるためにな」
「そうですか…俺にはなぜか仲がよさそうに見えるんですが」
「…」
セファと仲良さそうにしてるモランを見ていると、シアの不安はどんどん膨らんできた。
写真のことが気になってならず、ジュンジェの子供の頃についてシアはナムドゥにいろいろと聞いた。
「ジュンジェのお母さんだけど、どんな人だった?」
「10歳の時に生き別れたことしか俺は知らない。母親はいくら探しても今まで見つからないで来てる」
「見つけてあげたいわ」
「会えたら絶対仲良くなれるのに…」
もしもあの人が母親だったら、今まであまりに邪険にして来過ぎた。
今までの好意的な言葉の数々はすべて無に帰してしまいそうだ。
この人がジュンジェの母親だったら自分はどうしたらいいのだろう…。
セファと親しそうに話をするモランを観察しながら、シアは深い後悔と絶望にさいなまれだしていた。