雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「青い海の伝説」第5話⑪

2019-02-20 20:44:47

韓国ドラマ「青い海の伝説」第5話⑪
Korean drama "Legend of the Blue Sea" Episode 5 ⑪

第5話⑩

「服装のことは、この服があまりに素敵だったから」
「…」
「どこで買ったか知りたかっただけなの。なのに気を悪くしたの？　ただの誤解なのに」
「ご苦労様と言われたから、つい…」
「すばらしい働きに感謝を示しただけよ。これからもずっと働いてほしいと思ったから」
「…」
「私の話し方にも問題があったみたいだわね…これからは気をつけるわ」
「いいんです。単なる誤解だったみたいですから」
　ジンジュはモランの腕に自分の腕を組んだ。
「これからは誤解をしないでね」
　家に向けて歩き出しながらジンジュは言った。
「あっ、後でカニを買いに行きましょ」

★★★

　セファは先日知り合った江南のホームレスのもとを訪ねていた。ホームレス女はセファに見合った服を着させようとダストボックスを漁った。
　そこには少し前、ジンジュから指示を受けてやってきたユランが大量の衣服を捨てて引き上げた。
「むりやり追い出されたの？」
　服を選びながらホームレス女が訊ねた。
「出ていけと言われただけ」
「同じことじゃない」
「でも私たちは次があるから」
　次の服を選びながらホームレス女は言った。
「野宿を始めるには時期が悪かったわ」
　女に渡された服をセファは着込んだ。
「今、大寒波が来てるの。発泡スチロールの箱を確保しないといけないよ」
　セファは頷く。
　二人は並んで通りを見た。厚着の人たちが肩を丸めて行き交っている。
「帰る家のある人が羨ましいでしょ？」
　通り向こうで女たちが家に入って行こうとしている。セファは彼女らに目をやりながらつぶやく。
「私も家がほしいわ…」
　セファの横で女が言った。
「家のほしい人は銀行から金を借りるのよ」
　セファは意外そうな顔になる。
「お金を返さないと家は取られちゃうの」
「そうだったの？」
「みんな大変なのよ。ほら、誰を見ても肩を落として歩いてるでしょ」
　セファは納得した。
「だから、ホ、ジュンジェもお金がほしいのね」　
「お金を借りてない分、私たちの方がマシよ」
「うんうん」

「私たちの悩みは三つだけ。寒さ、暑さ――それにひもじさ」
　ホームレス女は大きなパンツを拾い上げた。セファに渡す。二人で品定めする。
「もったいないわね」
　二人は上着を拾いあって肩に引っかけた。
「お金ってどうやって稼ぐの？」
「お金を？」
「うん」
「教えてあげるわ」
　ホームレス女はチラシをどこかから持ってきた。
「これを配ればいいの。でも難しいよ。寒いからみんな手をポケットに入れてる」
「うん」
「あの手を何とかして出させるのよ。ちょっと見てて。手首のスナップが大事なの。やってみるから」
　ホームレス女はチラシを持って通りに立った。歩いてきた男の目の前にさっとチラシを出して笑顔を作る。
　しかし失敗だった。男は彼女を無視して通り過ぎた。
　次にやってきた二人連れに同じ調子でチラシを出す。やっぱり失敗だ。
　ホームレス女は舌打ちしながらセファの前に立った。
「無視されても傷つく必要はないわ。それと手首のスナップは2秒以内でね」
　身振り手振りで説明する。
「一人に何枚も渡したり道に捨てたりしちゃダメだからね。10時の方向を見て」
「…？」
「10時よ」
　セファの顔をそっちに向かせる。車の中からこっちを見張ってる者がいる。
「あそこから班長が見張ってるの。見えるでしょ？」
　ホームレス女はセファにチラシを握らせた。
「じゃあ、稼ぎなさいね」
「あなたは稼がないの？」
「私は…」ホームレス女は天をあおいだ。「八方スチロールの箱と一切れのパンがあれば…私はお金なんかいらない」
　彼女は手をあげてセファのそばから歩き去った。