雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(59)





韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(59)


 クムスンとジェヒは食事を終えて店を出た。
 公園の中を歩いた。
「そこに座ろう」
 ジェヒはベンチを指差す。
 クムスンはそうゆっくり出来ない。家族に早く戻れと言われている。
 しかし、クムスンは言われた通りベンチに腰をおろす。
 ジェヒのことは次第に分かってきた。怒りっぽくてカッコをつけたりするけど、気さくで実直で悪い性格の人間じゃない。
 言われたことにいやいや従うわけでもなかった。
 二人はベンチに離れて座った。ジェヒはもじもじしてもう少し離れた。それがジェヒからクムスンへの実際的関係の距離だった。
 ズボンの裾をはらうジェヒにクムスンは切り出した。
「質問があるんですけどいいですか?」
「ああ、何だ? 話してみろ」
「あの・・・もしかして、私のことが好きなの?」
 ストレートに訊かれ、ジェヒは困った。が、切り返す。
「その話は2回目じゃないか」
 クムスンは苦笑する。
「そんなはずないと思うんだけど・・・もしやと思って」
 ジェヒをソッポを向いている。
「だけどおじさん・・・万が一にも、私を好きになってはダメですよ」
「どうして?」ジェヒは自分の気持ちを認めつつ訊ね返す。「好きな男でもいるの?」
 クムスンはジェヒに対する気持ちの変化に気づきだしている。渡ってはいけない橋に一歩を踏み出すような予感を覚えている。彼女は訴えるように同じ言葉を繰り返した。
「絶対に好きになったらダメですからね」
「心配するな」ジェヒはとっさに答えた。「俺も好きな女が別にいる」
 ほっとしたようにクムスンは訊ね返す。
「本当ですか?」
「そうだ」ジェヒは言い出しついでで意地を見せる。「そうでなくても、最近、そいつに振り回されて大変・・・」
 いきなりクムスンを向き直る。
「おい、女心ってどうしてああややこしく出来てるんだ?」
 クムスンは自分が念を押した言葉に照れた。
「あっ!」
 クムスンは左手を振り上げた。人差し指が誰かを指そうとする。
「もしかして副院長?」
「違うよ」ジェヒはさりげなく否定する。バレては困るとばかり大きい嘘に切り替える。「製薬会社の人だ」
 以前ならそれ以上聞きはしなかったろう。だがクムスンも相手への興味が湧いている。
「会ってどのくらい?」
「・・・数ヶ月経つが――」脚色まで始まった。「何を考えてるかさっぱり分からない女だ」
「・・・」
「質問しても答えなかったりするしな」
 クムスンを見る。クムスンは得心のいく表情をする。
「ああ・・・本性を隠してるのね」
「それが、そうでもなさそうなんだ。性格も変わってるし――つまり・・・俺の気を引く作戦らしい。一種の・・・神秘主義戦略?」
 クムスンは首をかしげ理解不能の顔になる。
「どんな薬の販売?」
 もう、行くとこまで行けだ。ジェヒはある日のクムスンを思い出しながら答える。
「主に・・・頭に関連した薬を扱ってる」
「年は?」
「23」と即答えたが、それはヤバイとばかり、「4・・・5・・・くらいかな?」と語尾を濁す。
 視聴者は大人から子供まで相手は誰か気付いたが、クムスンだけが気付かない。
「まだ年も知らないの?」
「相手は神秘主義なんだよ」
「でも、年齢まで神秘主義はいくら何でもひどいわ。その女性、あなたに関心がないのでは?」
 ジェヒは不機嫌そうにクムスンをにらみ返す。
 クムスンは愛想笑いする。
「冗談ですよ。そう落ち込まないでください。きっとうまくいきますよ」
「・・・」
「先生は頭もよく、ハンサムだし、背も高いし高収入。何一つ欠けるところがない。その条件なら、女の人は誰でも喜ぶはずよ」
「それくらい分かってるよ」
 クムスンは呆れる。
「その性格さえ直せば完璧なのに・・・!」
「お前も人のこと言えないだろ」
「?」
「人の弱点を率直に非難するその性格もけっこうなもんだぞ」
 クムスンは拗ねた素振りを見せる。
「だから・・・性格の悪い者同士――仲良くしようじゃないか。お前もよく見れば、少しはかわいい」
「私も分かってるわ」
「・・・」
「でも、誰とでも仲良くはしないの」
「いい性格してるよ。偉そうなやつだ」
「・・・」
「俺は特別なんじゃないか。デジカメに掃除に送迎に飯まで・・・実の兄でもできないことだぞ」 
「虚偽の診断書もね」
「人の弱点ばかりつくんだな」
 クムスンはジェヒとのやりとりが楽しいようだ。
「分かったよ。時々、恋愛相談に乗れ」
「いいけど、役に立つ自信はないわ。それはお義兄・・・」
 あわてて言い換える。
「従兄の専門なんだけど」
「あの従兄か?」
「ええ」
 ふいに”早く帰れ”と言ったテワンの言葉が頭をよぎった。
「もう帰らなきゃいけないわ」
 クムスンは立ち上がった。
 送っていく、というジェヒを先に車に乗せ、笑顔で手を振りクムスンは駆け出して行った。
 そんなクムスンをバックミラーで見送り、大した進展でもなかったのに、胸がすっきりの笑顔でジェヒは車を発進させた。

 スンジャはジョムスンに”職場を辞めたい”と切り出した。
 あんないい職場をどうしてやめるんだ、とジョムスンは首をかしげた。理由を聞こうとしてもスンジャは答えない。
 仕事を辞めると生活が困るのはスンジャ自身が一番分かっている。話を曖昧にしたままスンジャは寝床で横になった。

 ヨンオクは起きてキジョンの書斎に行った。
 二人はこれまでのいろんな苦労話をした。ヨンオクはキジョンに感謝を伝えた。
 キジョンは透析を頑張ってくれと励ました。

 ミジャがジェヒの部屋に飛び込んでくる。掛け布団をひっぱがし、尻を叩いた。
 ミジャはヨンオクに惨めな思いをしたことで息子に腹を立てていた。強引に息子を問い詰めた。
「あなたが付き合ってる人は一体誰よ。答えなさい。誰なのよ?」
 その時、携帯が鳴った。ウンジュの携帯だった。
 彼女が忘れていったのを思い出してジェヒはウンジュに電話を入れた。

 ひと晩寝て、スンジャはやっぱり仕事に行くと決めたようである。それが多少の心境の変化も呼び起こしたようである。
 スンジャはクマに二週間の猶予期間を与えた。その間、ゆっくり休み、本も閉じて自分を考え直してみなさい。その期間が過ぎたら、もう一度話し合おう、とクマに言った。
 スンジャの考えは変わらないようだが、頭ごなしだけはなくなったようだ。

 ノ家にソンランと両親が訪問した。ピルト一家は3人を歓待した。
 両家顔合わせの儀式はつつがなく終わった。

 携帯を返すため、ジェヒはウンジュと会った。
 ウンジュは、泥酔し自分が吐き散らした言葉について口にした。
「あの日言ったこと、全部覚えてるわ」
「ウンジュ。俺は何も変わっていない。お前はかわいい妹で、友達なんだ」
 ウンジュは愛想笑いした。
「友達の方がマシだわ」
「・・・」
「これからも一緒に食事をしたりお酒を飲んだりしてくれる?」
「当然だろ」
「いつでも電話して――愚痴も聞いてくれる?」
「ああ」
 ウンジュは身を乗り出すようにする。
「時間がかかりそうだわ。まだ、私の心にジェヒさんが入り込んだままなの」
「・・・」
「だから元に戻るには――時間がまだかかりそう。頑張ってみるけど、耐えられそうにない時は――助けを求めるわ」
「・・・」
「その時は助けてね。食事やお茶を飲んだり・・・してくれる?」
 下を見たままジェヒは答える。
「ああ」
「ありがとう、ジェヒさん」
 そういうとウンジュの表情はみるみる悲しみに沈みだす。
 その顔が急にまた明るくなった。
「今度、彼女を紹介して。その人に会えば、気持ちの整理がつくかも。気になるしね。どんな子に心を奪われたのかって」
「そうだな」ジェヒは頷く。「いつかな。でも、まだ先の話だ。言っただろ。彼女は何も知らないんだ」

 無事に顔合わせがすみ、ノ家はみんなで祝杯を上げた。
 ビールをおいしそうに飲み干してピルトは言った。
「ご両親に会ってやっと実感が湧いた」
「私もよ」とジョンシム。「会ったら安心したわ。とても落ち着いた方たちだわ。特にお父様は気品があった」
「そうか? 俺はお母様の方が高貴に見えたがな」
「お母様は平凡な主婦に見えたわ。お父様はバーバリーコートを着たらロマンスグレーも夢じゃない」
 子供たちから笑い声が起こった。
「ロマンスグレー?」
「あなたとは正反対ね」
 子供たちは爆笑する。
 これから騒動はいろいろ起こるだろうが、久しぶりの平和な時間はゆっくり過ぎて行く。 

 祝宴が終わった後、シワンがピルトたちの部屋に入ってくる。
 シワンは改まって切り出す。
「お父さん、お母さん・・・挨拶させてください」
「挨拶? 急にどうしたの?」
「いいから」
「結婚前にしたいのさ。受けよう」
「今まで育ててくれてありがとう、って?」
「はい」
「じゃあ、やりなさい」
 シワンは両親の前に正座した。両手をつき、額を床につけた。
 上体を起こし、心の中でつぶやく。

――父さん、母さん・・・本当に申し訳ありません。

 二人はニコニコしてシワンの挨拶を待っている。
 シワンは姿勢を正した。





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