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韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑦
韓国ドラマ「青い海の伝説」第14話⑥
★★★
部屋から出てきたモ・ユランはジンジュのところへ急いでやってきた。
「シアさんの様子がいつもと違うんですけど…」
「そうなの?」
「ええ。言動が突拍子もないんです」
「…それっていつものことでしょ」
ジンジュは携帯に目線を戻す。電話を入れる。
モ・ユランは釈然としない様子で引き下がろうとする。
呼び出しは長く続く。
「カン・ソヒったらまた無視するつもりね…! 呆れるわ」
引き下がりかけたモ・ユランがジンジュの前に戻ってくる。腰をおろした。
「もしかして…」
「えっ?」
「その家の息子さんですが…」
「息子?」
ジンジュは携帯をテーブルに置いた。腕を組んだ。
「実の息子のこと?」
「はい。そのことで何かご存じですか?」
「おばさんがそれをどうして気にするの?」
モ・ユランは目を落とした。自分の事情を口にするわけにいかない。
「何となく…」
「ホ会長のしごとを代行してるのは…あの女が連れてきた息子よ。実の息子は10年前に家出したきりなの」
モ・ユランの表情は険しくなる。
「家出ですって? 留学じゃなくて?」
「違うわよ」
ジンジュは含み笑いする。
「高校生の時に家出したって聞いたわ」
「…」
「いろいろ話は耳にしたけど、実の息子には財産も相続されないかも…気の毒な話だわ」
「…」
「ホ会長はいったい何を考えてるのかしら。不倫相手の息子だけ可愛がるなんて…」
モ・ユランの目は次第に潤んでくる。
「そこまであの女にぞっこんなのかしらね、ほんとに…」
いうだけ吐き散らしてジンジュは飲み物を手にする。
ふと見ると目の前のモ・ユランは悲嘆に暮れている。
ジンジュはそれを訝しんで声をかけた。
「どうしたの?」
モ・ユランは顔をあげる。エプロンを外しながら言った。
「私、少しでかけてきます」
「出かけるって、そろそろ娘が帰ってくる時間よ。おやつの用意はどうするの?」
そこへ食事をすませたシアがリビングにおりてくる。モ・ユランの前に急いで歩み寄った。
「行ってください、おかっ…おばさん。おやつは私が用意します。塾にも私が送りますから」
ジンジュはシアのあまりの変わり様に目をしばたかせた。
モ・ユランは目を腫らしてその場を離れた。
その背に向かってジンジュは声を荒げた。
「おばさんったら、もうじき辞めるからって好き放題だわね!」
「やめてください!」
シアがジンジュの憎まれ口をとがめた。
「大事な用があるんですよ」
「…?」
「それに”おばさん”と呼ぶのはやめた方がいいわ」
ジンジュは呆れて言い返す。
「おばさんなのに、それをどう呼べばいいっていうの?」
「ほかにも呼び方はありますよ。たとえば”お母さん”とか」
「私はあの人を”お母さん”と呼ぶほど年は離れてないわ。”お母さん”って笑わせないでよ」
シアはうっとりした声になった。
「”お母さん”でいいと思うわ。一つ屋根の下で暮らして食事を作ってくれて洗濯もしてくれる…」
突然、シアは叫んだ。口に両手を持ってきた。
「私、下着の洗濯までさせてたなんて…」
ジンジュはシアを見て目を白黒させた。
今日のこの人…確かにどこか変だわね…?
「ああ、もう大失態だったわ!」
シアはテーブルを叩いて喚き、泣き出した。
★★★
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モ・ユランが急いで向かった先は元亭主のホ・イルジュンの邸宅だった。タクシーで降り立ったユランは屋敷を見上げた。
見上げていると旅行ケースひとつでここを去った日のことが蘇った。
一人静かに去ろうとした。だが、カン・ソヒが連れ子のチヒョンを連れて戻って来た時と鉢合わせした。
カン・ソヒはチヒョンを先に部屋に戻るよう促した。
「チヒョン、先に入ってなさい。お父さんにきちんと挨拶するのよ」
チヒョンは明るい声で返事して先に門を入っていった。
二人は向き合った。
「行くのね」
「…」
「顔を合わせたくなかったんだけど…」
「嬉しい?」
「そんな…申し訳ないわ」ソヒは言った。「こんなつもりじゃなかったの」
「そう…それを信じるわ。信じたいの。息子のことを託すんだもの…あなたがいい人であるのを願ってる」
「そう…彼からも聞いたと思うけど、成人後までジュンジェとは会わないでほしいの。新しい家族と生活に慣れさせないといけないから」
ソヒはモランに歩み寄った。両手でモランの手を取った。
「心配しないで…私の息子より大事に育てるから…」
そう言ってくれたのにジュンジェは大事な学校生活を投げ出してここを飛び出したという…。
モランは指を震わせながらインターホンを押した。
家政婦はモ・ユランの訪問をソヒに伝えた。部屋のモニターにユランの姿が映っている。
ソヒは鼻先で笑う。
「今さら何をしに来たっていうの…案内して」
ユランはリビングに通された。
「まあ、これは…何年振りかしら?」
「…」
「どうぞ、座って」
「…」
「何か飲む?」
口先の言葉は聞かず、ユランは立ったままシネを睨みつける。
「…席を外してちょうだい」
ソヒは家政婦を引き下がらせた。
「立ってないで座ったら?」
「ジュンジェはどこ?」
「…!」
「どこにいるの?」
「自分の息子なのに、どうして私に訊くのよ?」
「何ですって!」
「ここにいないと知って来たみたいね。だけど私に訊いてどうするの?」
ソヒはユランにシラっとした目を向ける。
彼女の態度にユランの表情は強張った。
「勝手に家出したのよ。私が追い出したんじゃないの」
「…」
「主人も捜さなかった。どんな家出だったか察しはつくでしょ? 何事かと思えば…」
「…」
「あの子はあなたとも連絡を取ってないみたいね…」
「大事に育ててくれるんじゃなかったの?」
ユランは声を震わせた。
「…家出されたら育てようもないわ」
手指の爪をもてあそびながらソヒは平然と答える。
「大事な人たちとの居場所を作ってあげるからあの子に会うなと言ったじゃない! あの子をこの家や私から奪うための口実だったの?」
ソヒはしたり顔をユランに向けた。立ち上がって腕を組んだ。
「笑わせないで! 自分ひとり善人ぶらないでよ。私に勝てないと諦めたくせに」
「…」
「私なら絶対に息子をおいて逃げたりはしない。本当に会わないなんて呆れた話だわ」
「なんですって?」
「悪いけどもう帰ってくれない? 相手してあげるのに疲れちゃった…」
「カン・ジヒョン! (あなたって人は…!)」
ユランは叫んだ。
ソヒの形相は変わった。対抗心むき出しの顔をユランに向けた。
「私の名前は…カン・ソヒよ」
「いいえ」目を潤ませながらも毅然とした声で言った。「あんたはカン・ジヒョンよ。息子を見つけて元いた場所に私が必ず戻すわ」
「…」
「あんたも元いた場所に戻してあげる」
ユランはそう言って背を返した。屋敷を出て行った。
ユランが姿を消すとソヒは携帯を手にした。電話をかけた。
「私だけど…仕事よ」
ジュンジェはあの女に家を追い出されていた…。
ユランは放心して帰路についている。おぼつかない足取りは知らず知らず通りの中央に向かわせてしまう。
後ろからやってきた車と接触しそうになったユランの身を寸前でかばったのはセファだった。