アンナは少し考えて答えた。
「そうよ、行かない。どうして行かなきゃいけない? 行かないわ」
アンナはカンジャを残して歩き出す。
カンジャはその後を追わない。見捨てられた気持ちなのかアンナの後に従おうともしない。
歩いて遠ざかりながらもアンナはカンジャを気にした。振り向くとカンジャは動かないで立っている。
いや、これでいい――思い直して再び歩き出しながらアンナはつぶやく。
「あの子にも情が移ったのかな ?」
しかし、やっぱりアンナは立ち止まる。後ろを振り返る。カンジャはまだ動かないで立っている。自分をじっと見ている。
決心を変えまいとさらに数歩進んだアンナだったが、立ち止まるやすぐにきびすを返し、カンジャの方に向かって走り出す。一目散に駆け戻る。
カンジャが握っている招待状をひったくるように手にする。
「せっかく作ったんだから、一応もらっとくわ」
「お姉さん、必ずドレス着てきてね」
「それは持ってない」
あっさり言ってカンジャに背を向けた。
歩き去るアンナに付き従いながらカンジャは言う。
「私のを貸してあげようか?」
「ほら、ついて来ないで」
「わかった」
カンジャはなおもついて歩いて言った。
「リボンのドレスよ」
アンナは立ち止まる。するとカンジャも立ち止まる。
アンナは歩き出す。足取りを合わせながらカンジャは言う。
「水玉模様もあるわよ」
コン室長とワインを酌み交わしながら、ビリーはため息をついた。
「最近のアンナはまるで別人だ。友達もいるし、子供たちと話もする。情が移ったのかな?」
「それはないでしょうね」とコン室長。「奥様は情に流される人ではありません」
「確かにな。アンナは今まで誰にも心を開かなかった。僕にさえそうだと知ったのは…結婚して迎えた初めての誕生日だった。あの日、僕はあまりにひどいプレゼントをもらった…」
――
ワインで誕生祝の乾杯をした後、アンナは言った。
「プレゼントは入金したわ」
彼女のその言葉に自分は戸惑った。
「アンナ、僕はお金より…ささやかでも心のこもった物がほしいんだ」
「心がほしいですって? ・・・正直になったら? 本当に心がこもってればいいの?」
「プレゼントは心を分かち合うものだろ」
「12歳の時以来…みんなが"心を分かち合おう”と言った。でも素直に心を開いたら相手は怒ったわ。”自分の誠意に応えろ”って。心を開く代わりに財布を開くと…ずいぶん喜んだわ。感動的なほどに」
「…」
「本当に心がほしいなら財布は閉じるわよ。あなたを試してもいい?」
アンナと目が合った。アンナは続けた。
「ビリー。私に多くを求めないで」
――
「だから僕は金以外何も求めなくなった」
「社長のお気持ち、よくわかります」
「私は彼女の心を開くすべを知らなかった。だから不安でならないんだ」
「どうしてです?」
「アンナが、今はよく笑うようになっているから」
ビリーは遠くを見るような表情になった。
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