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韓国ドラマ「病院船」から(連載158)

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 韓国ドラマ「病院船」から(連載158)



「病院船」第15話➡脅威にさらされた手術③



★★★


 ゴウンらは男に診療室に連れて来られた。後ろ手の紐がほどかれた。
 男は銃を突き付けてゴウンに言った。
「2人で手術の準備をしろ」
 ゴウンは男を見た。
「手術ですって? 誰の手術をです?」
「腹を撃たれた。すぐここに来る。さっさと準備しろ」
 ゴウンは気持ちを静めた。男に言った。
「大手術だから私たちだけでは無理よ。歯科の先生を呼んで」
「つべこべ言わずにやれ」
 男は銃を振り上げる。銃を向けて言う。
「早く!」
 ゴウンは男を睨みつけた。
「私は要求を伝えた。患者に何かあれば、全部、あなたのせいだからね」
 銃を向けてる男は黙り込んだ。


★★★


 麻薬一味のボスは船でひそかに病院船へ運ばれてきた。現場での手術は無理―ヒョンとウンジェの判断と強い意志による決定だった。
 担架で船に運び込まれるボスらを見守って続こうとするサブリーダーに兄弟分の一人が訊ねた。
「ボスはどうなんだ?」
「ひとまず手術を待つしかないだろう」
 兄弟分はすかさず言った。 
「義理立てするより早く逃げよう」
 サブリーダーは舎弟分を睨みつけた。
「義理じゃない。カネのためだ。国外に隠したカネの在りかも、ヤクの密売ルートもボスしか知らない」
「しかし、昨日の連中を殺したのが組織に知れたら…」
「次の追手が来るだろな」
 兄弟分は唇を噛んだ。
「明朝4時に船が迎えに来る予定だ。それが最後のチャンスだぞ」
 サブリーダーは腕時計を見た。
「手術を―2時半までに終わらせよう」
「無理だったらどうする?」
「皆殺しにする」
「ボスもか?」
「もちろんだ」
 答えてサブリーダーは船の中へ入っていく。彼を目で追って兄弟分は嘆息した。




 操舵室に外部から無線連絡が入った。


―病院船、応答願います、応答願います…


 しかし、口にテープを張られ、両手を縛られ、身体を椅子で固定された船長はリアクションを起こせない。見張りがなくなった今がチャンスなのに、船長はむなしくあがいているだけだ…




「だめだ全然つながらない」
 病院船から応答がないのに海洋警察の署員2人は疑念を強くした。
「では、船長に電話を」
 1人が電話を入れると”電源が入っていません”のメッセージ
が返ってくる。
「つながらない」
「無線も電話もつながらないのはどう考えてもおかしい。




 ウンジェたちの手術はサクサクと準備が進んでいく。誰しもが極度の緊張で無言だった。


 
 手術室に向かう前、手洗い室にいたウンジェは、顔を出したサブリーダーに念押しを受ける。
「忘れるな。3時間だぞ」
「…」
「2時半までに手術を終えろ。2時半を過ぎたら1分遅れるごとに」
「…」
「あんたの仲間を1人ずつあの世に送る。分かってるな」
 サブリーダーはそう言ってウンジェの肩を叩いた。
 後は黙って部屋を出て行った。
 サブリーダーの冷血ぶりは乱闘の現場で目の当たりにした。負傷して助けを求める男を銃で止めを刺したのだ。ウンジェが患者として彼を扱ったが故だった。
 今また彼はウンジェに威嚇を恐怖を押し付けて部屋を出ていった。
 ウンジェはしばらくその部屋で動けなかった。
 仲間の命のかかった手術をするのが怖かった。手術室に向かうどころか身体から力が抜けていく。悲痛な目元には涙をにじませた。
 手術室に顔も向けられないでいるウンジェのもとにヒョンがやってきた。
 手洗い場で力なくうなだれているウンジェを見て、ヒョンは開いたドアの向こうにいる麻薬一味を見やった。
 ウンジェのそばに立った。
「ソン先生」
「どうしよう…」
 ウンジェは顔をあげた。目元は濡れている。
「患者を移したのは間違いだったかも…臓器も血管も損傷してるのに―ここじゃ輸血も足りない」
「僕を見て」
「失敗したらどうしよう」
「…」
「病院船のみんなが…」
「僕を見ろ」
「みんな、殺されてしまうわ。あの人たちに」
 ヒョンはウンジェの手を取った。
 手を取られ、ウンジェはヒョンを見た。
「頭を空にするんだ。制限時間も、仲間の身に何が起こるかも、考える必要はない」
 ウンジェはヒョンに目を合わせた。
「ただ―今は患者だけに集中するんだ。患者を救うために最善を尽くせばいい」
「…」
「その後に何が起きても―君は悪くないんだ」

 ウンジェは黙ってヒョンの胸に額を押し付けた。
「5秒だけ…」ウンジェは呟いた。「このままでいさせて」 
 ヒョンは肩に置いた手に念をこめてウンジェを支えた。



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