アンナは切り出した。
「そう言うなら薬を買って。私も早く記憶を取り戻したいから」
ユギョンはアンナを薬局に連れて行った。薬を買ってやり店を出た。
「それは記憶力を高める”聡明湯”よ。毎日、欠かさないで飲んで。そうして早く記憶を取り戻し、早く元の場所へ帰って」
あの家の厄介者のように言った。
「私、帰るなんて言ったかしら?」
アンナはつんとした顔をユギョンに向けた。
「…」
「花束女。私を怒らせないで。また怒らせたら…”記憶が戻らない”と言って、一生彼と暮らすよ」
「…!」
「おとなしくしてた方が身のためよ」
吐き捨てるように言ってさっさと歩き去った。
皮肉でやり返されてユギョンは唇を噛んだ。アンナの後姿を憎悪の表情で睨みつけた。
サプリを飲んで歩きながら、アンナは今しがたのユギョンの態度を思い起こしていた。
「花束女のやつ、自信満々のようね。いいわ。こっちは早く記憶を戻して出ていくだけよ」
舌打ちする。
「もう弱気にはならないわ」
ストローを口に入れ直した時、ふと人の気配を感じた。
見ると落ち葉の散り敷かれた道端にカンジャがじっとしゃがみこんでいる。
声をかける。
「カンジャ、どうしたの?」
「雪が降らないせいか、ちっとも元気が出ないの」
「…? 誰かにいじめられて落ち込んでるの?」
カンジャは顔を上げた。黙っている。
アンナはカンジャのそばにしゃがみこんだ。紙ケースの中から薬をひと袋取り出した。
「頭にいい薬よ。あんたも飲んだらいい」
カンジャはアンナを見た。目を落とした。
「私…頭は大丈夫だけど」
顔を上げた。アンナをじっと見つめなおす。
「いいから飲んで」
アンナはサプリのストローを口にくわえ、遠くを見る。
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