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韓国ドラマ「青い海の伝説」第5話⑬
第5話⑫
女は訊ねた。
「婚約者?」
「違います」
女はジュンジェの身体を叩いた。
「片思いなのね」
ジュンジェはぎょっとなった。
「違いますよ」
慌てて否定する。
あまりの狼狽ぶりを女は笑う。
「照れちゃって、もう…」
「そうじゃないんですって」
手当てをもらうと女はさらにジュンジェを炊きつける。
「頑張って彼女にしなさい」
笑い声を残して女は立ち去った。
★★★
セファは後ろから声をかけられた。振り向くと若い男が立っている。名刺を差し出してくる。
「突然、すみません。タイプの女性なもので…」
セファは名刺に見入る。
「連絡先を教えてくれませんか?」
「…」
「携帯をお持ちでないですか?」
「…ああ、それ」
セファはコートのポケットに手を突っ込んだ。手に触れたところで携帯が鳴りだす。
通話を押して携帯を耳に押し当てる。ジュンジェの声が流れ出る。
「おい、シムチョン」
「ジュンジェ」
セファは大きな声を返す。
「ひとつ言い忘れてた。誰かに連絡先を聞かれても絶対に教えるな。いいな」
「どうして?」
「そんなことを聞いてくるのは悪いやつだけだ」
いきなりセファは表情を変える。怖い顔で若い男を睨みつける。
ジュンジェは続けた。
「聞かれたら噛みついてやれ」
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セファは相手に噛みつかんばかりの形相になった。
その顔に驚いて男は退散した。
「今、どこにるの?」
「俺か? すごく遠いところにいる」
ジュンジェはそう答える。
屋台の陰から電話していたのだが、その屋台が動き、ジュンジェの姿はセファの前にさらされる。
「ジュンジェ!」
セファが叫んで数歩走ると、中腰姿のジュンジェはすぐ目の前だった。
「…そこにいたのか?」
「うん。どうしてここへ? 私に会いに?」
「んなわけないだろ。たまたま通りかかっただけだ」
セファは嬉しそうにジュンジェを見ている。
「お前こそ、俺をつけてたんじゃないのか?」
「つけてなんかないよ」
ジュンジェは二度頷く。身振り手振りで説明しだす。
「ソウルは狭いからな。こんな風に偶然会っても――何ら不思議ではない」
「そしたらまた、偶然に会える?」
「それはどうかな…」
「…」
「俺は忙しいからもう行くぞ」
ジュンジェは背を返そうとする。呼び止めるセファ。ジュンジェはセファに駆け寄った。
「やたら大声で俺の名を呼ぶな」
セファは耳元に顔を持っていく。手を添え小さな声で話しかける。
「私、ここで働いてるの。お金が入ったらあなたにあげるわ」
そう言い終えて笑顔になる。ジュンジェはお金が好きだと思い込んでいるからだ。
セファの言葉にジュンジェはショックを受けた。お金にしろ何にしろ、自分に尽くそうとするその姿勢にだった。
呆然としているジュンジェを捨て置き、セファは通行人に向かって駆け出す。チラシを必死で渡そうとしている。
セファのかいがいしい姿を見ながらジュンジェはため息をついた。