雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「30だけど17です」(連載91)



韓国ドラマ「30だけど17です」(連載91)



「30だけど17です」第10話(取り戻したい時間)⑨
☆主なキャスト&登場人物

○シン・ヘソン➡(ウ・ソリ)
○ヤン・セジョン➡(コン・ウジン)
○アン・ヒュソプ➡(ユ・チャン)
○イエ・ジウォン➡(ジェニファー(ファン・ミジョン)
○チョ・ヒョンシク➡(ハン・ドクス)
○イ・ドヒョン➡(トン・ヘボム)
○チョン・ユジン➡(カン・ヒス)
○ユン・ソヌ➡(キム・ヒョンテ)
○チョ・ユジョン(イ・リアン)
○ワン・ジウォン(リン・キム)
○アン・スギョン(チン・ヒョン)

★★★ 


 ウジンが逃げてきた場所は公園の運動場だった。運動場の扉を開けて中に入りこみ、そこを家と勘違いしている。
「ジェニファー、夕飯はすませました」
 誰かに向かって挨拶し、靴を脱いで運動場の中央に進んでいく。
 ソリは呆然とウジンの行動を見つめた。
「完全におかしくなったわ」
 ソリはウジンの靴を拾い上げた。ウジンの行動を確認する。
 ウジンは運動場の中央、芝生の上で腕を広げて大の字に寝そべった。
「やっぱり、我が家が一番だ」
「あららっ、寝ちゃったわ」
 ソリは慌ててウジンの許に駆け寄る。
「おじさん、ダメよ、そんなとこで寝ちゃったら。帰りましょう」
 腕をとって必死に起こそうとする。
 ウジンは目を開けた。
「おっ、なぜ僕の部屋に?」
「…」
「また酒を飲んだ? 13年前と違って今は僕の部屋ですよ」
「寝ぼけちゃって…、ともかく早く帰りましょう」
 ソリはウジンの身体に両腕をまわした。しかしウジンの身体は動かない。
眠りだしてもう目を開けそうにない。
「困ったわ。置いて帰る?」
 ウジンに上着をかけてソリも横に寝そべった。愚痴が口をついて出た。
「鬼ごっこに付き合わされて、もうクタクタだわ」
 空に目をやった。それからウジンの寝顔を見やった。
 この間もふと思った。どこかで見たことがあるような感覚が戻ってくる…
 その時、ウジンが寝返りを打って来る。
 ソリは正面を向き直り、思考も中断した。
 しばらくしてまたそっとウジンの寝顔を覗く。観察を始めるとどこかから聞き覚えのある音楽が流れてきた。
 高校時代にコンテストで私が弾いた曲〜、叔父さんと叔母さんの声援も聞こえる…。
 ソリは呟いた。
「取り戻したいわ…あの時の時間…私の時間…」


★★★


 スーパーにやってきたジェニファーは若い二人連れを見て足を止めた。男性は臨月の近いと思われる女性をしきりに気遣っている。
「ほらほら、気を付けろ。危ないだろ」
 妊婦は明るい声で答えた。
「わかったわ」
 幸せそうだ…。
 ジェニファーは雨に濡れて街をさまよい歩いていた時の自分を思い起こした。夫とお腹にいた子を失い、絶望に打ちひしがれていた時だった。
 すべての歯車が狂ったのはあの事故のせいだった。
 生きる希望を断たれた自分は過ぎ去った幸せの亡霊を追って街をさまよい歩くことしかできなかった。
 降りしきる雨にずぶ濡れになりながらジェニファーは街をさまよい歩いた。
 そんな自分に傘を差しかけてくれる男性がいた。
「雨の中をそうして歩いていたら身体をこわしますよ」
 ジェニファーは足を止めた。つかの間、傘の中に留まっていたが、男性を振り向くことなく傘から出ていった。
 男性は彼女を追おうとしなかった。ふと見ると足元に小さなケースが落ちている。男性はそれを拾って彼女を追った。再び傘を差しかけた。
「風邪をひくからこの傘を持っていってください」
 その時の彼女には他人の言葉も同情も耳に入らなかった。
「身体に障るのに…」
 男性は決断して強引に彼女を従わせた。
「ともかく雨宿りしましょう」


 キム・ヒョンギュは屋根を持ったバス停までジェニファーを連れてきた。そこで彼女を雨宿りさせてから、路上から拾い上げたケースを差し出した。
「落とし物です」
 受け取ろうとしないのを両手で握らせた。
「濡れないようにこの傘を使ってください」
 そう言い残し、自分の傘をベンチの上においてから雨脚を窺った。勢いよく走り出ていった。


 そのバス停でジェニファーは図書館を目にしたのだった。 
 そうして得た読書の日々が彼女をこの日まで連れてきてくれた―。
 
 スイカの安売りの声でジェニファーは我に返った。
「甘いスイカ、最後の一個は半額ですよ」
 その瞬間、2人の女性がすばやくスイカを手で押えた。そのうちの1人はジェニファーだった。
「私が先に押えたわよ」
 ジェニファーは負けない。黙って相手を睨みつける。
「私が先よ」
 ジェニファーは黙って顔を突き出す。見開いた目をクワーッと浴びせる。ひるんだ隙に相手の女性の手はスイカから離れた。ジェニファーはそれを片手で持ち上げた。
 レジに向かってそそくさ歩き出す。負けた女は呆れてジェニファーを見送った。




 ソリは先ほど歩いていた老人のリヤカー(ヘイン公園所有)を借り、その場に大きな字で書き置きを残した。


― 今晩、道路にあったリヤカーをお借りします。


 ソリはリヤカーにウジンをどうにかこうにか乗せて帰路についた。しかし、坂道もある。ソリは荒い息を立てながらリヤカーを引っ張って歩いた。
「あ〜、重い。私の苦労も知らないで、おじさんもいい気なもんだわ」
 ソリは足を止めて憎まれ口をたたく。
「まさか、寝たふりしてるんじゃないでしょうね!」


 何とか辿り着くと買い物帰りのジェニファーと家の前で鉢合わせした。
「ソリさん、どうしたの?」
 ジェニファーを見てソリは崩れるような声を上げた。リヤカーを置いてウジンを見せた。
 リヤカーの中で眠りこけているウジンを観察してジェニファーは何やら説明を開始する。
「アセトアルデヒドを分解できない体質と推定。血中アルコール濃度が上昇し、意識を失った」
「何のことです?」とソリ。
「ミスター・コンは泥酔状態です」
 ジェニファーはキャリーの上にスイカを置いた。
「叩いたりしても起きないんです」
「…」
 ソリは泣きそうな声で愚痴を並べた。
「やたらと逃げ回った挙句、こうなっちゃったんです。携帯も使えないし…」
 ふと見ると、ジェニファーはリヤカーの前で不思議な動作を開始している。
 合気道でもやるようなポーズを取って気合を入れている。
 ソリはその動作を不思議そうに眺めた。


 チャンも家に向かって歩いて来る。
「ああ〜あ、今日も練習を張り切り過ぎた。もう、クタクタだ〜」
 肩や腕をさすりながら家に向かっていると、リヤカーを引いてソリが歩いて来る。
「あれはおばさんじゃないか」
 チャンは手を振り、駆け寄る。
「どうしたのそのリヤカーは?」
「おじさんを家に運んだんです…」
「えっ? 運んだ?」
 ソリは疲れ切った目をチャンに向けた。
「そうだったのか…」
 チャンが代わってリヤカーを引いた。
「ミスター・コンにお酒は禁物なんです」
 チャンはお酒にまつわるウジンのエピソードを話した。
「そうだったのね…知ってたら止めてたのに」
 ソリは悔しそうにする。
 チャンは笑って言った。
「僕を呼べばよかったのに」


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