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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(48)





韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(48)


 ジェヒはテワンを見て訊ねた。
「美容院で会った従兄だろ。違うか?」
 クムスンは困った。うろたえ、答えられないでいる。
 テワンは車に乗ってるのが誰か気付いた。顔をしかめ、近づいてくる。
 クムスンは言った。
「ここでおります。開けてください」
 ドアが開き、クムスンが車からおりてくる。
 ジェヒも運転席から外に出た。
「今、お帰りですか?」
 クムスンはテワンに訊ねる。
 ジェヒはテワンに愛想よく頭を下げた。
「また会いましたね」
 テワンはむっとした顔で無言だ。
 横でクムスンが説明した。
「美容院で院長の息子さんだと」
「わかってる。こんにちは」
 ジェヒはニコニコして言った。
「従兄とは知らず失礼しました」
「ええ。失礼だったと気付いたんですね」
「…」
「今後も…」
 クムスンは何を言い出すかとビクビクし、テワンの顔色をうかがっている。
「従妹への言葉遣いには注意してください」
「…」
「何してる。行くぞ」
 テワンはジェヒに頭を下げた。
「では」
 クムスンも頭を下げて言った。
「今日はありがとうございました。では」
「いいんだ―ですよ。それじゃ」
 クムスンが丁重に挨拶を返そうとすると、テワンはクムスンの手を取ってさっさと歩き出す。
 ジェヒを気にかけながら、クムスンはついていく。

 ジェヒには二人を見ていて、キツネにでもつままれた気分だった。

 テワンはクムスンの腕を取り、強引に引っ張って歩いた。
「ちょっとお義兄さん、腕が痛いですって!」
 テワンはクムスンの腕を離して言った。
「従兄って何だ?」
「美容院に事実を言えないんですよ」
「それに、誰の車にでも簡単に乗るのか」
「そうじゃないんです」
 クムスンはもどかしそうに答える。
「今日が初めてですし~、いや、初めてじゃないか―病院から駅まで送ってもらったこともあります。2回目ですし、彼には貸しがあるから――乗せてもらったんです」
「貸し? 貸しって何だ?」
「…」
「何だと聞いてるんだ」
「話すと長くなりますけど…過ちを見逃してあげたんです」
「どういう意味だ」
「なぜ怒るんですか」
「どうしてそうふわふわしてるんだ。貸しがあろうと男の車には気楽に乗るもんじゃないだろ」
 クムスンは横を向いた。理解してもらえそうにないからだった。
「それに、男が理由なく優しくなんかすると思うか? 下心があるからだ」
「お義兄さんとは違います」
「何だと?」
「馬鹿なことで疑うからです。私にはその気なんてありません」
「…」
「ただ、貸しがあるから乗っただけです。しかも彼は医師で院長の息子だから――金持ちなんですよ。そんな人が私に興味を持つとでも? ありえません」
「…」
「人が聞いたら笑いますよ。帰りましょう」
 クムスンは先に立って歩き出す。
 その背に向かってテワンは叫ぶ。
「弟の立場は?」
 クムスンは足を止める。振り返る。
「医師だから――興味を持たないと? ならジョンワンは?」
「そういう意味じゃなく…」
「じゃあ、どういう意味だ?」
 クムスンは説明に窮する。
 テワンはクムスンのそばを歩きぬけていく。

 
「悪いわね。私だけが飲んで」
「お気兼ねなく」
 オ・ミジャの言葉にヨンオクは首を振る。
 ヨンオクは言った。
「娘とジェヒさんが結婚を考えているようですが――ご存知でしたか?」
「あら、そうなんですか?」
「…」
「息子は私に何も話さないものだから」
「交際して長いでしょう。そろそろ結婚をと思ってたら、そんな雰囲気なので――院長はウンジュのことをどうお考えかと思って」
「それでしたら」ミジャはコーヒーカップを置いた。「本人同士がよければ喜んで賛成しますよ。長い付き合いですしね。一日も早く嫁に来てもらい――この広い家で同居するのが夢なんです」
 ヨンオクは頷く。
「でも、息子からは何も聞いていないんですけど」
「私も聞いたばかりです」
「そうでしたか。私も聞いてみます。ところで・・・娘さんを見てると怒りやすいところがあり――我慢すべき言葉も口にしちゃったりしますね。子育てしながら、苦労されたでしょ」
「でもありません。自己主張する娘ですが――口だけで心は弱いんです」
「まあ、後妻としては肯定できませんよね」
 ミジャはため息をついた。
「前妻の子を育てるなんて苦労すると思うわ。ずいぶん胸を痛めてきたはず」
 ヨンオクは下を向いた。
「ご主人には言いづらいでしょうし」
 ヨンオクは横を向く。その先を聞きたくなさそうにする。
 しかし、ミジャは続ける。
「お客さんの中にも――同じような方がいらっしゃるんです。私から見ても立派な方で、誰からも一目置かれる存在ですが――50歳の時、胃がんの末期だとわかったの。あなたの腎臓病も同じ理由だと思いますよ」
「…」
「いえ、変な話じゃないんです。あなたが哀れに思えるし――理解できるという意味です」
 ヨンオクは顔をあげた。
「院長、娘はとても優しいんです。私の腎臓は昔から悪いですし」
「そうですか。それはもう、本人同士がよければ私は賛成します」
「娘を評価していただき、ありがとうございます」

 テワンは先に家に着き、クムスンが来るのを待っている。
「教えてやろうか」
「…」
「俺たち兄弟は面食いだ。中でもジョンワンがな。だから気をつけろ。わかるな」
「…」
「行くぞ」
 テワンは玄関に立った。
「早くしろ。鍵がないんだ」

 明日、シワンの恋人に会う。
 ピルトとジョンシムがシワンの恋人とクムスンの話をしていたら、玄関からクムスンの声がした。
 フィソンを除く5人で夕食になった。
 明日こちらから出向く人数についてジョンシムはシワンに訊ねた。
「テワンもクムスンも出席すべきかしら?」
 驚いてテワンは言った。
「俺たちはいいよ。2人で行ってきて」
 シワンも同調した。
「そうだね。2人だけにして。ソンランは一人で来るから」
 ピルトはクムスンに、一緒に行くか、と訊ねた。
「私はいいです」
「なぜだ。シワンの彼女と会いたいと言ってただろ」
 クムスンは困ってしまう。
 しかし、行くなら全員、とジョンシムが言い出し、テワンが、約束があってダメだ、と拒むと、じゃあ、2人で行きましょう、とジョンシムはピルトを見て言った。

 ソンランのもとにシワンからメッセージが入った。
「ソンラン――お前がどんなに不安かよくわかる。俺も不安で怖いよ。だが俺は30年間、両親に忠実に生きてきた。残りの人生はお前の夫として生きたい。愛してる。明日会おう」

 ジェヒはウンジュの待つ店にやってきた。
「怖いな。そうにらむなよ」
「なぜ携帯をオフに?」
「言ったろ。話し中だった」
「誰と?」
「そこまで知りたいのか。面倒な女だな」
「・・・いいわ。でも約束して。もうオフにしないと」
「わかった」
 ウエイトレスが現れる。ジェヒはコーヒー、ウンジュはアイスコーヒーを注文する。
 コーヒーとアイスコーヒーが運ばれてくる。
「考えてみた?」
「考えたさ。でも――まだ誰とも結婚する気はない」
「なぜ交際を?」
「それはお前が頼み込んだからじゃないか」
「本当? それだけが理由?」
「そうだ」
「そう。なら次は結婚して」
「…」
「ジェヒさんが私の頼みを聞くのなら、今度は結婚してよ」
「…」
「いつにする? 私は早い方がいいわ。来月はどう?」
「怒るな。今、結婚する気はない」
「だったら、いつしたいの?」
「さあ―正直言ってわからない」
 ウンジュは考え込んだ。
「いいわ。それじゃその時まで待つことにする」

 店の表でウンジュはジェヒと別れた。ジェヒは送ってやると言ったが、断って歩き出したウンジュは目からいっぱい涙を溢れさせた。
 ジェヒの前ではいつも強気で振舞いたいウンジュなのだった。

 スンジェはキジョンからもらった果物のせいでゴキゲンだった。
 一緒になってゴキゲンのジョムスンと話をしているうち、スンジャは気になることを思い出した。
 スンジャの解釈はこうだった。先生の奥さんは大病を患っている。そのせいでクムスンに親切心を起こしているんじゃないか、というのだった。
 これにはさすがにジョムスンも怒った。
 そこへクマが帰ってきた。
 今度はクマの進路をめぐって母娘で口論となった。
 クマにむけて手をあげたスンジャの手をジョムスンは必死に制した。

 息子と夕食を取る時、ミジャはジェヒに訊ねた。
「ウンジュとはどうする気なの?」
「何を?」
「何をって、ウンジュとの結婚の話をしてるのよ」
「その話か」
「ごまかさないできちんと話しなさい。ウンジュから結婚を迫られたでしょ。何と答えたの?」
「俺は結婚する気がないんだよ」
「どうして? ウンジュと交際したのは好きだからでしょ。だから結婚話も出たんだし」
「電話だ。―はい、ク・ジェヒです」
 ジェヒは立ち上がった。
「はい、先生」
「どこにいる? そうか、俺も家にいる。昼食を一緒にしたいんだが、時間はあるか? そうか。なら12時に俺の部屋に来てくれ」

 
 シワンにピルトとジョンシムの三人は、ソンランとの顔合わせのため出かけていった。
 家に残ったクムスンとテワンはソンランについてあれこれ話した。テワンは、あの女は只者じゃない、と言い、クムスンは、強い女だ、と評した。

 ソンランは先に来て待っていた。
「来てたのね」とジョンシム。
 ソンランは立ち上がった。
「はい。少し前に着きました。こんにちは。お父様も」
「ああ、早かったね」
「正式に挨拶させていただきます」ソンランは頭を下げた。「ハ・ソンランと申します」
「先日、お顔は拝見したけど、再会できてうれしい」
「恐縮です。私も同感です。それから、どうぞ敬語は使わないでください」
 四人は着席した。
「いただきましょう」
 会食が始まった。
「中華料理はお好き?」
「お母様…」
「敬語はやめろ」
「あら、そうだった。クムスンの時とは違うわね。好き?」
「何でも食べます」
「いいことだわ」
「雑誌に載ってたと思うが、ご両親は健在で?」
「はい」
「実家は?」
「両親は大邱に住んでいます」
「教職でいらしたわね」
「父は高校の校長を務め、昨年、退職しました」
「まだ慣れてないだろうね」
「最初は大変でしたが、慣れたようです。最近は母と登山や旅行をしてます」
「いいね。何か趣味を見つけるべきだ。最初は大変なはず」
「兄弟は?」
「私は長女なのですが、妹がいます」
「何歳差?」
「3歳です」
「母さん」シワンが口をはさんだ。
「彼女が大変じゃないか」とピルト。「まだ、箸も持ってない」
 ジョンシムは笑う。
「食べながら話そう」
「たくさん食べて」とシワン。
「見せ付けちゃって」とジョンシム。
 照れる二人。
「妹さんは何を?」
「もう質問してる」
 笑い声。
「妹さんと同居を?」
「妹は結婚してます」
「結婚した? お姉さんより先に?」
 ソンランははっとなった。
「最近はあまり気にしないものね」
 ジョンシムは理解を見せるが、ソンランの緊張はもうほぐれない。
「そうだな。3歳差なら適齢期だからな。結婚の遅いお姉さんが悪い」
 ソンランはお茶を口に運んだ。
「何をまた~、遅かったおかげでシワンと出会えたんでしょ」とジョンシム。
「そうかもな」
 料理が運ばれてきた。
「あ、もう次の料理がきた。早く食べて。もう質問を浴びせるな」
「自分も聞いたくせに―おいしいわ。ほら、食べて」
 ソンランは食べ物に手を伸ばした。口に運んだ。
 ピルトたちのくつろいだ言葉は真綿のようにソンランの心を締め付けてくるのだった。 






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