「青い海の伝韓国ドラマ説」第12話⑧
韓国ドラマ「青い海の伝説」第12話⑦
★★★
「兄貴」ジュンジェは切り出した。「ツリーを買いに行かないか?」
「クリスマスツリーか?」とナムドゥ。
「私も行くわ」とセファ。
「いやお前は家にいろ」
とジュンジェ。
気を落とすセファ。構わずにジュンジェは続ける。
「男3人でいくからお前は1人で家に残れ」
「…」
「一人でな」
「…」
「いいか。一人で家にいろ」
”大好きな水浴びをしてろ”と心でも言った。
しかし、ジュンジェの心の声はセファに伝わらない。
セファの推測はとんでもない方向に向かった。
「何なのいったい…? 孤独を経験してみろ、ってことかしら? どうして?」
「そうじゃない」
ジュンジェは箸を動かしながら力説する。
「男が一緒にいるとできないこともあるだろ」
「確かにそうだ」ナムドゥは同調を見せる。
「だろ? だから言ってるんだ」
「…」
「俺たちは七時まで帰らないから…それまでこの家にはお前ひとりってことだ」
「…」
「それまでは好きなことをやれ。家主になったつもりで」
セファはジュンジェの言ってることがチンプンカンプンで混乱した。開いた目さえ役割を失ってしまうほどだ。
「家主になったつもりで掃除をしろってこと?」
「いいんだそれは! 家事なんかしなくていいんだ」
思わず大声になっている。
ジュンジェは両手でセファの顔を挟みつける。
「お前が一番したいことをやるんだよ」
顔が曲がるほど両ほっぺをつまんだ。
「分かったか?」
「何やってんの?」とテオ。
「どうしてつねるんだ?」ナムドゥも怒り顔になる。
「何となくだよ」
気持ちを隠して立ち上がりジュンジェは席を離れた。
セファはつねられた両ほっぺに手をやった。
「顔が熱いわ…つねられたからかしら…ほっぺた以外も熱い。どうしてかしら…?」
セファの気分は次第に上ずって来るのだった。
★★★
ナムドゥは提案した。
「ワインや食べ物も用意してパーティーをしよう」
それもいいだろう…って調子でジュンジェは頷く。
「シアも呼んでな」
「ああ、好きにしろ」
「OK。では10分後に出発だ」
ナムドゥらは出かける支度にかかる。
セファはつねられて痛みの残るほっぺに両手をやる。
まだ痛いわ。でも、いい気分…この感じは何なの?
そばで寝転んで聞き耳を立てているジュンジェにはそれがおかしくてならない。
こんなに気分がいいのなら、彼にも味わわせてあげなきゃ…
この声を聞いてジュンジェはギョッとなる。彼女の力でつねられたらほっぺの肉が千切れる。
ジュンジェはあわてて立ち上がる。逃げる態勢に入る。両腕を伸ばしてくるセファから逃げ出す。
「おい、ちょっと待て…」
一瞬速くセファの両手首を捕まえる。くるっと体を入れ替える。壁どんの形になる。
顔が近づく。
「お前の―好きなことをやれ」
「…」
「いいな?」
セファはジュンジェを見つめ返す。
(…近いわ。一瞬、何も考えられなかった…)
「…!」
ジュンジェはたじろぐ。あわてて両手を離す。軽い悲鳴とともに両耳を押える。目をつぶる。
身体を硬直させてるセファから両耳を押えてのけぞる。逃げ出している。
壁に背をつけたままセファは考え込む。
(今のは何だったの? わけが分からない? どういうつもり…? 私がやっぱり好きってこと? ぶつぶつぶつぶつ…あれこれあれこれ)
「ご友人が遺書の証人になってくださいます」
弁護士はイルジュンに説明している。
「利害関係がないことは書類で確認済みです」
イルジュンは神妙に頷いている。
チヒョンはたまたまその話を立ち聞きしている。
「ところで」弁護士は訊ねた。「遺書の作成を急がれる理由は…」
弁護士はチヒョンに気づいた。目を向けるとチヒョンは口もとで人差し指を立てる。
チヒョンに気づかずイルジュンは話し出す。
「息子のジュンジェに全財産を相続させたいと考えているんです」
チヒョンは顔色を変える。
「株も不動産を含め、全財産を…」
「全財産をですか?」
弁護士は訊ね返す。
イルジュンは頷き、きっぱり答える。
「やれるものは全部だ」
「しかし会長、奥様とチヒョンさんにもある程度は相続を行わないと…後で問題になる可能性が…」
「それを除くとどれくらいになる?」
とイルジュン。
弁護士は答える。
「最大で全財産の60パーセントほどかと…」
父親を見つめるチヒョンの表情は次第に冷たさを帯びた。
「このたびはお時間を作ってくださりありがとうございます」
「いいのよ」
表情を変えずにカン・ソヒは答える。
「今日は私がごちそうさせていただくわ。いつも何かといただいてばかりだから」
「とんでもないですわ」
とジンジュ。おこぼれに預かれるなら何なりとの姿勢を崩さない。
「今日も私にごちそうさせてください。さあ、いっぱい如何です?」
ジンジュは精いっぱい媚を売り、乾杯の音頭を取った。
「我がビジネス同盟に、乾杯!」
乾杯した後、カン・ソヒは冷ややかな目をジンジュに送る。
ジンジュは切り出す。
「じつは私から提案があるんです…ホ会長と一緒に投資をさせていただきたく…」
携帯が鳴り、カン・ソヒはジンジュの話を制した。
「イ弁護士さん、どうもこちらこそ…ええ、そうですか。ご苦労様」
話の腰を折られ、ジンジュは酒をがぶ飲みした。
そしてたちまち酔った。
「お姉さん!」
「姉さんですって?」
ジンジュはべらんめえの調子になった。
「だって年上でしょ? それもはるかに…だから姉さんよ。さあ、乾杯しましょ」
また、酒をがぶ飲みする。
「ジンジュさん…飲みすぎよ」
「飲み過ぎたけど…姉さんにはがっかりだわ」
「…」
「カニの醤油漬けやキムチや塩辛まで、あげた分だけでお店が開けるくらいよ…」
ジンジュの露骨な口調にカン・ソヒも呆れる。
「しっかり食べてるくせに…見返りは?」
「…」
「大したお礼もなく、駆け引きばかり…恋人じゃないっていうのよ」
カン・ソヒはジンジュの口元を眺めてるだけの表情だ。やがて携帯で連絡を入れる。
「キム秘書、車を回して」
指示を出してジンジュに言った。
「お開きにしましょ」
「お黙り!」
ジンジュは叫ぶ。
「ちゃんと私の話を聞きなさい! 一緒に投資させてっていうのよ!」
カン・ソヒはテーブルを叩いて立ち上がる。
「黙って酔いをさましなさい!」
そう言い残してカン・ソヒは先に出て行こうとする。
後ろにふんぞり返りジンジュは言い放つ。
「同窓生の夫を誘惑した女はやっぱり言うことも違うわ」