ファンタスティック・カップル 第９話（３）
ワイン片手にビリーは考え込んでいる。
プリンセスが寂しそうな声を出した。
「また夢を見ているのか・・・プリンセス」ビリーはプリンセスに話しかける。「アンナはどこだ？ アンナが来たのか？」
そばにいるかもしれない。ビリーは直接回りに呼びかける。
立ち上がってまた広い部屋を捜し始める。
「アンナ！ アンナ！ どこにいる？」
アンナの面影はどの部屋にも潜んでいる。
ビリーの前にアンナの姿が立ち上がる。
「アンナ・・・ここにいたのか！」
アンナの姿を丹念に観察する。
「今日は濡れてないな」
「寒いからよ」
「来てくれてありがとう・・・ああ、すまない。もうすぐ迎えに行くよ」
「もう遅いよ。迎えに来ても無駄よ」
アンナはビリーの前を横切っていく。
「まだ遅くない」
ビリーはアンナの背中に呼びかける。
アンナは立ち止まる。振り返る。
「遅いわ。私を捨てたでしょ」
アンナは窓をすり抜けて行く。
「アンナ、必ず迎えに行くから。必ず行くから」
窓に張り付いてビリーは呼びかけた。
ビリーははっと目覚めた。
やっぱり夢だった。そばにある写真立てを手にする。アンナの写真が中に収まっている。
「まだ、遅くない」
写真を見てビリーは自分に言い聞かす。
「チャン・チョルスがアンナを捨てれば・・・俺が連れ戻す」
ソファから立ち上がる。写真立てにキスし、置き棚に戻す。そこにある物を確認すると無くなっているものがある。
「あれ？ ここにあった写真がない！」
ふと思い当たった。
「まさか・・・！」
その写真はイ・カンジャの手元にあった。
「おばさん・・・お姉さんが写真と結婚してるよ。ほんと、きれいだわ」
「ほんと、イカれてるわ」
ジュースを入れながら店の主人は応じる。
ビリーはカンジャの元に向けて車を走らせる。
彼は焦っていた。
「アンナを捨てる前にチャンにバレるとまずい」
カンジャは花を相手に雪のお祈り遊びを始めている。
「降る・・・降らない・・・降る・・・降らない」
ふと、外を見るとアンナの姿がある。
カンジャは花を握りアンナの前に飛び出す。
「お姉さん、おめでとう」
「何が・・・？」
「結婚したでしょ」
「・・・」
「チョルスさんとはいつ結婚するの？」
「まだしないわ」
「こんな風に結婚すればいいのに・・・」
カンジャは肩からつるしたバッグから写真を取り出そうとする。
その時、アンナに声がかかった。
「ナさん」
振り向くとウ・ケジュだ。トラックの助手席から頼み込んでくる。
「畑仕事を手伝って」
「今、忙しいわ」
アンナはあっさり断り、背を向ける。
「終わったら、マッコリをおごるわよ」
それを聞いてアンナは向き直る。トラックに向けて歩き出す。
「私も行くわ」
ついて来ようとするカンジャをケジュは制した。
「カンジャは帰りなさい」
「あんたはダメよ」
アンナも言った。
「私も行く。一緒に行く。私も、私も・・・」
カンジャの肩に触れ、アンナは魔法をかける。
「氷になりなさい」
カンジャはその場で固まった。
「店のおばさんに”チン”してもらいなさい。行くわよ」
身動きの取れなくなったカンジャは嘆く。
「今度は”氷”にさせられちゃった・・・！ お姉さん、私も連れてってよ」
しかし、アンナを乗せたトラックは走り去った。
取り残されたカンジャの前にビリーの車が乗り付けてくる。そばを通り抜けようとしてカンジャを見つけたのだ。
急停車してビリーは車から降りた。カンジャのそばにやってきた。
「こんにちは。お久しぶりです」
カンジャはビリーに話しかけた。
「昨日、会ったじゃないか。写真を部屋から持ち出しただろう？ どこにある？」
「・・・」
カンジャはそーっとショルダーをうかがう。ビリーはその目をたどって写真のありかに気付く。
「写真を返してください」
「だったら、”チン”してください」
「ん？」
「私にタッチして”チン”よ」
「・・・」
ビリーはカンジャの肩に触れた。
「チ～ン」
するとカンジャはいきなり走り出す。
「お姉さん、待って！」
「ちょっ、ちょっと写真、写真・・・！」
ビリーはあわててその後を追いかけだす。
「写真を返してくれ～っ！」
script type="text/javascript" src="//translate.google.com/translate_a/element.js?2db9cb=googleTranslateElementInit"></script> google-site-verification: google3493cdb
